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大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
サタデーナイト編
28/57

28:金級冒険者による家庭教師・後編



「デューク、お前おばばの事知ってたんなら教えろよな」

「そうそう、何『魔導姫』って!」

「いや、お前ら一応弟子だろうが。弟子のお前らがなぜ知らない」

「「ぐっ!」」


「チッタさんの家の魔導書読んだか?著者がチッタデルロ・サロムスリーゼってなってたぞ」

「そうなの!?」

「オレ、気になるとこだけパパッと読んだだけだわ……」

「はぁ……」



 デュークも本人確認したわけじゃないらしい。著者名を見てピンときたそうな。

 おまけにモンスターじいさんの家にあった歴史書に『魔導姫チッタデルロ・サロムスリーゼ』が出てきたらしい。

 何百年前のことで、巨大な魔物と戦ったとか、魔族と戦ったとか書いてあったとか。

 なんかとんでもない人の弟子だったみたいだな。なんとなく只者じゃないとは思ってたけど。



「そう言えば、クロの烈風斬とか、トロールの首斬ったやつとか―――」

「烈地斬よ」

「……その烈地斬とか、おばばに習ったのか?」

「そんなわけないでしょ。私のオリジナルよ。チッタさんには風魔法の基礎を徹底的に教わった感じ。ウォールで体を押したり、剣を押したりってのはそれを発展させたんだけどチッタさんにダッシュして見せたら『アレクと言い、この娘と言い……』って頭抱えてたわ」

「あー、おばばは魔法をいろいろいじると、そうなるな。俺がファイアー・ボールを白くしたり大きくしてたら、頭抱えてたし」

「お前ら、魔力操作が器用だってだけじゃ済まされないんだぞ?」



 クロとの会話にデュークが突っ込みを入れる。

 ふと振り返るとリロさんが凝視している。こりゃあ何かと説明するはめになりそうだ。



……

………



 事後調査の三日目は森の南側を中心に回り、四日目からはギャラン山の調査に入った。

 あれからトロールには出会っていない。やはりあの群れが全数だったのだろうか。元々の目撃情報からすればそれも当然なんだが。

 魔物の上位種も数が減っているように感じる。

 唯一の大物はビッグ・ホーンという大きな鹿が三頭連れで出たくらいだ。これはオレだけで対処できたが、アドバイスは結構された。



 この数日間だけで『怒涛の波紋』からは本当にいろいろと教えられている。

 経験は冒険者の武器であり財産だと思うが、それを与えてくれる『怒涛の波紋』には本当に感謝だ。

 出来ればこの知識をまとめて、教科書のようにして持ち歩きたい。



「もうまとめているぞ?」



 さすがです。デューク先生。



……

………



 五日目の夜、オレとフライヤさんが夜警に当たっている時の事、ビーツが興奮した様子でやって来た。



「アレクくん!アレクくん!」

「どうした?もう従魔と戯れるのは終わったのか?」

「いや、そうなんだけど、これ見て!」



 ビーツが両手に持っているのは、ゼリーのような液体だった。



「どうしたのビーツ……って、それスライムじゃない!すぐに離しなさい!溶かされるわ!」

「あ、いや!大丈夫です!従魔にしたんで!」

「「えっ」」



 オレとフライヤさんの声が重なる。



「いや、ビーツ。スライムって従魔に出来るの?意思疎通が必要なんだろ?」

「出来たんですよ!それがすごい事なんです!おそらく新発見のレアです!」


「スライムって最弱ってくらい弱いわよねぇ……。それを従魔と言われても……」

「甘いですよ、フライヤさん!スライムには最強になれる素質があるんです!」



 ずいぶん興奮してますねビーツさん。らしくないですよ。

 スライムが最強とか何かの読みすぎじゃないですかね?

 テンションが高いビーツは、フライヤさんにスライムの可能性について熱く語り、夜警で交代したチロルさんにも語ったのだと言う。



「なんか今後スライムを見る目が変わるわぁ……」



 とは翌日のお二人の言。とりあえず従魔二十匹目、おめでとうと言っておこう。

 ちなみにスライムは『クラビー』と名付けられた。ビーツ曰く『海月の火の玉』からとったらしい。オレはそんな妖怪知らない。って言うかスライムは海月でも火の玉でもないんだが。



……

………



 そして七日目、ギャラン山の探索を終え、オレたちは帰路に着いた。



「アレク、あんた達はすぐに王都に行くの?」

「そうですね。明日はゆっくりして、明後日にでもと思ってます」

「早いわね」

「王都での用事が溜まってますからね」



 これは四人で決めたことだ。

 クロは刀の件があるから「早く行きたい!」とダダをこねていた。デュークも図書館に行きたいらしいし、ビーツもここいら一帯の魔物は見尽したと言う。

 二週間かそこらで見尽せる量じゃないと思うんだが、ビーツ曰く「博士の図鑑に載ってる魔物ばかりなんですよ」との事。他国の未知の魔物に会いたいってことかな?



