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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

桃太郎のお婆さんとかぐや姫のお爺さんが夫婦らしいです。

作者: ルッツ・マルクス

前回の小説で次は連載小説を書くと言ったな。

あれは嘘だ。

昔々、あるところにお婆さんとお爺さんが仲睦まじく暮らしていた。


「婆さんや。わしゃよろずのことに使う竹を切ってくるからの。」

「あら、では私は川へ洗濯に行ってきますね。」


と、言い2人は山と川へ出かけて行く。


◆◆◆


「よろずのことって言っても籠か孫の手ぐらいしか作らんからのぉ。街に売れば高く売れるかもしれんの。」


お爺さんはそんなことを言いながら、昨晩しっかりと研いだ鉈でせっせせっせと竹を切っている。

今日は珍しく、少し奥の方の竹を切りに来ていた。


竹を何本か切り終わり、休憩にしようと考えたお爺さんは近くの切り株に腰を下ろす。

そして、腰につけたおばあさん特製のきびだんごを取り出し口に運ぶ。

5つあったきびだんごをすべて平らげ、再び仕事に戻ろうとした。


その時、お爺さんは目を疑った。

そこには、腹が金色に光る竹がまるで自らの存在を主張するように、堂々と生えているではないか。


お爺さんは、初めて見る光景にたまげてしまった。

しかし、恐怖より好奇心が勝り、手にしていた鉈で金色に光る竹を一刀両断した。


あろうことか、中からは親指ほどの女の子が出て来たではないか。

心なしか、脂汗をかいているように見えるが気のせいだろう。


「こりゃぁ、たまげた!竹から小さな女子が出てきよった!ふむ…可愛いしウチの子にしよう。婆さんも良いと言ってくれるだろう。」


と、ウキウキしながら親指ほどの女の子を手に乗せて家へと帰るのであった。


◆◆◆


「まぁ、こんな頑固な油汚れどこでつけてきたのかしら。流水だけでおちるかしらねぇ?」


と、主婦独特の独り言をブツブツと喋りながら、洗濯板と川の流水で洗濯物を洗っていた。


洗濯は、1,2を争うほどの辛い家事である。

さらに、今は冬なので川の水の温度は氷点下に達していた。

そのため、早く終わせようといつもの倍の速さで洗う。


そして、すべての洗濯物を洗い終え、ホッと一息ついて何気なく上流の方を見ると、あろうことか普通の桃の数倍はありそうな桃が、どんぶらこどんぶらこと流れて来たではないか!


「こりゃぁ、たまげた!上流から大きな桃が流れて来たわ!ふむ…大きいし今日のデザートにしましょう。爺さんも良いと言ってくれるでしょうし。」


と、ウキウキしながら、普通の桃の数倍はありそうな桃を担いで家に帰るのであった。


◆◆◆


2人は偶然にも家の前で鉢合わせる。

今日あった出来事を同時に話そうとしてしまい、声がハモってしまう。

そこで、お爺さんはお婆さんに先を譲る。


「今日は大きな桃が川に流れていたので、これを食後のデザートにしようと思うのですがよろしいですか?お爺さん。」

「おお!それはええのぉ。桃は体にもええと聞くし、早く食べたいのぉ。」

「お爺さんは何があったのですか?」

「それがの!驚かずに聞いてくれよ。なんと、わしらに子供ができたんじゃ!」

「え?一昨日生理来ましたけど?」

「そっちじゃなくての!ほれ、この可愛らしい女子がわしらの娘じゃ!」

「まぁ!可愛らしい!それはいいですね!大人になったら美しくなりそうですね。」


と、順応能力が高いカオスな2人であった。


◆◆◆


家に入り、お爺さんはその女の子を「かぐや」と命名し、竹で作ったゆりかごに入れてあやしていた。


一方、お婆さんは台所で、大きな桃を切ろうとしていた。しかし、そんな大きな桃を切れそうな包丁が無かったのでお爺さんの鉈を借りる。


雑菌がつかないように熱消毒してから、切りにかかった。

鉈を振り上げると、勢いよく振り下ろす。

そして、桃が割れた。


と、思った瞬間、中から元気な男の子が出て来たではないか!


