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大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
サタデーナイト編
22/57

22:伝えておいたほうが無難か



 模擬戦を終えると、ギャラリーから歓声が飛ぶ。

 主にオレたちに対してのものだ。



「すげえじゃねえか!ぼうず達!」

「怒涛の波紋と、ちゃんとやりあってたぜ!」

「一瞬で終わると思ってたわ!かぁ~損した!」



 どうやら賭けの対象になっていたようだ。大穴でオレたちの勝利に賭けた人もいるらしい。残念だったね。

 ビーツの従魔ありなら儲けられたかもね。まぁ目立ちすぎるから従魔なしにしたけど。



 戦った六人は互いに握手している。『怒涛の波紋』はオレたちを称えているが、三人の表情は苦笑いだ。

 そりゃそうだよな。参戦してないオレだって悔しい。差を見せつけられたわけだから。



「予想以上にやるわね。こりゃ明日も楽しみだわ。期待してる」

「ありがとうございました。勉強になりました。明日はこちらこそお願いします」



 フライヤさんの労いにデュークが答える。



「手、大丈夫ですか?弓を弾くつもりだったんですけど、すみません……」

「いや問題ない、かすっただけだ。と言うか、僕が慌てて動いたんだから自業自得だよ」



 クロはキリルさんの手を心配している。剣が当たってたのか。



「ビーツ、斧と鞭の扱いはまぁまぁだけど、あれはないぜぇ」

「す、すみません。クロさんの方が視界に入ったら体が動いちゃいました……」

「甘いとか自己犠牲万歳とかは言わないぜぇ?だが仲間は信用するもんだ。明日はそこんとこ間違えるんじゃねぇぞぉ?」

「は、はいっ!」



 クロを助けたビーツにチロルさんが注意しているらしい。

 笑っているところを見ると、先輩としての助言なのだろう。

 ……と、ビーツの影からニュッと頭が出てきた。



「おい、モヒカン。マスターを殴った罪は重い。コロ―――」

「わああああ!!!」



 ビーツは慌てて、オロチの頭を両手で押さえつけ、影の中にもどした。

 マジギレしてたよ、オロチさん……。よく模擬戦中に出てこなかったもんだ。多分、ビーツから言われていたのだろう。



「ん?なんか今、下のほうから声が……」

「き、気のせいですよ、チロルさん!い、いやぁチロルさんの斧捌きも勉強になったなー!」

「だろ?ヴォールスさん直伝のお前に言うのもなんだがよ―――」



 ビーツのやつめ、はぐらかす時は饒舌になるんだな。大したやつだ。

 周りはある程度閑散としてきた所で、フライヤさんがオレのもとへやってきた。 



「アレキサンダー……いや、アレクだったっけ。悪いわね。仲間を痛めつけちゃって」

「いえ、みんなも言ってましたけど、オレも勉強になりました。ありがとうございます」

「でも君が入ったら勝ってたんじゃない?」

「どうですかね?どちらにせよ模擬戦で魔法は無理ですよ」

「ハハハッ!負けますとは言わないんだね!」

「驚かせるくらいは出来ますよ。それで勝てるとは言いませんが」



 オレたちは初見殺しの手数は多いからなぁ。クロの速さとか、ビーツの従魔もそうだけど。

 まぁクロの速さは見切られてたから、オレの魔法も対処されるかもしれない。



「やっぱ、あんた達は面白いわ。どう、これから昼飯でも一緒に行かない?明日の準備はそれからでも間に合うでしょ?」

「そうですね……おーい!フライヤさんたちとお昼一緒でもいいかー? ……大丈夫ですね。じゃあご一緒します」

「よし、じゃあ私たちの行きつけに行くわよ。付いてきて」



……

………



 フライヤさん達の行きつけは、ギルドからほど近い酒場だった。大きめの酒場でロフトのような二階部分へと階段を上がる。

 後で聞いた話では、高ランクの冒険者が二階、低ランクは一階というのが暗黙の了解なのだそうだ。オレたち鉄級ですけども……?