「依頼完了の打ち上げでもしたかったんだけど、今日はさすがに疲れてるしね。明日にお別れ会も兼ねてやりましょ?」

「いいですね。是非」

「今日はギルドの報告だけ……ああ、その後にお風呂でも入りにいかない?」

「お風呂?」



 今まで宿で体を拭いたりしてただけなんだよな。

 と言うか、村でも浴場は見たことがない。この街にはあったのか?見逃していたのか?



「公衆浴場があるわよ?広くて綺麗なんだけど、大通りから離れてるのが玉に瑕ね」

「俺たちぁ遠征の帰りには大抵使ってるぜぇ」

「この街の冒険者は皆同じでしょう」



 そうだったのか。でもいい事を聞いた。

 転生して十年、初めてのお風呂。しかも大浴場だ。



 もうそれからの帰り道はお風呂が楽しみで仕方なかった。三人とも同じらしい。

 やはり元は日本人なんだな、と思う。



 そして、ギルドへ戻り、ギルドマスターへ調査依頼の報告をする。



「これが調査報告になります。結局トロールはいませんでしたが、出会った魔物のリストを記してます」

「ああ、ご苦労様だな」



 報告はオレがする事にした。これも経験だとフライヤさんに言われたからだ。

 デュークに記録してもらっていた魔物のリストをギルドマスターに渡す。



「ふむ。やはり元に戻っているという所か。よし、事後調査の依頼はこれで完了としよう。依頼報酬は受付で頼む」

「はい。ありがとうございます」

「で、どうだった?『怒涛の波紋』はいい先生になれたか?いじめられたか?」



 ニヤリと笑ってギルドマスターが問いかける。



「ちょっとギルマス。ちゃんと教えたわよ?いじめてなんかないわよ、ねぇ?」

「ははは。すごく良く教えてもらいました。『怒涛の波紋』の皆さんにもギルドマスターにも機会を頂いて感謝しています。ありがとうございます」

「「「ありがとうございます!」」」



 四人揃って頭を下げる。



「ならいいんだがな。で、王都にはいつ行くんだ?」

「明後日ですね」

「やはり早いか。用意しておいて正解だったな」



 そう言って、ギルドマスターは机の引き出しから手紙を差し出す。



「王都のギルドへの推薦状だ。金級を受ける資格ありとしている。と言っても実際に判断するのは王都のギルドマスターだがな。あくまで推薦だ」

「あ、ありがとうございます」



 オレは手紙を受け取り、再び頭を下げた。



 それから受付に行き、依頼完了の報酬を得て、買い取りも済ませて、宿へと戻る。

 宿へは荷物だけ下ろし、すぐさま『怒涛の波紋』と合流。一路、公衆浴場へと向かった。

 ギルドから近い場所だが、確かに大通りからは見えない。辺鄙な所に立派な建物があったものだと感心する。

 オレたちはワイワイ騒ぎながら公衆浴場に入る。

 オレ・デューク・ビーツ・チロルさん・キリルさんが男湯の扉をくぐろうとして――



「……ん?ちょっ!クロ!」

「なによ?」



 クロさん、超笑顔なんですけど!お前なに女湯に入ろうとしてんだよ!いや、男湯入られても困るけど!



「い、いや、おまっ!まじか!?」

「クローディア、入らないって選択肢もあるぞ?」

「クロさん……」

「あーあー聞こえなーい。じゃ、あとでね~~~!」



 手を振りながらフライヤさんたちと女湯の扉へと消えて行った。

 オレたち三人はちょっと時間が止まってしまった。「あいつ、まじか……」としか言えなかった。



 大浴場は広くて伸び伸びできる。疲れも一気に吹き飛ぶような心地だ。

 しかし、オレたち三人はどこか、恨めしいような羨ましいような感情を持っていたため、本当の意味でリラックスは出来なかった。

 時折、女湯から聞こえる「うっひょー!」という声で、さらにリラックス出来なかった。



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