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大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
サタデーナイト編
27/57

27:金級冒険者による家庭教師・前編



 翌日、西門の前にオレたち四人はやって来た。少しして『怒涛の波紋』の五人が到着する。

 リーダーで大剣使いのフライヤさん、大斧使いのチロルさん、エルフの狩人のキリルさん、魔法使いのリロさん、リスの獣人で回復術士のツツデバさんだ。

 今回の依頼は森とギャラン山の事後調査が七日間だが、オレたちの特訓・教育という意味合いが強い。

 『怒涛の波紋』にもギルドマスターにも感謝だ。



「じゃあさっそくだけど、荷物のチェックするから、出して広げてみて?」



 ここから教育が始まるらしい。オレたちは背嚢を下ろし、荷物を見せる。



「うーん……これとこれはいらないわね。森の物資で代用できる。これももっと少なくていいわ」

「七日分と言えど不測の事態に備えて多めにするのは基本だぁ。でもなるべく少なくしてぇ。ま、ここらは経験だなぁ」

「魔力回復薬はもってないのか?」

「あ、オレたち魔力の総量が結構あるんで、使ったことないんです。それに高いし」

「魔力量が多いのは羨ましいが、保険で一本持っておいてもいいかもしれないな」

「考えておきます」

 


 それから平野へと出て、森を目指す。最初の三日間くらいは森を調査・探索し、残りをギャラン山に当てるつもりだ。



「馬車の轍は踏まないようにね。なるべく背の低い草の上を歩くこと」

「靴に土がついたら、それだけで初速が遅くなりますし。靴が重くなり疲労が溜まりやすい、という事です」

「休憩の時には靴掃除もするべきね。ここはまだいいけど、湿地帯とか雨の中とかだと酷いから」

「そういやアレク、お前なんでサンダルなんだぁ?危ないぜぇ?」

「ポリシーです」



 譲れないものがあるのだ。



「ちなみに探索する時の警戒はどうしてる?」

「オレとビーツが探索魔法で、クロとデュークは目視ですね。あとは最終手段でビーツの影にオロチがいるんで探索能力はすごいんですけど……」

「頼りたくない、か。いい心構えね。まぁ使えるものは何でも使えってのも冒険者らしくはあるけど、私としては自力を磨いて欲しいわ」

「狩人の私から言わせてもらえば、平野はいいにしても、森や岩場など遮蔽物があるところでは不十分ですね。あとでお教えしますよ」

「ありがとうございます。助かります」



 途中で魔物を見つけることがあったが『怒涛の波紋』はあくまでアドバイスに徹する。

 連携時の位置取りだとか、魔法撃つのが早すぎるとか、クロが先走るとか、色々だ。

 狩った獲物を解体する時もアドバイスは細かい。ただ解体はビーツ以外は苦手だし、これは覚えないといけない所でもあるので、今回の探索で数を稼ぎたいところだ。



「おっ!クローディア、デューク!この草は覚えておけよぉ?」

「……雑草じゃないですか」

「雑草だけど有用だぁ。ツルツルしてて裏がザラザラだろぉ?血糊を拭くのにも使えるし、武器を磨くのにも使えるぜぇ。余裕があったら確保しておけよぉ?」

「「へぇ~」」



 オレたちは森に入り、探索を続行する。警戒の仕方、隊列、見るポイント、森の進み方など、気にしなくてはいけない事が多い。その都度、細かい教育が入る。

 初日は森の北側を中心に探索し、拓けた所で野営する事にした。



「夜警は私たちと『魔獣の聖刀』で一名ずつ出して四交代制と思ってるんだけど、いいかしら?」

「大丈夫です。ただ、ビーツを二番目にしてもらえますか?」

「いいけどなんで?」

「あ、あの、僕、夜に従魔と出掛けるのが日課なんです。すみません」

「うーん、普通なら夜の森に出かけるなんてダメって言うけど、あの従魔なら心配するだけ無駄かね。睡眠不足になりそうだけど、それは平気?」

「だ、大丈夫です。いつもの事ですし。ありがとうございます!」



 夜警の順番は前衛・後衛とバランスを見て、最初がオレとフライヤさん(ビーツは従魔とおでかけ)、二番目にビーツとチロルさん、三番目にデュークとキリルさん、最後がクロとリロさんとツツデバさんとなった。

 翌日にクロが「ガールズトークしたわ!」とか言ってたけどスルーした。お前は何を言ってるんだと。



 二日目は森の中央部を中心に探索する。

 やる事は変わらないが、アドバイスが徐々に減っていく。自分たちで考え、実践しろという事だ。その中で指摘があれば随時飛んでくる。

 オレとしてはリロさんから聞いた『森の中で使う火属性魔法講座』がありがたかった。この程度なら使っていいのか、という判断材料になる。



 そうして探索していると上空の木々の隙間から、一羽の鳥が向かってくる。



「ブライト・イーグル!?」



 キリルさんの声に皆が構える。



「ちょ、ちょっと待って下さい!あれは僕の従魔です!」

「えっ!?」



 全長は二メートル、羽根を広げれば四メートルほどになるだろうか、大きな鳥だ。

 そのブライト・イーグルはビーツに近づくと、速度を落とし、バッサバッサと滞空する。

 ビーツは近づいて、足元に捕まれた何かを取り外した。



「ありがとうね、バサン。またよろしくね」

「クルァァァゥゥゥゥ!」



 バサンと言われたブライト・イーグルを、ビーツは送還する。

 ここでやっと『怒涛の波紋』の緊張が解ける。



「……で、あのブライト・イーグルは何?ビーツの従魔なの?」

「は、はい。バサンって言って、手紙の配達を頼んでたんです」



 ああ、村に送った手紙ってあれで運んだのか……。いや、デカイし目立つだろう!



