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進学先は異世界でした ~俺の異世界学園生活記  作者: 於田縫紀
#3 ちょっと小物を思いついた

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§19 俺の弱点その壱その弐

 翌日放課後。

 俺はラインマイン、ヘラ、アル、メルという面子と摂理実験室へ向かっていた。


「しかしホクトにも弱点があるんだね」

 ラインマインにそう茶化される。


「誰だって苦手な物はある」

 アルはそう言ってくれるけれど。


 俺の苦手な物。

 それは場所を覚える事だ。

 言い方を変えよう。

 俺はいわゆる方向音痴だ。


 何せ昨日行った摂理実験室。

 行きは飛ばされてわけのわからないまま到着した。

 帰りは皆について食堂へ行っただけ。

 しかも摂理実験室はまだ授業で使ったことが無いのだ。

 俺の方向感覚では場所がわからない。


 そんな訳でラインマインに道案内を頼んだ結果。

 他の三人も一緒についてきてしまった訳だ。


「ホクトについて行くと面白い物を見る事が出来そうだからな」

「しかしホクトが作りたい物ですか。今度はどんなとんでもない物なんでしょうね」

「今度は電気とかそんな複雑なものじゃない。家庭の小物くらいの感じかな」


 そう、ヘアブラシである。


「それに形は考えているけれど上手く作れるかは自信が無いんだ。手先の器用さは正直自信が無い」

 これも僕の弱点だ。

 知識はあるけれど実践が伴わない。

 電磁石を作る為くぎにエナメル線を巻き付けるのだって、綺麗に出来ない位だ。

 それくらい手先の不器用さの自覚がある。


「それならアン先輩は適任ですわ。手先も器用ですし腕力も使えますし、いざとなれば魔法で加工もできますから」

 流石技術研究会会長。

 見かけはお子様だがスペックは上等なようだ。


「しかし遠いな、摂理実験室」

「実験棟は武道場の先だしね。万が一に備えて他の建物から離しているから。造りも土蔵造りの防火建物だし」

 確かに物理化学実験室と考えたら、木造で燃えやすいのは恐ろしいな。


「この距離を僕とメルで探したんだぞ、どれだけ疲れたことか」

「アルは体力が無い」

「しょうが無いだろ、体質だ」

 そんな事を言いながら無事摂理実験室に到着。

 ノックするまでもなく戸は開いている。


「どうした、入会希望なら大歓迎なのだ」

 アン先輩、本名はアンブロシア先輩がちょこんと部屋の中央にいた。

 しかし何回見ても小学生だよな、この人は。


「ちょっと思いついた物があるので、制作をお願いに」

「そういうお願いなら大歓迎なのだ」

 紙とペンを持っていそいそという感じで机のところへ。

 俺の分の椅子まですっと用意しておいでおいで状態だ。


「どれ、大体の構想を教えて欲しいのだ」

 俺の方を無邪気っぽい目でみてそんな事を言う。

 この人、こういう事が本当に好きなんだな。


 そんな訳で俺はヘアブラシの説明をする。

 頭の中にあったのは向こうの世界で使っていたヘアブラシ。

 柄がプラスチックで、ブラシの元がゴム板についているタイプの物だ。

 ただゴムは無さそうだから、布に綿を入れて張りを出すことにする。


 そんな訳で五ミリ、ここの単位だと半指くらいずつ棒が出た感じの櫛十本を布で止め、内側を綿で張り木の柄に付けたようなイメージの絵を描く。

 我ながら下手くそな図だけれど仕方無い。

 わかればいいんだ、こんなもの。


「この棒の間隔は半指(5mm)でいいのか、もっと細かくも出来るのだ」

半指(5mm)で大丈夫です」

「あとこの棒の先も丸めでいいのだな」

「そうです」


 先輩はちょっと考えた後、頷いた。

「よし、微妙に納得はいかないがイメージはわかったのだ。任せておくのだ」

 そう言って立ち上がり、用具庫の扉を開ける。


「棒というか櫛の歯の部分は柳系の木材でいいと思うのだ。しなやかで曲がっても折れにくいのだ。布部分は木綿の厚布。柄は加工しやすい桐でやってみるのだ」

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