21:実力を見せてもらおうか(威圧)
緊急依頼の翌日、オレたちは冒険者ギルドへと行くと、依頼報酬と討伐報酬を受け取った。
討伐報酬が結構な額になった。多分、オレたちだけで半分くらいは倒してるだろうしな。
そして、その日は休みとした。午前中は消耗品の買い出しや、まだよく回ってなかった街中の散策。
村からここまで一緒に来たウェスさんの店にも顔を出し、少しお安くしてもらった。
午後はそれぞれにやりたい事をやる感じ。まぁ結局、みんなで街外へ出て、ビーツに三大妖を召喚してもらい特訓だったのだが。
特訓はシュテン対デュークとクロ組で近接戦の特訓。
オレとタマモで魔法の特訓(五メートル以内侵入禁止)。
ビーツとオロチで中距離戦の特訓となった。
そのうちパーティー戦でもやりたいね。ボロ負けだろうけど。
そしてさらに翌朝。ギルドからの呼び出しが宿に入った。
何事かと急いでギルドへ行くとメアリさんから声がかかった。
「『魔獣の聖刀』の皆さん、ギルドマスターがお呼びですメェ。二階の会議室に行って下さいメェ」
「ん?……ギルドマスターが?」
「なんで?」
「さあ……」
オレたちは、とりあえず二階に向かった。階段を上り、一番手前に会議室のプレートが貼られた扉がある。
緊張の面持ちで、ドアをノックした。
トントントン
「『魔獣の聖刀』です。ギルドマスターはいらっしゃいますか?」
「おお、来たか。入ってくれ」
失礼します、と扉を開けて中に入る。
会議室は十畳ほどのスペースに長机があり、周りを椅子が囲んでいる。
椅子はほとんど埋まっており、ギルドマスターの他、見慣れた面々が座っていた。
『白銀の盾』『大地の守り』『業火の赤壁』それと見たことない一組のパーティー。
……いや、一人見たことある。世紀末だ。
初めてギルドに来た時に、親切にしてくれたビーツの親父さんのファンでもある世紀末がいた。
あの時一緒にいた他の連中はパーティーじゃなかったのか。
「さて、そろった所で始めようか。『魔獣の聖刀』も座ってくれ。まずは自己紹介といこうか」
順々にパーティーの紹介をしていく。オレたちも名前と職業を紹介した。
世紀末のパーティーは『怒涛の波紋』というらしく、リーダーはウェーブのかかった赤髪の女性。大剣使いのフライアさんと言った。
ちなみに世紀末の名前はチロルさんというらしい。可愛らしい。
「集まってもらったのは他でもない……と言ってもすでに『魔獣の聖刀』以外には話は済んでいるのだが、改めて説明するぞ。
七日ほど前からギャラン山の周辺で、魔物の上位種が出始めた。そして二日前のエア・ホークの群れ。どちらも本来は平野まで出てこない魔物だ。ギャラン山に何かが起きているのは確実だろう。そこで調査及び、可能であれば原因の排除をお願いしたい。これはギルドからの依頼だ」
オレたちが初依頼で見かけたホブゴブリンも、森の深くか山じゃないと見ないってメアリさんが言ってたもんな。
「銀級パーティー『大地の守り』『業火の赤壁』『白銀の盾』は森を三方向から進み、森深部の調査及び、魔物を排除しながら、ギャラン山の麓まで行って欲しい。
金級パーティー『怒涛の波紋』鉄級パーティー『魔獣の聖刀』は真っすぐギャラン山へと向かい、頂上付近の調査及び、原因の排除だ」
……は?