 フライヤさんの音頭で乾杯し、酒と食べ物をつまむ。オレたちも酒を勧められたが「十歳なんで」と言い張って、果実水にした。

 正直に言えば、元おっさんのオレたちからすれば、飲みたい気持ちはある。(デュークは嗜む程度。ビーツは下戸らしい)

 でも十年も飲んでないし、今更な感じもする。

 何より模擬戦で負けたのに、明日も大事な依頼があると思うと責任感の強いオレとしては飲むわけにはいかない。責任感の強いオレとしては。



 話は模擬戦の内容の良かった点・悪かった点を皮切りに、『怒涛の波紋』の武勇伝めいたものへと続く。

 チロルさんはビーツに「ヴォールスさんのここがすごい」だの「斧のここがかっこいい」だの延々と語っている。

 ビーツの目が死んできた。



 オレはと言うと、魔法使いのリロさんと魔法談義を交わしていた。

 金級冒険者の実戦魔法の話なんて滅多に聞けないからな。



「ところでアレク。君は雷魔法を使えるのだと聞いた。しかも中級。という事は風と土は中級か上級を?」

「……えぇ、まぁ」

「その若さですごいものだ。ちなみに他の属性はどうなんだ?」



 ……どうしよう。

 オレが六属性魔法使い(セクストゥープル)だと言うことは、チッタおばばを始め、村のみんなが内緒にしてくれたことだ。

 村の一部以外で知ってるのは、村に来ていた冒険者パーティーの『森林の聖風』しか知らない。

 神託の儀で、司祭長さんに知られたから、そこから教会関係には洩れているかもしれない。が、少なくとも神託の儀から五年間、教会からのアクションはない。

 もしかしたらあるのかもしれないが、村長さんあたりが防いでくれているのかもしれない。

 じゃあ言わないほうがいいのか?

 しかし明日は大事な依頼がある。咄嗟の判断で使わざるを得ない状況があるかもしれない。

 伝えておくことで状況判断や作戦が変わるかもしれない。うーん……。(ここまでコンマ二秒)



「リロさん、ちょっと待って下さい。おーい!ちょっとメンバー集合!」

「なんだ?集合?」

「作戦会議!『魔獣の聖刀』集合だ!」



 オレたちは机の隅に集まり、スクラムを組んで、ひそひそ話す。

 ちなみにビーツは「やっと解放された!」とばかりにすっ飛んで来た。



「……というわけなんだよ。話してもいいと思うか?」

「うーん。確かに明日の事を考えれば、話すべきとも思うが……。事が事だからなぁ」

「私は話すべきだと思う。『怒涛の波紋』は言いふらすような人たちじゃないと思うな」

「……遅かれ早かれ、ばれるような気もしますね。僕の従魔のことも言っておいたほうがいいかも……とは思ってます」

「ビーツの従魔は話すんなら三大妖だけにしておけよ?登録がそうなってるんだから」

「そうですね、分かりました」

「よし、じゃあ言うわ」



 という事でスクラムをといて、席に戻る。

 「どうしたんだ、お前ら」と『怒涛の波紋』の五人はハテナマークだ。



「ちょっと皆さんにお伝えしておこうと思いまして」

「なになに、真面目な話?」

「はい。オレのことなんですが、ここだけの話にして欲しいんです」

「アレクの?あぁまぁ冒険者なんだから他の冒険者の秘密や情報を話すのはタブーよ。で、そう言うってことはアレクの力についてなんでしょ?冒険者としては秘密のままのほうがいいわよ?技を隠すのは武器にもなるからね」


「それは承知してるんですが、明日の事もあります。咄嗟の時に使える、使えないが判断できないのは武器とは言えません」

「ふむ。明日の依頼でばれる事になるかもしれないって考えてるのか。いい勘ね。私も明日の依頼はきな臭いと思っている。正直言えば、昼飯に誘ったのも戦力を確認したかったってのもある。ごめんね」

「戦力確認はこちらも同じですんで、お気遣いなく。じゃあ、すいません皆さん、顔をオレに寄せて下さい。内緒話なんで。あ、それと聞いても騒がないで下さい。一階には他の冒険者もいるんで」

