§175 別名・魚群探知機魔法
さて、俺は前に遺跡の穴で遺物探し魔法を使った事がある。
あれと同じ発想で魚群探知機魔法なんてのが出来ないだろうか。
旅行前にそんな事を思いついて試す機会を待っていた。
そして今がその機会だ。
『異物探知・海水以外!』
おお、これは面白い。
海中の地形や動いている魚らしいのがよくわかる。
ただ魔力の効きが悪いというのも理解した。
いつもなら小魔法一回分程度しか魔力を消費しない筈の魔法だが、ここでは二回分位消費する感じだ。
まあ魔眼の魔力を持ってすれば大した事は無いけれど。
さて、魚群探知が出来たから皆さんに用意をしてもらおうかな。
「俺とアン先輩で魚が確実にいる場所に移動させるから、すぐに釣りが出来るように準備してくれ。餌は砂浜で獲った二枚貝をサンダルで踏みつけて貝を割って、中の身を針が隠れるように刺す。こんな感じだ。あと餌籠にも貝の中身を入れて」
貝を割って中身を取り出し、水管から針を通して見せる。
なお今回は竿とリールが四セット、仕掛けは大量に作ってある。
つまり船長ともう一人以外の四人は釣りを楽しめる状態だ。
「アン先輩、ゆっくりと沖へ。五十腕前進して一度止まって」
「了解なのだ。何か海中がわかる魔法を開発したのか」
「異物探知魔法、海水以外探知という魔法。アン先輩も使えると思う」
「了解。でもまずはホクトの指示に従うのだ」
そんな訳で海中にちょっと高い岩がそびえている場所に移動。
凄く大きい魚はいないけれど、それでも三十指を越える魚が下で群れで泳いでいる場所に付ける。
「ここです。深さは四十腕。底にベタ付けすると岩で仕掛けがやられるので、落とした後少し上げて」
四つの仕掛けが落ちたのを確認。
それぞれの仕掛けがゆっくり落ちていく。
「はい、その深さで止めて!」
よし、だいたい魚の群れが通る高さに仕掛けが止まった。
あとは……ちょうどいいのが来たぞ。
一気に四人とも竿が強く引かれた。
「えっ、こんなに早く」
「思った以上に重いですわ」
何の群れかはわからないけれど、思い切り四人ともヒットした模様。
皆さん思い切り引っ張られている。
針にかかった魚が泳ぎまくっている感じだ。
魔法で状況を見ながらたも網を持って舟の中央へ。
最初に釣り上げたのはラインマインだった。
「でっかいサバだな、これは」
四十指以上はありそうなでっかい丸々したサバだ。
魔法で一気に氷温まで温度を下げて殺し、針を取ってクーラーボックスへ。
続いてヘラ、メルと同じくサバを上げる。
ただアルは結構苦戦している模様。
これはアルの体力のせいだけじゃない。
アルだけ違う魚が食いついている模様。
他は左右に走り回っていたけれど、これは潜っていく感じ。
かなり頑張って、やっと近くまで浮いてきた。
ぐるぐる回っているところを何とかたも網で上げる。
「何か一回り大きいな、これは」
七十指はある感じだ。
「ブリかヒラマサかカンパチかわからないけれど、その仲間だ」
「食べられるのか」
「文句無く美味しい筈だ」
そんな訳で。
「とりあえず昼ご飯には充分釣れたから、残念ながら一度帰るのだ」
という事になる。
「次回は私も釣る側に回るのだ」
「なら俺が代わりに操縦しますよ」
「まずは刺身なのだ」
「アン先輩も手伝って下さいよ」
なんていいながらさっきの砂浜へ。




