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大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
サタデーナイト編
24/57

24:トロールとの死闘



 もう戦いまであまり時間がない。

 最終確認をしなければいけない。



「念のため聞くけど、デューク、トロールの攻撃を盾受けって出来る?」



 トロールの戦いはホブゴブリン戦で見た。殴りつけたこん棒は地面をえぐっていた。

 並みの十歳児ならば確実にミンチだろう。



「……出来る」



 出来るのかよ!



「ただ、数回受けるのが限界だ。さらに回復に回る余裕もない。完全な壁だな」

「一応、受ける心構えはしておいてくれ。おそらくオレは固定砲台になる。守りは頼む」

「あぁ分かった。クローディアとビーツも回復薬用意しておけよ?俺に期待するな」

「「うん」」

「クロとビーツは回避最優先な。一発くらったらアウトだから」

「分かってるわ」

「了解」


「狙うのは目、足、腕。クロは魔石狙ってもいいけど、多分あいつらの皮は貫けないだろう」

「やれそうなら狙ってみるわ」

「オレは最初に一発、足止めを狙う。その後は頭狙いで撃つから」

「「「了解」」」



 時間だ。結局やつらがバラける事はなかった。

 『怒涛の波紋』はすでに群れの横側で、いつでも行ける態勢をとっている。

 三大妖はどこか上機嫌だ。「久々に大物だ」などとこっちの緊張感を分けてあげたいくらい。



 そして戦いは唐突に始まった。タマモとオロチが本来の姿になったのだ。それくらいの相手という事だろう。

 タマモは馬よりも大きく、五本の尻尾はその体よりさらに大きい。全長四メートルはありそうな金色の五尾の狐。

 オロチは緑がかった漆黒の大蛇。その身を持ち上げればトロール・キングの上を楽に行くだろう。

 そんな魔物が急に現れ、さらには小柄(と言っても人型女性としては大柄)な鬼が迫ってくる。



「グルアアアア!!!」



 トロール・キングは唸り声を上げ、すぐに迎撃態勢に入った。周りのトロールも追従する。

 三大妖に釘付けになっている群れの横から、矢と魔法が飛ぶ。キリルさんとリロさんだ。『怒涛の波紋』が姿を現す。

 よくタマモとオロチの姿にビビらなかったもんだ。さすが金級と感心した。



 群れの端にいた二匹が『怒涛の波紋』の方へ向かう。

 よし、釣れた!これで、シュテンがトロール・キング、タマモとオロチがトロール五体。『怒涛の波紋』がトロール二体を相手することになる。



 本格的な戦いが始まった。

 フライヤさんとチロルさんが一体ずつ受け持ち、キリルさんとリロさんが援護。要所要所でツツデバさんが回復と補助魔法に入る。

 息の合った、そして非常に勉強になる戦いぶりだ。ずっと見ていたいがそうもいかない。

 タマモとオロチは、まさに縦横無尽。あの巨体ですばやく動き回り、タマモは魔法、オロチは針か鱗だか分からないが飛ばしている。

 シュテンはトロール・キングと大剣の打ち合い。速さや技量はシュテンが上、だがトロール・キングの体力は無尽蔵のようで長引きそうだ。って、シュテンさん笑ってるじゃないっすか。



 オレたちはタマモとオロチに巻き込まれないよう、後方で戦況を見つめる。

 いつ敵に迫られてもいいように、ずっと構えっぱなしだ。

 怖い気持ちもあるが、それにも増して集中力を要する。もう流れる汗も気にならない。



 長いようで短い時間、そうしていた時に、ビーツが喋りだす。



「! オロチ!? ……えっ!分かった!みんなはこのままでお願い!僕らで何とかするから!大丈夫!みんな頑張って!」



 おそらく念話だろう。従魔と主は『パスが繋がる』と聞いたことがある。



「ビーツ、どうした?」

「うん!後ろからトロールが二体来るって!」

「っ!これで全部じゃなかったのか!ちきしょう!」

「私たちで迎撃……でいいのよね!」

「ああ!この場は三大妖と『怒涛の波紋』に任せる!オレたちは後方だ!近づけさせるな!」

「「「了解!」」」



 後方の森に入る。トロール・キングとは百メートルは離れただろう。トロール二体と戦うのは森の中にする。

 森の中での戦いとなれば小回りのきくオレたちのほうが有利だ。

 唯一の懸念はビーツの鞭だが、村での特訓はいつも森の中だったって言うし、問題ないだろう。



 トロールを待ちかまえながら、手早く補助魔法をかける。

 クロは武器の鋭さを上げる風属性中級魔法『シャープ・エッジ』を。ビーツは武器の硬度を上げる土属性中級魔法『ストーン・ウェポン』を、それぞれ詠唱込みで。

 デュークは無詠唱でパーティー全体に、物理攻撃を緩和する水属性中級魔法『アクア・ベール』をした後、自らに詠唱しての常時回復を促す光属性上級魔法『リジェネイト』をかける。

