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進学先は異世界でした ~俺の異世界学園生活記  作者: 於田縫紀
#3 ちょっと小物を思いついた

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§20 ヘラの本性あるいは家庭環境のなせる技

「しかし何でも揃っていますね、ここ」

 俺は改めて感心する。

 薬品や試料が揃っているのはわかるけれど木材とか布類まであるとは。


「国立上位学校をなめるでないのだ。国の予算でたっぷり材料揃えて活用してくれと言わんばかりなのだ。でもフル活用する生徒は滅多になくて残念なのだ」

 そんな事を言いつつ先輩は薄板をカットしたりくりぬいたり加工し始める。

 恐ろしい事にフリーハンドかつ工具無しだ。


「それも魔法ですか」

「私の得意魔法は修理を含めた物の加工全般なのだ。この程度の精度の代物、図面等必要ないのだ」

 不器用な身には凄く羨ましい魔法だ。

 見る間にブラシの歯部分が十本出来上がる。


「見事だな」

 アルすら先輩の手先に見惚れている感じだ。


 そんな感じで俺が思い描いた以上に立派なヘアブラシが出来てしまった。

 時間的には半刻(30分)もかかっていない。


「それで髪をとかしてみて下さい。地肌に歯が触れるくらいの強さで大丈夫です」


 先輩は半信半疑という感じで言われた通り髪をとかして、にやりとする。


「お、これはまた未体験なのだ。髪もちゃんととかせている感じがするのだ」

 何か夢中になって髪をとかしている先輩から、ヘラがすっとブラシを奪い取った。


「あっ、何をするのだ」

 そう言う先輩の横でヘラがブラシの感触を確かめている。


「なるほど、確かに櫛と違う、独特の感じがありますね」

 しれっとヘラはそう感想を言って今度はラインマインへ。

 そんな感じで俺も含めて全員で試してみた後。


「相談が御座います」

 ヘラがそう口を開いた。


「このヘアブラシという物、なかなか使い心地が良いようです。売り出せば間違いなく広まると思います。ですのでホクトやアン先輩さえ宜しければ、私の実家で商標を取って大規模に売り出そうと思います。

 勿論ここにいる皆様、特に考案したホクトさんと実際に制作したアン先輩には悪いようには致しません。具体的にお礼の費用がどれくらいになるかはわかりませんが、利益の三割以上はここに還元するよう父に申し送っておきます。

 その代わり生産して売り出すまでの間、しばらく使用を控えていただけますでしょうか。少々ご不便を感じるとは思われますけれども」


 まさかこれがお金になるとは思っていなかったので、ちょっと驚いた。

 

「アン先輩さえ構わなければ、俺はかまいません」

 取り敢えずそう答えておく。


「作ったものが広まるのに文句は無いのだ」

 先輩は迷い無くそう言いきった。


「ならこの試作品を実家の方へ送ります。どう扱うかの返事は五日以内に、実際に作って売り出すまで一月程はかかると思われます。ご了承の程お願い致します」


 そう言ってヘラがブラシを仕舞おうとするとアン先輩が取り上げる。


「もう少しこの感触を楽しませて欲しいのだ」

 先輩はクシクシとやっている。

 何かそれがいかにも小学生っぽくて思わず皆で苦笑。


「では実家に手紙を書きますのでペンと紙をお借りします」

 ヘラはそう言って手紙を書き始めた。


「あと先輩は、そのブラシを壊れないように送ることが出来る箱を作って下さい」

「仕方無いのだ」

 そう言って先輩は名残惜しげにブラシから手を離す。

 そのブラシを今度はメルが取って髪をクシクシ。

「確かにこれ癖になる」


 先輩はあっという間にその辺の木材でちょうどの大きさの箱を作る。

 そこに櫛が壊れないよう丸めた紙を入れて固定して包み、手紙を添えて封をした。


「それでは私はこれを荷馬車屋に持って行きます。今持って行けば明日の昼にはカイドーの実家に着くはずです。それでは失礼」

 ヘラはさささーっと箱を持って消えて行った。


「流石豪商の娘だな。反応が違う」

 アルが半ば呆れ気味にそう呟く。


「ヘラはいつもはおしとやかに振る舞おうと努力しているが、あっちが本性なのだ。小さい頃から店に出たり工場を見たり色々していたのだ。金が絡むと微妙に人格が変わるのだ」

 なるほどなあ。


「さて、どうなりますかね。電気の時ほど大事にはならないと思いますけれど」

「どうだろうね、私はこっちの方がわかりやすい反応があると思うよ」

 ラインマインはそう言って、それにメルがうんうんと頷いていた。

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