§28 新商品の試食会
「失礼します」
面識のあるアルを先頭に面会室へ。
中にいるのはラインマインとアン先輩。
それにがっしりした体型の中年の男。
これがラインマインのお父さんだろう。
壁際には大きい紙箱が二個くっついているでっかい背負子。
更にテーブル横に他と同じ大きさの紙箱一個が蓋を開いた状態で置かれている。
「おっと、アル君とメルさんは久しぶりだな。そして君がホクト君、後はヘラさんだね。手紙で色々聞いたよ。娘がいつも世話になっている」
そう言ってこっちに頭を下げる。
アム市で三本の指に入る家の主の筈だがそんな雰囲気は無い。
「こちらこそラインマインさんにはお世話になっています。この前は美味しいチーズやお肉をありがとうございました」
こういった挨拶はアルの役目だ。
「さて、挨拶終わり。まずはこの前ホクト君に教えて貰った新しい食材。やっと納得がいくものが出来た。まずこれを食べてみてくれ」
まず出てきたのはパン。
向こうなら高いパン屋にありそうな大きい楕円形の焼きのしっかりしたパンだ。
「まずはこれをカットしてそのまま」
一指位の厚さにスライスして皆に配ってくれる。
いい感じに気泡が入っているなと思いつついただく。
うん、これはなかなか美味しい。
ちょっと塩強めでもっちりした食感もあって。
更に多少の酸味と甘みも感じられる。
間違いなくこれはいいパンだ。
「美味しいです。向こうの世界でもこんなに美味しいのはあまりありません」
「だろだろ。酵母はレーズンの種類と砂糖の量を変えて二十種類。パンも五十種類くらい小麦粉の種類だの水分だの置いておく時間だの試した中の自信作だ」
嬉しそうな表情でラインマインの父親が言う。
そんなに試したのか、この人は。
ラインマインが苦笑いしている。
「あのドリンクを作った時なんてもっとよ。今回はお母さんに怒られなかった?」
「完成品を食べさせたら納得した。その代わりこの後カイドーにひとっ走りして、お得意さん二軒にこれを届けてこなきゃならない。
まあそんな話は後。ここからが本番だ」
今度はバターを塗ってハムとチーズを挟んだハムサンドだ。
これはもう間違いないだろう。
食べてみる。
「これは初めての味ですわ」
「クラッカーサンドよりしっとりして食べやすい。しかも柔らかくて美味しい」
「これは毎日食べてもいいぞ」
うん、これはパン単独で食べた時以上の味だ。
「前の世界でもここまで美味しいサンドイッチは食べたこと無いかもしれません」
「だろ、そんな訳で最後はデザートだ」
木製の弁当箱風の箱を取り出し、木のスプーンを置いて俺に差し出す。
「まずは考案者から食べて回してくれ。下にカラメルというものも敷いてある」
つまり弁当箱プリンという訳か。
黄色くて滑らかな表面にスプーンを入れ、下までしっかりとスプーンに取る。
ハードなタイプの本格的な蒸しプリンだな、これは。
取ると下にしっかりカラメルソースが入っていた。
口にしてみる。
うん、何かどれも今まで食べた以上に美味しい。
「予想以上の味です。美味しい」
隣のラインマインに回す。
「うん、これなら売れるね」
「この食感も初めてですわ。ひんやりして美味しいです」
ヘラの言葉で俺は気づいた。
そう言えばこのプリン、冷たいぞ。
「どうやって冷たくしたんですか」
「うちの貯蔵庫の氷を少し失敬して箱に詰めておいた。この天候なら四刻以上は持つ程度にな」




