#23 最初の一日はどたばたと
今回の発掘ではあまり面白そうなものは無かった。
壊れたカメラ風、直径六十指前後の不明な輪っか、用途不明な金属製の小型機械二点というところだ。
「今回は不作なのだ」
そんな事を言いながら部屋に戻る。
「さて、黙っていた事は以上なのだ」
「しょうがないですわ。色々突き詰めると面倒な事にもなりそうですし」
「同意」
「それでどうするの?突き詰めてみるの?」
アルがまた渋い顔をしたのが見えた。
「そこまでしなくていいんじゃないかな。何か情報があったらという感じで」
そう言っておく。
「そうなのだ。実際これ以上調べるのは困難なのだ。情報が出てくるまでのんびり待つのだ」
アン先輩もそう言ってくれた。
本当はアン先輩はもっと積極的に調べたいのだろうと思う。
前に色々聞いた時の台詞からそう感じた。
今はアルの手前そう言ってくれているだけだろう。
でも今はその言葉に甘えておこう。
「そうですわね。取り敢えず今はそれで。さしあたっては浮上機械の更なる改良をしたいところですし」
「何故なのだ?」
俺もそう思ってヘラの方を見る。
「上位高等学校近くの遺跡を見に行った際は浮上機械を改良したものを使ったのでしょう。それがあと二台、最低であと一台あれば船で行けない場所でも自由に行く事が出来ますわ。足りない分はラインマインとホクトで自転車に乗れば」
「でも今の浮上機械は風に弱いのだ。風のない日に森の中を移動するのがやっとの性能なのだ」
「ならホクトの移動魔法の方が早い」
メルがそんな事を言う。
「いや、俺の移動魔法は今一つ使えないんだ。方向と距離をある程度厳密に知る必要があるし」
「私かアン先輩が指示する。生まれつきの魔法使いなら絶対方向感覚がある」
絶対方向感覚?
そんなものがあるのか。
羨ましいぞ。
「確かにそうなのだ。そうすれば移動魔法は使えるはずなのだ」
「本当?」
「何なら試してみるのだ」
アン先輩がにやりと笑う。
「ホクトはイメージしにくいだろうからそこからこの鉛筆の方向をイメージするのだ。距離百七十八離三百二十三腕。そこにここの全員を移動させるのだ」
「遠いけれど大丈夫なのか?」
アルが心配そうに尋ねる。
「今のホクトの魔力なら問題無い筈なのだ。知っている場所が見えると思うのだ」
確かにきっちり方向を定めると知っている場所が見えた。
良くわかるな、ここまでの正確な方向と距離なんて。
「そんな訳で皆の衆、集合なのだ」
アン先輩の元に全員で集合。
「さあホクト、行くのだ!」
はいはい。
『移動魔法!』
ふっと宙に浮いたような感じがした。