「おいおい、ずいぶんもったいぶるなぁ。余計に気になってきたぜぇ」


「実はですね……俺……」



 ゴクリと皆が唾をのむ音が聞こえる。



「……六属性魔法使い(セクストゥープル)なんです」


「「「「「………ハハハハハッ!!!」」」」」

「何だよ!もったいぶって笑わせるんじゃないわよ!このガキが!ハハハッ!」



 でしょうねー。まぁ言って信じてもらえないとは思っていた。

 で、オレは周りから隠すように、そして『怒涛の波紋』の五人に見えるように、両手から三本ずつ、指を出す。



「火・水・風・土・光・闇」



 指先から極小の属性ボールを出す。



「ハハ…………え?」

「ね?」


「「「「「はああああ!?」」」」」

「シーッ!静かに!静かに!」



 慌てて皆のボリュームを下げる。

 『怒涛の波紋』の面々は声量を下げながらも興奮している。



「いやいやいや。まじで!?まじかよ!」

「ありえないでしょう!いや、ありえてるのか!?」

「だから属性の話で遮ったのか……」

「初めて見たわ……」

「僕は二人目ですが、いやはや驚きました」



 ん?



「キリルさん、オレの他にも六属性魔法使い(セクストゥープル)知ってるんですか?」

「えぇ。と言ってもこれも内緒……いや、その内に周知の事実となるんでしょうが、エルフ王家の子供が六属性魔法使い(セクストゥープル)です」

「えっ、エルフって火属性とか無理なんじゃ……」



 と、デュークが問いかける。



「はい。ですのでエルフの国内では大騒ぎでしたね。まだ二十歳の幼子ですが、次期王位は確実と言われています」



 はぁ~、オレの他にもいるのか……。良かったような、特別感が減って悔しいというか……。

 でも他にいるのが確実となれば秘密にしなくなる日も近いんだろうな。



「あ、あの、僕もアレクくんと一緒で、秘密の事をお話ししたいんですが……」

「おいおい、ビーツもかよぉ」

「一緒という事は、ビーツも明日ばらすかもしれないから、という事?」

「は、はい」

「ふむ。まぁアレクのインパクトの後だと、何でも来いという感じだな。聞くだけ聞いてくよ」



 また顔を突き合わせ、ひそひそ話の態勢になる。



「は、はい。僕の従魔なんですが、三体いるんです」

「……そ、そうか。いや、アレクの後だと反応に困るわね」

「いやいや、フライヤ。従魔が三体とか異常なんですよ?」

「そうだな。普通は一体。多くても二体と聞く」

「いや、分かってるよ。分かってるんだけど、魔法使いと違って召喚士なんてほとんど見ないから、すごさが伝わらないのよ」



 キリルさんとリロさんに言われて取り繕うフライヤさんだが、言ってる事は正しい。

 召喚士と従魔の関係性なんて、剣士には無縁のものだしな。

 まぁ世の中には召喚の出来る剣士だっているんだろうけど。



「あれだろぉ?話に聞いた狐の獣人がどうとか……」

「あ、えっと、獣人じゃなくって、人型に変化した『ファイブ・テイル』です」

「……え?……ファイブ・テイル?」

「聞いたことあるぞ?確かダンジョンの下層のフロアボスでいたはずだ」


「はあ!?ボスクラスの従魔!?」

「シーッ!静かに!」

「い、いやごめん。え?すると何?そのファイブ・テイルが三体もいるの?」

「あ、いえ、他の二人は、『ダーク・サーペント』と『フレア・オーガ・クイーン』です」


「「「「「…………」」」」」


「……頭痛くなってきた。災害級じゃないの……」

「マジかよ、ビーツ……。そんなのが従魔とかありえるのかぁ?いや、ありえる……かぁ」

「やばい、ちょっと冷静に考えられない……」

「な、なんかすみません……」



 ビーツが恐縮し始めた。これは話しておいて正解だったかもな。

 実戦でいきなりそんな従魔を出したら驚いて戦いどころじゃなくなりそうだ。



「ここで見せてもらうわけにもいかないでしょう。明日、他のパーティーと離れてギャラン山に入る前に、見せてもらえない?」

「あ、はい。そのつもりです」

「ふぅ……いや、驚いた。こんなに驚いたのは久しぶりね」

「逆に明日の依頼で組むのが『魔獣の聖刀』で良かったとも言える。心強い」

「だな。ちょっと楽しみになってきたぜぇ!」



 そんな感じで賑やかな昼食は終わった。

 その後、パーティーで分かれ、依頼用の買い出しなどを行い、明日に備えた。



 ちなみに翌日。三大妖を目にしたフライヤさんが一言。

 「こんなの勝てるわけないでしょ……」とのこと。

 ですよねー。



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