さすがのお婆さんも驚き、尻餅をついた。

男の子は凛々しい顔をしていたが、心なしか脂汗をかいているように見えた。多分気のせいだろう。


すぐさまおじいさんを呼び、出て来た赤子を見せつける。


「お爺さん、この子も中々のイケメンだと思います。なので私たちの子にしてしまいましょう?」

「それはいい意見じゃの!賛成じゃ!子なしであったわしらが急に2児の親じゃ。賑やかになりそうじゃの。」


話が終わり、その赤子の名を「桃太郎」とした。


この2人の順応能力は適正値をはるかに上回っていた。


◆◆◆


その騒動から15年が経った。


かぐやはありえないほどのスピードで成長し、竹でできたゆりかごを破壊してしまったが、今では絶世の美女となり近隣の有力者達から求婚を受けていた。


しかし、かぐやはその求婚者達に無理難題、否、不可能な条件をつけてやんわりと断っていた。


一方の、桃太郎は普通に成長して、長身イケメン細マッチョになっていた。


周りの村娘達からは、交際や結婚の申し込みを迫られたが全て「父と母の面倒を見なくてはならぬ故。」と断っていた。


…何を隠そう、この兄弟、実は恋仲に発展していたのである。


絶世の美女と長身イケメン細マッチョという、誰も手がつけられないカップルとなっていた。


2人の仲をお爺さんとお婆さんは認めており、逆に「子が遠くへ行かなくてよかった」とまでぬかしていた。


◆◆◆


そんなある日、縁側で桃太郎とかぐやが寄り添っていた。

しかし、いつもであればかぐやが桃太郎に甘えるところなのだが、甘えるどころか涙さえ流していた。


「どうかしたのか?かぐや。どこか痛むのか?」

「うん、心が痛いの。」

「心の病…と言うものか?それなら私が治してやろう。」

「ううん。治せないよ。だって私…今日、月に帰らなきゃいけないから。」

「…どう言うことだ?」


かぐやは、とても意味深な発言をする。

その言葉にさすがの桃太郎も動揺を隠し切れていなかった。

そして、涙の止まらないかぐやは重い口を開く。


「私ね…実は月から来た天女なの。天でヘマしちゃって上司がこの下界に私を堕としたの。少し頭を冷やしたら戻って来てもいいぞって言われて、その時は何が何でも戻ってやるって思ってたんだけど…、今は戻りたくないよ…。桃太郎と一緒にいたいよ…。」

「ならば…ずっと一緒にいればよいではないか。帰らずとも私とともに生きよう!」


と言ったその時、月に雲がかかった。先ほどは雲などない綺麗な星空だったはずである。

その雲はよく見ると、少しずつ降りて来ていた。

桃太郎は驚いて、立ち上がった。かぐやも立ち上がり、桃太郎の背に隠れる。


雲は家の田んぼの上で止まる。

雲の上には、たくさんの人が乗って降り、そのうちの武装した数人が降り、かぐやの前に跪く。


「かぐや姫様。お迎えにあがりました。どうぞお乗りください。」

「い、いやです!帰ってください!」


かぐやは無理と分かっていながら、抵抗する。


「かぐや様。早くこちらにおいでください。」

「嫌と言っているではありませんか!」

「かぐや様…はぁ。お前ら連れていけ。」

「「「はっ!」」」


隊長格のような男の命令により、後ろに控えていた数人の男がかぐやを桃太郎の背中から無理矢理に引き剥がす。


「やめて!お願い!!私は桃太郎と生きたいの!帰りたくない!」

「抵抗しないでください。その綺麗なお顔に傷がついてしまいますよ?」


と、男の1人が刀をちらつかせる。


「…桃太郎…ごめんね。…もう…ダメみたい…。……バイバイ…。」


その瞬間、男の1人の首が飛ぶ。


「な、何が起こった!」

「敵か!?」

「おい!さっきの男はどこいった!?」


と、残りの男たちが狼狽える。

すると、男たちの後ろから殺気を帯びた声が聞こえてきた。


「…私はよく父に「お前には鬼を斬る力がある。」と言われていた。その時は意味がわからなかったが、やっとわかった。私には鬼…つまり貴様らのような下賎な奴を斬る力があるのだ。」