 オレたちのパーティーは補助魔法が苦手だ。オレも攻撃魔法ばかりだし。イメージがそもそも沸かないので、どうしても詠唱込みになってしまう。

 その点、デュークは優秀だ。回復術士を名乗るだけあって、中級までの補助魔法ならば無詠唱で行使できる。今度、こつを教えてもらおう。



 そうこうしているうちにトロール二体が視界に入る。

 獲物を見つけたように、こん棒を振り上げ、木々をぬって走ってくる。が、その速度は遅い。



 先に説明していた通りに、先制はオレの仕事だ。

 両手に氷属性の魔力操作を行う。当然無詠唱で魔力を込める。



「はああああ! アイシクル・ガーデン!」



 言うと同時に地面に両手をつける。前方に向かって氷の道が出来る。トロールにぶつかる直前に広がり、トロールの足元を瞬時に凍らせる。

 二体それぞれの地面から足首にかけてを凍らせ、動きを阻害する氷属性中級魔法だ。再現魔法ではない。



「グラワアア!!」



 突然、足元が凍ったトロールたちは慌てて、バリバリと無理矢理に足を引き上げる。

 やはり時間稼ぎにしかならない。だが、その足は止まった。今はそれで十分だ。



 クロがウィンド・ウォールのブーストをかけ、低い姿勢からの居合斬り。ザシュッ!と膝あたりを斬りつけ、即座に離脱。



「かったい!やっぱ無理ね……!」



 クロがそう呟く。やはりトロールの皮は異常に硬いらしい。さらに体力もあるやっかいな敵だ。

 続けてビーツの鞭がもう片方のトロールの目を狙う。

 コンパクトに横薙ぎされた鞭はトロールの両目に命中した。



「よし!」

「安心するな、ビーツ!ヒットアンドウェイを続けろ!」

「う、うん!了解!」



 目を潰されたトロールは当たりかまわず、こん棒を振り回す。近づくのは困難だろう。こっちはビーツに任せる。

 もう片方のトロールは斬られたことに怒ったのか、クロに向かってこん棒を振り下ろす。

 しかし、速さがウリのクロには当たらない。振りかぶった時にはすでに届かない位置に退避している。



 オレも様子を見ているばかりじゃない。

 アイシクル・ガーデンを撃った直後に、雷属性下級魔法『サンダー・ボール』をトロールの頭上に投げる。

 それ自体は攻撃用ではない。次々にサンダー・ボールを作っては投げ、トロールたちの上に浮かび上がらせる。

 今、頭上のサンダー・ボールは十個となった。



「クロ!ビーツ!退けっ!」



 オレの言葉に反応して二人が離れる。

 それを見届けると、十個のボールと繋いでいた『パス』を五本ずつトロールに投げつけ、一気に魔力を放出。



「これがオレ流のギガ〇インだああ!!!」



 バリバリバリ!サンダー・ボールから十本の稲妻が落ちる。トロールの体の所々が焦げ付き、煙を上げる。

 しかしまだ死んでいない。だと思ったよ!

 と言っても、麻痺までいかなくとも痺れはあるはずだ。動きはさらに落ちるはず。

 そう思って追撃の魔力を練ろうとしていた矢先、チャンスと見たのか、斬りかかったのはクロだった。



「はああああっ!!!」



 いつもはウィンド・ウォールを応用して突進力にしているが、それを下から上に。つまりジャンプして風の壁で持ち上げ、さらにジャンプと空を駆け上がる。

 さながら風属性上級魔法の浮遊魔法『エア・フロート』だ。

 トロールの頭上まで行くと、上段の構えになる。今度は、ウィンド・ウォールを自分と剣にも押し当て、斬り下ろしの威力を高める。

 先ほどのシャープ・エッジの効果もある。その威力は跳ね上がる。



 ザシュッ!



 トロールの首に吸い込まれたショートソードは、皮の硬さに阻まれることなく振り切られた。

 首の半分以上が斬られ、血が吹き出す。

 いくら体力に自信のあるトロールと言えど、首を斬られればお終いだ。



「よしっ!」



 その声に安堵はない。もう一体のトロールに向き直る。

 が、両目を潰されたトロールはすでに隣に居なかった。

 オレが攻撃した時の声に反応したのか、こん棒を振り回しながら、こちらに向けて走ってくる。



「はあっ!」



 トロールの背中からビーツが鞭をふるい、足の肉をえぐるが、それを気にする素振りもない。



「デューク!」

「おう!」



 もう距離もない。あと一体の目の見えないトロール。これは一気呵成に攻めるしかない。

 デュークは正しく壁役となる為に、前に出る。



「『金剛不壊』!!!」



 デュークの体が光に包まれ、トロールを盾で受け止める。

 こん棒が慌てて振り下ろされるが、これも盾で受ける。



 金剛不壊はデュークの編み出した技らしい。後で聞いたのだが。

 『アクア・ベール』での物理攻撃緩和、火属性中位魔法『ビルト・コート』での身体能力向上、さらに『リジェネイト』での常時回復を合わせたものだと言う。

 なんでも特訓の時にシュテンの攻撃力が高すぎて、なんとかしようと試みている最中らしい。



 いくらデュークでも、その状態がいつまでも続くとは思えない。

 三人で一気に攻める。



「おりゃあ!」「はあっ!」「てりゃああ!!!」



 ビーツの鞭がこん棒に巻き付き、オレの火球が顔面を焼き、クロが背中から斬りつけた。

 クロはさすがに、さっきの攻撃を連発は出来ないらしい。



「ぐっ!」

「デューク!やばくなったら退け!オレも合わせて下がる!」



 デュークの光が弱り始める。

 しかし、結局デュークが退くことはなかった。

 ドスンと大きな音をたて、トロールが倒れ込む。



「……勝った」



 クロがそう呟いて、ペタンと女の子座りをした。

 ビーツとデュークが大きく息を吐き出し、膝に手をついている。

 オレは流れる汗をぬぐおうとし、手が震えていることに気付く。

 そうか。こんなに怖かったのか。緊張感がどっと抜けた。



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