§40 夏休みの前には
「メル、いいのか」
アルの台詞にメルは頷いた。
「ここのなら問題は無いと判断」
その台詞が何を意味するのか、少なくとも俺にはすぐ理解できた。
人数に一枚足りない許可証。
『許可証を必要としない友人』、『彼女に色々案内して貰えばいい』という台詞。
その彼女とはやはりメルだった訳だ。
「父の仕事の関係でアムに住んでいた。でも家は元々シルダ」
「ただこの件は他には言うなよ。シルダに繋がると知られたら色々面倒な事になりかねないからな」
アルがそう注意。
「アルは知っていたの?」
ラインマインの台詞にアルは頷く。
「父の仕事柄、一応な」
「どっちにしろ、夏休みが待ち遠しいのだ」
アン先輩は本当に楽しみという感じだ。
夏休みは七月一日から三十日まで。
なお話はずれるけれどこの暦は日本で使っていた暦とは違う模様だ。
学校が始まったのが三月一日で、一ヶ月が二十九日か三十日。
ちなみに今年は一年が三百五十四日だ。
その代わり三年に一度程度、閏月が入るらしい。
まあ暦についての細かい事は良くわからないけれど。
なお今日は六月二日周二だ。
「確かに僕も楽しみになってきた」
「私もですわ」
ヘラがそう言ったところで、アルが慌てた口調になる。
「でもシルダでは商売っ気は無しで頼む。あそこは門外不出の件が多いらしいんだ」
「わかっていますわ、それくらいは」
微妙に怪しいと思ったのは俺だけでは無いと思う。
「確かに夏休みが楽しみになったけれど、その前にテストがあるんだよね」
これはラインマイン。
「そればっかりはしょうがないな。でもラインマインもヘラも充分復習で確認をしている筈だろ。少しは自分の実力を信じたらどうだ」
「でも私がここに入校できたのはアルとメルのおかげだよ。それでも最下位合格、ぎりぎりの処だったし」
「合格は合格」
「そう、自信を持て」
ラインマインをアルとメルトで支えているような感じ。
何か微笑ましい。
「そんな感じで初級上位学校からやってきた訳なんだな、きっと」
俺の感想にアルは頷く。
「まあそうだな。ただラインマインは結果はきっちり出すんだ。初級上位学校に進学する時だってギリギリだったけれど、こうして無事上位中級学校に入れたしさ。それも国内で最難関のカウフォードの学校に。だからもっと自信を持っていい」
「そうかなあ」
ラインマインは自信なさげ。
「今度のテストで二学期の席順も決まりますし、落第点を取ったら夏休みまで補習が入りますわ。ですから何としてでも及第点は取らないと」
そう言いつつもヘラもあまり自信は無さそうだ。
「アン先輩は余裕そうですね」
ラインマインのちょっと恨めしげな台詞にアン先輩はにやりと嗤う。
「ふふふふふ、この精励章バッチが目に入らぬか、なのだ」
襟につけている精励章バッチ二つをこれ見よがしに見せつける。
これは年を通しての学業優秀者三名に学校から授与されるバッチだ。
二つという事は一年次の精励章と二年次の精励章両方を取っているという事。
つまりアン先輩は小学生にしか見えない見かけとは裏腹に成績優秀という訳だ。
「頭の出来が違いそうで羨ましいなあ」
「私も同意ですわ」
ラインマインとヘラがため息をついた。