「ははははは!なにが鬼を斬る力だ!笑わせるのも大概にしろ!それに1人で何ができるの言うのだ!?」

「一体いつから…私が1人だと錯覚していた?来いっ!!犬!猿!雉!」


桃太郎がそう叫ぶと、土佐犬とゴリラとハゲワシがどこからともなくやってきた。


「桃太郎殿。きびだんごの御礼はきちんとさせてもらいます。」

「桃太郎よぉ。おめぇから受けた恩、ここで返すぜ。」

「桃太郎…俺ハゲワシだから。雉じゃないから。いつも間違えるよね。」


と、三者三様の挨拶を交わす。


彼らは、行き倒れかけていた所を桃太郎に助けられた者たちである。

もちろん、お婆さんの手作りきびだんごがそこで大活躍した。


「さぁ、お前たち。鬼退治の始まりだ。」


◆◆◆


土佐犬の強力な顎と、ゴリラの強固な肉体、ハゲワシの速さ、そして桃太郎の卓越した剣術を前にして、迎えにきた者達はことごとく地に伏していった。


そして、30分足らずでほぼ全員が戦闘不能になった。


「き、貴様!天界を敵に回してタダで済むと思うなよ!いつか、天界全軍を以って貴様らを駆逐してやる!その時までせいぜい怯えてな!」

「…そんなもの、少しも怖くはない。一番怖いのは、かぐやと離れてしまうことだ。私はかぐやとともにあれるのなら、天界を敵に回すくらい屁でもないわ!」


迎えの者達の吐き捨てた言葉にそう返すと、彼らは逃げる様に月へと帰って行った。

桃太郎が一息つくと、かぐやが抱きついてくる。


「…どうして。どうして、天界を敵に回しちゃったの?あいつらを敵に回せば桃太郎は無事じゃ済まないのに…」

「先も言ったが、私はただかぐやとともにありたいだけだ。それを邪魔するものはたとえ天界であろうとも排除する。理由はそれだけだ。」

「そっか…。なら、私も桃太郎と一緒に戦うよ!私も桃太郎が好きだもん!」

「そうか…。そうだな!2人で戦おう。」


そう言うと、桃太郎もかぐやを抱きしめる。

が、いい雰囲気になった所で蚊帳の外から声がかかる。


「ごほん!桃太郎よぉ。ひでえこと言うぜ。」

「いかにも。2人で…とはどう言う事ですか?」

「俺たちを忘れてるんじゃねぇのか?」


と、3匹は少し不満げに言う。


「お前たちも、共に戦ってくれると言うのか?」

「あったぼうよ!」

「桃太郎殿は我らの恩人なのだからな。」

「まぁ、ハゲワシってのを覚えて欲しいがな!」

「そうか…では、お前達!これから宜しく頼む!」

「「「おう!」」」


この後、天界は攻めてくることもなく、彼らは平和に過ごしましたとさ。めでたしめでたし。




ちなみに、お迎えに来た者達は天界の最強戦力であったらしい。その最高戦力で敵わなかった桃太郎達に報復をするのは愚策だと言う考えが出された。

それが、天界が桃太郎達を攻めなかった理由である。

こんな騒動の中お爺さん達は何をしていたかって?

寝ていたんですよ。それはもうぐっすりと。

どれだけかぐや姫が叫ぼうが、桃太郎が戦おうが、その深い睡眠を妨げることはできなかった様です。

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