01:プロローグ
初投稿です。
ありきたりな転生物をシリアスなし、恋愛要素なし、詳細描写なしの斜め読みできる感じにしています。
苦手な方はブラウザバックお願いします。
最後に見たのは目の前に迫るトラック。
携帯電話を横目に操作する運転手の顔。
オレの体は強張り、竦み、動けず。
声も出せずに、そして――。
最初に見たのは外国人と思われる男女の顔。
ひげ面で筋肉質な男性。
まるでスクリーンから出てきたような美人の女性。
やさしげな笑顔と、その目には涙。
その時オレは当然の事ながら、パニックの最中にいた。
「オギャー!オギャー!(えっ!何何!どこ!誰、あなたがた!)」
「オギャー!オギャー!(な、何人!キャンユースピークジャパニーズ!?)」
何を騒ごうが「オギャー」としか言えない。そんな事にも気づけない。
視界に入る自分の手が、赤ん坊のそれだと気づけない。
完全なるパニックだった。
・・・
ちゅー ちゅー
(あー……やっぱ、おっぱいって偉大だわ。こんな落ち着けるもんかね。味はよく分かんないけど)
唐突に始まった女性のストリップに驚き、飲めと言わんばかりに迫るおっぱい。
半ば無理やりに口へと入れられたが、びっくりするほどの鎮静効果があった。
おかげで少しは冷静に考えられる。
(とりあえず……これは夢か?事故にあって、確実に死んだと思ったけど、実は今、気を失っている状態で夢を見ている。これが一番可能性が高いと思うんだけど……)
しかし五感がそれを否定する。触覚・嗅覚・視覚・聴覚・おっぱいの味覚、どれも現実的だ。
(じゃなかったら、やっぱこれ転生か……?)
赤ん坊になった自分。両親と思われる外国人。
何か語り掛けられているが、さっぱり分からない。多分、聞いたこともない言語だ。
周りに目を向けても、家電製品の類は存在せず。
(どこかヨーロッパのど田舎か?さもなきゃタイムスリップで過去に飛んだ?)
どんどんありえない方向へ考えが加速する。
そんな事あるわけない。しかし現に転生はしているのだ。
現実的でない展開。ありえない展開。上等だ。
現状で手に入る情報をもって、とにかく精査するしかない。
そしてオレは見た。
出産の手伝いに来たのだろうか、ふくよかなおばさんが台所へと向かう。
お茶でも沸かすのだろうか、竈に水をはった鍋をおき、手持ちの藁に火をつけ、薪へとその火を移す。
(!!! い、今、ライターとか使ってなかったぞ!指先から火を出した!)
「オギャー!オギャー!(うおおおおお!魔法!魔法だよな!今の!)
慌ててオレをあやす両親。でもそんなの関係ねえ!それどころじゃねえ!
さっきまでパニックだったオレは、興奮と感動の最中にいた。
夢にまで見た魔法がここにはある!
つまりこれは―――異世界転生だ!