「いやいやいや、ちょっとすみません!オレたち鉄級ですよ!?」
「金級パーティーと組んで調査及び原因の排除って……」
「ぼ、僕たちが森の方がいいんじゃないですか……?」
オレたちが騒ぐが、他の四パーティーはすでに聞いていたのだろう、落ち着いたものだ。
「言いたい事は分かる。まず『怒涛の波紋』は現状動かせる唯一の金級パーティーだ。他は出払っているからな。かと言って『怒涛の波紋』だけで山の調査は危険だろう」
「あら、私らが信用ならないってことかしらね?」
フライアさんが茶化すように言った。
「じっくり調査ならばお前らだけでもいいだろう。が、今回は探索範囲も広く、かつスピーディーな調査が求められる。人手は多いに越したことはない。とは言え、それなりの腕がなければ『怒涛の波紋』の足手まといになるだけだ」
「俺たちがこの中で一番、足手まといじゃないですか?」
デュークがすかさず突っ込む。
「いや、『大地の守り』『業火の赤壁』『白銀の盾』からの推薦だ」
「「「「はあ!?」」」」
こないだ一回、一緒に戦っただけだろう?
なんで新米冒険者のオレたちを推薦するんだ?
「いやぁ俺たちは二日前に調査に行って、結局山どころか森までも行けずに助けられたしなぁ」
「仮に我々ではなく『魔獣の聖刀』が行っていたら、増援が来る前にエア・ホークを討伐していたと思う。我々としては情けない所だがな」
「力があるのは証明済みです。『怒涛の波紋』に次ぐ戦力となると、現状『魔獣の聖刀』しか思い浮かばないですな」
おいおい、なにこの高評価……怖いんですけど。
「というわけだ。ついでに言えば、緊急事態に陥った際の対処として、アレキサンダーの広範囲魔法、デュークの回復魔法、伝令としてクローディアの俊足やビーツの従魔がある。他の面々より安全性は高いと見ている。どうだ?『魔獣の聖刀』は受けてくれるか?」
と、ギルドマスターが続ける。
まぁ言われてみればそうなんだけど……。
オレは周りのメンバーに視線を向ける。
オレと同じように考えつつも、「やるしかないんだよなぁ」という表情だ。
「……分かりました。足手まといにならないよう、全力で当たらせてもらいます」
「そうか。では、調査は明日の早朝、『一の鐘』が鳴る頃に西門に集合だ。他になければ、終わりにするが――」
「ちょっと待ったギルマス」
待ったをかけたのはフライアさんだ。
「ギルマス含め、みんなは『魔獣の聖刀』の力を知ってるんでしょ?でも私らは話に聞いただけ。この目で見たわけじゃあない」
「ほう、つまり新米とは一緒にやりたくない、って事か?」
「そうは言わないわ。話だけでも面白いやつらだってのは分かる。調査は明日からでしょ?この後、裏の訓練場で模擬戦しない?」
うわっ……つまり力量を見極めたいと?
フライヤさんってのは、見かけ通りにバトルマニアなのか?世紀末もいるくらいだし……。
「ふむ。まあ組む前にお互いの力を見ておくのは、確かに重要だな。どうだ?『魔獣の聖刀』は」
またメンバーに視線を向ける。
「やるしかないんだよなぁ」という表情。デジャヴかな?
「……分かりました。こちらは構いません」
「よっし!じゃあ行くよ!」
フライヤさんウキウキじゃないっすか。『怒涛の波紋』の面々も。
他の三パーティーも見学しようぜ!ってノリになってる。
会議室を出ながら、オレたちはヒソヒソと会議する。
「さて、どうするか……」(小声)
「やるっきゃないでしょ!こうなりゃヤケよ!」(小声)
「問題はどこまで『見せられるか』だな」(小声)
「従魔はどうしましょうかね……」(小声)
「そりゃ無理だろ、従魔だけで金級に勝っちまうぞ」(小声)
「ですよね……」(小声)
オレたちは気を重くしながら、訓練場へと向かった。
…
……
………
「さて、どう戦いましょうかね。とりあえず魔法はなしだとして……」
よっしゃ!オレは免れた!
