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大魔導士「ベギ〇ゴンって何属性ですか?」  作者: 藤原キリオ
パーリーピーポー編
2/57

02:初めての魔法



 どうやらオレの名前は『アレキサンダー』らしい。死にたい。

 なんでキラキラネームなんだよ!どこぞの王にでもさせる気か!あ、でも地球的な知識なんてあるわけないし意外と一般的な名前なのかもしれない。まだ判断できん。



 あれからオレは両親といる時は、言葉を覚えるのに必死になり、目を盗んでは魔法について模索していた。

 オレの名前が分かったのも、ずっと呼びかけられていたからだ。ちなみに愛称は『アレク』らしい。じゃあもうアレクが本名でいいんじゃないかと。



 もっとも、最初は異世界転生が確定した時点で、お決まりのチート能力が備わっていないかの確認もしていた。

 しかし、いくら念じてもウィンドウやマップも出ず、目を凝らしても鑑定はできず、アイテムボックス的な異空間収納もない。脳内で語り掛けても天の声が聞こえるわけでもない。

 まだ確定したわけじゃないが、おそらくチート能力はないだろうと一旦結論づけた。まぁそんな都合よくいくわけもない。魔法のある異世界に来ただけでもオレは満足だ。



 そしてどっぷりと魔法について考える。

 おばさんが使った『指先からライターのような火が出る魔法』をとりあえず真似てみる。



(火よ、出ろ!)



 うんともすんとも言わない。ですよねー。でも何か理由があるはずだ。



  一、赤ん坊だから魔力が足りない、もしくは一定年齢にならないと魔法が使えない。

  二、魔法適正がそもそもない、もしくは火属性の適正がない。

  三、詠唱が必要。

  四、魔力操作が必要。

  五、魔法陣や魔道具、杖などの補助が必要。



 パッと思いつくのがこんな所だ。一か二が原因だとすると、もうどうしようもないので考えない。考えたくない。

 三か五なら、次に誰か魔法を使う時に、よく観察しよう。その為にも言語理解は必要だ。

 というわけで四をメインに考える。


 

 魔法って現象を引き起こすんだから、当然どこからかエネルギーを出すはずだ。材料もなしに結果は産まれないだろう。

 ありきたりな考えをすれば、体内の魔力(MP)を使い放出する。もしくは大気に含まれる魔素(というのか分からないが)を魔法として現象化させる。

 日本でサブカルチャーを嗜んでいたせいか、いろいろと考えつくが、どれも憶測の域を出ない。

 それでも時間はあるんだ。早く魔法を使いたい気持ちを抑えつつ、色々と試してみよう。



……

………



 丸二日、体の中の違和感を探しまくってアタリをつけた。多分これが魔力じゃないかな?

 例えて言うなら、極めて体温に近い温度の温泉に体内だけ浸かっているような感じ。

 生前とは違う感覚だが、相当に意識しないと気付けない。赤ん坊なんだから体温が高いだけかな?とも思ったが、体温ともまた違う。



 これを魔力だと仮定して、操作してみる。



(うーーーーん。 ふおおおおお!)



 念じても気合を入れてもダメだ。いや、まだ諦める時間じゃない。諦めたらそこで異世界転生終了ですよ。

 魔力っぽい何かに意識を向け、ひたすらイメージする。



(動け動け動け動け、揺れろ揺れろ揺れろ揺れろ……)



 ピクン



(!!! 今、波打った!? 体の中で波打ったぞ!? 血液じゃないよな!?)



 それから、その感覚を何度も試す。意識して動く感覚があるってことは、体内に魔力的な何かがあるって証だろう。いやもう魔力で確定でいいか。オレはこいつを魔力とする!

 そして魔力の揺れ幅を徐々に大きくする。ゆっくり体内を循環するイメージ。あーこれもう体内温泉だな。でも集中力をめちゃくちゃ使うから、温泉なのにすごい疲れる。

 


 三日経った。魔力の体内移動もだいぶスムーズになってきた。と言っても動きはゆっくりでぎこちない。依然として集中力もいるし、相当意識しないと動かせないが。

 よし!再度ライターにチャレンジだ!



(指先に魔力を集中……熱が集まる……指先が体内温泉の噴き出し口だ……周りはぬるく、指先だけ熱く……)



 そうすると指先の周りの空気にも変化が起こる。

 指先の熱に空気がまとわりついてくるような。光に群がる虫?撒き餌に群がる小魚?そんな感じ。



(魔力に大気中の魔素(?)が反応してるのか?これはいける!)



 指先に集まる魔力の熱を、周りの魔素と結合させる!十分な熱で溶けあう!



(火!火!火!出ろっ!てりゃああああ!!!)



 ボウッ!!!

 ライターの火どころではない。自分の頭の大きさほどの火の玉が一瞬にして現れ、そして消えた。



「オギャー!(うわあっ!熱っ!布団は!?だ、大丈夫、被害な……し……ってあれ……?)



 がくんと視界が暗転した。



……

………



(魔力切れで気絶か……)



 目覚めてすぐに、そう思った。

 となりには母親の寝顔がある。突然泣いたから心配させたのだろう。申し訳ない。

 改めて、あの時のことを考える。

 赤ん坊の体ではやはり総魔力量が少ないのだろう。加えて、火を出す時に籠めた魔力が多すぎたのだろう。理解しているわけじゃないのに、そう確信した。



 しかし、魔法が使えたことに変わりはない。テンションがあがる。めちゃくちゃ嬉しい。

 さあ、一回できたからには検証だ。

 魔力の調整はできるのか。総魔力量は上がるのか。他の属性は使えるのか。

 考えるだけでわくわくする。



 漫画やゲームで見た魔法を再現してみたい。

 生前で考えればバカみたいな妄想が目の前に広がった。

 が、この世界では妄想に終わらない。多分、手が届く。 



 生後五日目。

 初めて魔法を使った。

 これが大魔導士アレキサンダーの第一歩。



 ……あ、ちょっとテンション下がった。



 大魔導士アレクの第一歩だ。



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