13:クロとアレクの場合
…side:C
「というわけで、私は冒険者になるわ!」
「ダッ、ダメだ!ダメだ!ダメだ!危険じゃないか!愛する我が娘を外に出すわけにはいかん!」
「あらあら、うふふ」
うちのお父さんは超過保護。帯剣してる時は厳格で真面目な衛士さんなんだけど、家に帰れば娘にダダ甘だ。
お母さんはのほほん系。でも怒ると恐い。結局は決定権を持つのは、いつもお母さんだ。
「神託でも言ってたじゃない。北に行けって。村にずっといるわけにはいかないわよ」
「いやいや、神託はあくまで道標の一つだから!なぁペリーヌ!」
「うふふ。私は止めないわよ?アレクくんと一緒なんでしょ?」
「ちょっ!」
「うん。アレクとデュークとビーツ。四人ね」
「男ばっかじゃないか!」
「うふふ。じゃあ安心かしらね「どこが!?」みんないい子たちだし」
「ああああ!反抗期か!?これが反抗期なのか!?」
お父さんのフォローは大変だったけど、お母さんは納得してくれた。
これで、心置きなく修行に打ち込める。
お父さんの稽古はもちろんだけど、それだけじゃ足りない。
なんせ、私以外の三人は化け物揃いだ。六属性のアレクに神童のデューク、チートテイマーのビーツ。
自分たちは「チートじゃない」って言ってるけど、私からしたら十分チートだと思う。
このまま一緒に行けば、間違いなく足手まといになる。
『悩む必要はなし。今の魂を受け入れよ。』
男とか女とか関係ない。出来る出来ないも関係ない。
私はみんなと冒険者として『侍ガール』を目指す。だって、それがしたいから。
その為のこれから五年間。楽しそうだ。
あー、早く『森林の聖風』の人たちが来ないものか。
大体、一年ごとに来るって話だけど、来たらいろいろ教えて欲しい。
それと実戦。今度森に連れて行ってもらおう。
お父さんの説得が大変そうだけど……。
…side:A
「で、何だよアレ。群れてんじゃねーか」
「珍しいわね。って言うか、ちょっとした問題よね、これ」
あれから五年が経とうとしている。俺たちはもうじき十歳だ。
各個人での修行の合間に、時々集合しては話し合ったり、連携の練習をしたりしている。
で、実際に森で戦ってみようという話になり、ヴォールスさん(ビーツの親父さん)付き添いの元、探索に出たのだが……。
「ゴブリンが四匹に、ゴブリンの子供?が十匹……」(小声)
「いや、ホブゴブリンとゴブリンですよ、あれ」(小声)
「えっ?あれ、ホブゴブリンなの!?クロと戦った時にゴブリンって聞いたぞ!?」(小声)
「私もお父さんからゴブリンって聞いてたんだけど」(小声)
「この森はゴブリンよりホブゴブリンのが多いからな!村の連中はホブゴブリンの事をゴブリンって言うのさ。がっはっは!」(小声)
オレがゴブリンと思っていた百七十センチオーバーの奴はホブゴブリンらしい。
まじか。じゃあ四歳でホブゴブリン倒してたのかよ。
「あれだろ?四歳の時の河川敷のやつ。お前らよく生きてたな……」(小声)
「四歳での初戦闘がホブゴブリンとか自殺行為ですよ……」(小声)
「いや、実際死にかけたし!」(小声)
「だよねぇ。どうりでデカいし、強すぎると思ったわ」(小声)
「で、どうする?お前らが無理だってんなら、俺が蹴散らしてくるぞ?がっはっは!」(小声)
みんなの顔を見回す。うん。戦わないって選択はなしだな。
オレとしては、あの時の恨み(若干のトラウマ)を晴らすチャンスだ。
「じゃあオレがまずは一発撃つわ。その後、クロとデュークが先行してホブゴブリン狙い。ビーツが周りのゴブリン。オレも後を追ってゴブリン狙い。
ヴォールスさんは最後尾で危なくなったらお願いします。で、いいか?」
「オーケー!」
「従魔は出さないでいいですね?」
「大丈夫だろ。ヴォールスさんもよろしいですか?」
「がははは!ギブアップは早めに言えよ?俺も退屈だからな!」
いつもおどおどしてるビーツと性格が違いすぎる。
まぁ実際強いらしいから頼りにはなるんだけど。
「よし!じゃあ行くぞ!」
オレは魔力を高める。右手をゴブリン集団に向け伸ばし、手のひらは上に。人差し指と中指をつけ、他の指は握る。
狙いはゴブリン集団の足元一帯。そこに向けてミスト(大気中の魔力)のパス(魔力の通り道)を繋ぐ。
魔力を火属性に変換。パスを通し、地面を爆発させると同時に人差し指と中指を上に向ける。
クンッ ―――ドカアアアン!!!
「おまっ!それっ!」
「ナ〇パの『クンッ』じゃないですか!」
「ジャイ〇ント・ストームね!」
「がははは!すげえなぼうず!やるじゃねえか!」
走りながら三人+保護者が騒ぐ。ふっふっふ、好評で何よりだ。
いやぁ再現するのは苦労するんだが、こうして実際に使えると、感慨もひとしおである。
その後、スムーズにゴブリン集団を倒すことが出来たが、正直、初撃でやりすぎた。
足止めのつもりが、結構なダメージを与えていたらしい。
ゴブリンとか半分死んでたし。
「まぁ見せてもらった限り、大丈夫だろ。これなら冒険者にもなれるはずだぜ!」
と、ヴォールスさんにもお墨付きをもらえた。
と言ってもこの人適当っぽいから、ちょっと心配なんだけどね。
ビーツの手前、触れないでおこう。
何はともあれ、これで旅立つ準備は整った。
心置きなく冒険者となれる。
いよいよ出発だ。このパーリーピーポー村から。
……十年経ったが慣れないな、この村名。




