この世界過酷過ぎ
俺には冒険者としての実力がない。それは何故か。答えは色々あるが、最大の要因は俺が異世界の住人だからだろう。
この世界には魔力がある。そして俺には、この世界の住人が、当たり前の様に持っている魔力を持っていない。これだけで俺が如何に無力かわかるだろ。
ちなみに俺の肉体的な強さは、この世界の平均的な子供5歳と同じらしい。全く、この世界は過酷すぎる。
以下の理由により、俺、斉木集はどこのパーティーにも入らず(入りたいが俺のレベルで入れるパーティーが無い)、1人で細々とクエストを受けているのである。
異世界に来て3ヶ月。クエストを終えた俺は、空腹を感じ、ギルドから数分の距離にある大きな食堂に足を運び入れた。
「相変わらず広いな」
この食堂は大きさが学校の体育館程あり、十数種類のお店が周りを囲み、建物の中央で食事をするというフードコートの様な作りだ。
そして俺は、安くて大量に食べられる定食屋でイノンシシ定食を頼み、そのまま1人用の席に座り黙々と食べ始める。すると、横から見知った顔が隣に座って来た。
「よう、シュウ。またそれ食べてるのか?よく飽きないな」
こいつはエレン。俺の冒険仲間で、この街では比較的名の通ったC級冒険者だ。
「うるせ〜よ、エレン。俺だって他のもの食いたいけど、財布事情ってもんがあるだろ」
「なんだお前、そんなに金欠なのか?なんなら数日でも、俺のパーティーに入るか?今剣士役が足りなくて困ってるんだよ」
「遠慮しておくよ。俺じゃあ、お前らのパーティーのクエストには、とてもじゃないが付いていけないから」
「そっか。でも、気が変わったらいつでも言ってくれていいからな」
「ああ、気が変わったらな」
そう言って俺は、イノンシシの定食を食べ終えて食堂を出た。
「わぁ〜、ねっむ。今日は疲れたしもう寝るか」
俺はそのまま直ぐにギルドに向かう。ギルドには月2万で二階の大部屋を使うことが出来き、今でも10人前後の冒険者がそこで生活をしている。
そして俺はギルドに着き、部屋に入る。すると受付に居たエリスと目が合う。
「あ、シュウ君。丁度良い所に。実はね、シュウ君に頼みたいことがあるの」
「頼み事?俺に出来る事ならするけど」
「あのね、明日私と一緒にクエストに出て貰いたいの?」
「クエスト?」
俺は首を傾げる。何だろう、確かエリスはここで受付をやる前は、S級の冒険者として活躍して居たと言っていたが、そんなに難易度が高いクエストでも出たのだろうか。
「うん。実は急遽、A級クエストが出現してね。それでね、ほら、ここのギルドの人の最高ランクはC級じゃない?だから、私が向かわなくちゃいけなくて」
「いやいや、ちょっと待って。A級クエストって、Eクラスの俺にそんな高難易度クエスト無理だよ」
しかも俺はE級の中でも最弱。いや下手したら人類最弱なんじゃないだろうか。そんな俺をA級クエストに連れて行こうとするなんて、本当にエリスは何を考えているのだろう。
「そこは任せて、戦闘は私1人でやるから。だからシュウ君は、クエストに必要な荷物を持ってくれるだけでいいから」
「いや、でも」
「シュウ君お願い!」
エリスはそう言って、両手を合わせて上目遣いで頼んで来た。
うぅ〜、エリス。それは反則だ。
「分かったよ。でも本当に俺、役に立たないからね」
「ありがとう。それじゃあ、明日の朝ここに集合でね」
「ああ」
そして俺は、階段を登り、2階の大部屋に倒れこんだ。