§34 思考読解魔法、レベル壱プラス
完成したスポーツサンダルをラインマインに履いて貰う。
革紐の長さを足に合わせて調節。
長さ調整は木で留め具を作った。
ニカワで固めたり魔法で圧縮強化したりで素材の強度は増してはある。
あとは耐久性と履き心地。
「うん、履くのは簡単だね。これで足から外れないみたいだし」
ラインマインの足は可愛いけれどちょっと傷が多い。
猛速度で走ったりするとどうしても足に傷が出来てしまうのだろう。
「それじゃちょっと色々試してくるね」
ラインマインはそう言って姿を消す。
いつもの事だけれど本当に速い。
そうしてラインマインが見えなくなってから、アン先輩が何故かにやりと笑う。
「今日はラインマインは機嫌いいのだ。何かあったのか?」
えっ。
「僕は気づかなかったな」
アルはそう言う。
「俺も」
同意しておく。
本当に気づかなかったので。
「朝からそう」
メルは気づいていたらしい。
「私も気づかなかったな」
ヘラは気づかなかった派だ。
「ラインマインは機嫌がいいと口数が少なくなる」
そうメルに言われるとそういう気もする。
「それだけじゃない、何か表情もちょっと違うぞ。それに何か思い出してはにやけているしの。ほれ原因、理由を言うが良い」
アン先輩はそう言って俺の方を見る。
つまり俺が原因か?
思い当たる事は昨日の風呂帰りのアレしか無い。
でもこの場でそれを言うのは色々と恥ずかしいぞ。
「メル、思考読解魔法は使えるかの?」
「普段はレベル壱」
おいちょっと待った。
そんな魔法があるのかよ。
「私は物相手の魔法は得意だが人相手は苦手なのだ。だからメル、やるのだ!」
アン先輩、だからと言ってメルをけしかけないでくれ。
「レベル壱だと表層思考が大まかにわかる程度だな」
アルの解説でちょっとほっとする。
なら昨日の詳細はばれないな。
「でもこんな道具もある」
メルはそう言って自分のカバンから小さな握り棒みたいな物を取り出す。
何か見覚えがある道具だ。
あ、思い出した。
これはまずいかも。
「前にここで見つけた魔法増幅具。現在絶賛製造販売中」
そう、これも結構出ているようでお金も入ってきている。
でも問題はそういう事じゃない。
まずいまずいまずい。
咄嗟に色々下らない事を考えてみる。
ホゲホゲホゲホゲ、ウンバボウンバボ、デデスコデン、エッサホイサ。
「無駄な努力」
メルの冷たい声。
そうでしたか、はい。
がっくり。
「でも言わないでおく。ホクトはよくやった。ラインマインの友人としてそう思う。それに免じて」
そう言ってメルは微笑んだ。
どうもセーフらしい。
まあメルには間違いなく読まれてしまったみたいだけれど。