「だから博士にしか会わせてません。博士から皆さんに届けてもらってます」



 『怒涛の波紋』の面々は困惑気味だ。「手紙の配達でブライト・イーグル?」「博士って誰?」など。



「いや、そもそもビーツは従魔が三体いるでしょう?じゃあ何?本当は四体もいるっての?」

「ありえないですね……。歴史に残りますよ、これは……」

「あ、いえ、四体でなくて……十九体です……」


『……』


「聞かなかったことにしよう。そうしよう」

「だなぁ!深く考えるだけ損するやつだぜぇ!ははっ!ははっ!」

「私の常識が崩されていきます……」



 でしょうね。そういう反応になるでしょうね。

 って言うか、十九体もいるなんてオレも初めて知りましたしね。



「ビーツ、そんなに従魔がいるんならトロール戦で呼べば良かったんじゃないの?」



 冷静になったフライヤさんがそう切り出した。



「い、いえトロール相手だと多分、怪我なく戦えそうなのがあと二~三体しか居ません。他はバサンみたいに飛びながら魔法って手もありますけど、それも効くかどうか……」

「えっ、ビーツ、三大妖以外に戦えそうなのいるの?」

「はい、サイクロプスの『ダイダラ』とか……でもすごく目立ちますし」



 うわぁ……サイクロプス居たのかよ。みんな固まってますけども?

 まぁあの場でサイクロプス召喚しても、逆にオレたちが邪魔になるな。森もあるし、三大妖も戦い辛いだろう。



「それに出すのは従魔登録している三大妖だけって思ってましたし。今回は話しの流れで紹介しちゃう感じになりましたけど」



 とりあえず、従魔のことは後で聞いておくことにしよう。あまり聞いちゃいけない気もするが。

 でもやっぱり戦いに参加させるんなら三大妖だけだな。登録してない従魔に討伐させて、後でもめるのも嫌だし。



「ま、従魔のことはさておき、手紙はオレ宛てのある?フライヤさん、すいません、ちょっと小休止でいいですか?」

「え、えぇ。ちょっと休んで冷静になりましょ」

「あ、アレクくん、チッタさんからお手紙だよ」

「おっ!来たか!ありがと」



 チッタおばばからの手紙を受け取り、それを読む。

 エア・ホークの群れと戦ったり、トロールの群れと戦った事を伝えたから、半分以上は説教だ。



「チッタさん、何だって?」デュークが聞いてくる。

「分からないって。でもあの魔石が何等かの作用をして、トロール・キングの魔石を肥大化させたんじゃないかって。蔦はそれを繋げるパスみたいなものかもってさ。推測だけど」

「やっぱりチッタさんでも無理か……」


「ん?あの魔石の話し?相談したの?」とフライヤさん。

「はい。チッタおばばってオレの魔法の師匠なんですけど、聞いたけどダメでしたね」



「ちょっと待って。チッタって、ひょっとして『魔導姫チッタデルロ・サロムスリーゼ』の事?」



 突然、リロさんがそんな事を言った。

 オレとクロ、ビーツは「はぁ?」って感じ。何、魔導姫って。おばばが姫とか何事だよ。



「そうですよ。今は村で薬師をしています」



 デュークが答える。お前知ってたのかよ!言えよ!

 『怒涛の波紋』の面々が、また慌てている。「伝説の魔法使いじゃないか」とか「まだ生きていらっしゃったとは」とか「アレク、魔導姫の弟子?」とか。おばば有名人なのか……。



「一応言っておきますけど、クロも弟子ですよ」

「ちょっ!なんでこの流れで言うのよ!」



 オレ一人に注目させない作戦である。クロにはとばっちりを受けてもらおう。

 頭を抱えたフライヤさんが話しを続ける。



「い、いや、もうあれよ、あんた達に突っ込むのはヤメだわ。で、そのお師匠様でも分からなかったって事ね」

「はい。おばばの推測のみですね。あ、でもトロール・キングの魔石を肥大化させたのなら、そのトロール・キングは強くなってたんじゃないかって。ビーツ、シュテン呼んでくれるか?」

「うん。ちょっと待ってね」



 ビーツは懐から出した召喚石でシュテンを呼び出す。



「お呼びでしょうか、主殿」



 いきなりの呼び出しに臣下の礼をとるシュテン。相変わらず凛々しい。

 トロール・キングの強さについて聞いてみたが、シュテンもトロール・キングの相手をしたのは初めてらしく、強くなっていたかは分からなかった。

 じゃあ送還しようか、となったが、フライヤさんとチロルさんが待ったをかける。



「シュテンに一手ご教授頂きたいわ」

「俺もお願いするぜぇ!」



 どうやらシュテンと戦いたかったらしい。よくよく聞けば今回の特訓も、シュテンと戦える機会があるかもと画策していたらしい。この戦闘狂どもめ。

 『怒涛の波紋』には現在進行形でお世話になっているし、ビーツはこれを承諾した。

 今すぐはさすがに無理なので、野営地が決まったら模擬戦をしようという流れになった。



 そこからのフライヤさんとチロルさんのやる気っぷりがすごい。そんなに戦いたいのかと。

 何なら自分たちが魔物と戦おうかという勢いだ。やめてください。オレたちの特訓ですよ。



 結局、その日の夜に再度シュテンを呼び出し、フライヤさんとチロルさんが戦う事になった。

 結果は言わなくてもいいだろう。大人と子供だよ。金級冒険者が子供扱いだよ。

 戦いが終わったそこには、満足気に大の字に転がった二人の顔がありましたとさ。



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