小さくガッツポーズをする。横で三人の目が怖いのでそれは見ない。
「三対三の模擬戦にしましょうか。一戦ずつやってもパーティーの力は分かんないしね」
「あ、すみません。召喚はなしでもいいですか?三対三じゃなくなっちゃいますし」
「へぇ。わざわざそっちに有利な条件をなくすの?別にいいわよ、こっちは」
よし。こっちの手札はあんまり見せたくないからな。
いつの間にかギャラリーも多いし。みんな仕事行けよ。
で、こちらはデューク・クロ・ビーツの三人。『怒涛の波紋』はフライヤさんが大剣、チロルさんが大斧、キリルさんというエルフの男性が弓。
それぞれ、模擬戦用の武器を持って対峙する。
先ほどまでげんなりしていた三人の表情も、今は緊張感に満ちている。
『怒涛の波紋』の残りメンバー、魔法使いの女性のリロさんと、回復術士の女性でリスの獣人のツツデバさんは、オレと並んで見学。
距離は三十メートルほど。こちらはデュークを先頭にクロ・ビーツと一直線に並ぶ。ジェ〇ト・ストリーム・アタックかな?
『怒涛の波紋』はフライヤさん・チロルさんが前衛でほぼ横並び。後衛中央にキリルさん。
審判を務めるギルドマスターの声で模擬戦が始まる。
「はじめっ!」
キリルさん以外の五人が走り出す。しかし、先手はそのキリルさん。素早く弓を引き、矢を一閃。
狙いはデュークの額。完全な牽制。盾を顔の前に構えさせて視界を遮るためだけの矢。
しかし防がないわけにはいかない。デュークは盾で矢を弾く。
それが合図とばかりに両陣営が動く。
まずはビーツが列からずれて、鞭を飛ばす。チロルさんが大斧で防御。
チロルさんは狙いをデュークからビーツに変更。距離を詰める。
ビーツの鞭打と同時にクロがダッシュ。風魔法によるブーストで一気にフライヤさんの懐へ。
(速っ!この娘っ―――!)
慌てたように大剣で迎撃しようとするも、クロはフライヤさんに攻撃せず、さらにブーストで脇を抜ける。
(狙いはキリルか!)
第二射を撃つつもりだったキリルさんが、迫るクロに慌てる。
弓の狙いを直前にクロへと向けるが、それも遅い。低い体勢からの居合一閃で弓を手放させることに成功。
これで人数は三対二……と安堵した瞬間。
「クローディア!」
フライヤさんはクロの狙いが分かってすぐに反転、クロの後ろに迫った。デュークが叫ぶ。
クロの態勢は居合が終わったまま、迎撃できるものではない。
フライヤさんの大剣が振り下ろされ―――なかった。
ビーツの鞭がフライヤさんの大剣に巻き付いていた。
ビーツはチロルさんの攻撃を、サブウェポンの片手斧で捌きながら、クロの危機を知り、無理矢理に鞭を伸ばしたのだ。
しかし当然、そんなことをすればチロルさんの攻撃を防げるわけもない。
「くそっ!」
慌ててビーツを守ろうとするデュークも間に合わず、チロルさんの攻撃によりビーツが吹き飛ばされ、転がされる。
そのまま、デュークはメイスでチロルさんを攻撃。それも分かっていたチロルさんに防がれる。
デュークは盾とメイス。チロルさんは両手での大斧。なのに手数はチロルさんのほうが多い。これはもう時間の問題だった。
一方、ビーツに助けられたクロは距離をとり、態勢を整え、フライヤさんと対峙した。
低い体勢から、ダッシュで懐へもぐり、一閃―――最速の剣戟が防がれる。
「直線的すぎる。来ると分かれば防げるわよ!」
クロに焦りの表情が見える。シュテンとの特訓でも見せた表情だ。
多少の態勢のズレを気にせず、左右のフェイントを入れ剣戟。魔法は禁止だから『烈風斬』はなしだ。
「確かに速いが、止めればもろいわね。おまけに軽い」
いいようにあしらわれた。
結局、デュークよりも早く、フライヤさんの一撃を受けて脱落。デュークもすぐ後に脱落した。
戦闘時間は五分もかかってないだろう。
一対一の状況を作られた時点で、オレたちの負けだった。
これが金級冒険者か―――素直にすごいと思った。




