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スモール・マウンテン  作者: 大原英一
第五話 ボール・マジック
38/40

前編(図解あり)

 今日も今日とて喫茶「スモール・マウンテン」でコーヒーを飲んでいると、おなじカウンター席でとなりにいる源次が急に言った。

「もしドラ○もんがいたら、何の道具、出してほしいっすか」


「もしドラ○もんがいたら……通称『もしドラ』か?」

「それドラッカー。茶化さないで、はやく」

 オレは、しょうがないなあ、みたいな素振りをしつつも内心嫌いな話題ではなかった。大の藤子ファンだからだ。

「【どこへでも行けるドア】……かな」

「石原さん、またあ。エロいっすねー」

「中学生か! おまえの脳内はエロ1択か」

「えっ、違うの?」

「違うよ。神聖な道具をそんなことに使うか」

「……じゃあ、どう使うんですか」


「全否定だ」

「えっ、」

 怪訝そうな顔の源次に、オレはほくそ笑んで言った。

「なあ源次、【どこへでも行けるドア】は空間を超える道具だよな」

「まあ、そうですね。……それって、めんどくさい話ですか?」

 オレは答えずに話をつづけた。

「東京と北京の時差は約1時間で、東京のほうが進んでいる。さ、これから【どこへでも行けるドア】を使って、東京から北京へひとっ飛びだ」


「やっぱり、めんどくさい話だ……」

「もうわかったろう? 空間を超える道具で、いや、空間しか超えられないはずの道具で時間まで超えちゃったよ。過去へタイムスリップだ、たったの1時間だけど。……ってな具合に、偉大なるF先生のアイデアにケチをつけることが、いまのオレの夢かな」

「しょぼい夢っすねー」

 言って源次はため息を吐いた。


「しょぼいってこと、ないだろう。……で、おまえは何の道具、出してほしいんだ?」

 オレは親切心全開で聞いてあげた。話を振ってきたからには、やつはこれが望みだったのだろう。

「オレは断然アレっすよ」

 わかりやすい、源次はうれしそうな顔をした。

「真ん丸の、【カプセルホテルみたいなやつ】」


「あー、はいはい。あの下の柱が伸びるやつだろ? チュッパ○ャップスみたいな外観の」

「そうそう。ぜひアレに泊まってみたい」

「おまえ、意外とセンスいいな。オレもアレはあこがれる」

「でしょ? あの、ひとり1部屋ってゆうか、1棟ってゆうか……な感じがいいんすよ」

「わかるわかる」

 でもさ、とオレは言った。

「球状の客室部分はいいとして、その下の柱が邪魔じゃない? いや、高さを確保するために必要なのはわかるんだけど、柱と柱の間がぜんぶデッドスペースになるっしょ」

 オレはカウンターに置いてある紙ナプキンを1枚取って、そこにペンで図を描いた(下図参照)。


挿絵(By みてみん)


「……クルマでも停めておけば、いいんじゃないですか」

「雨ざらしで? ってゆうか、【ヘリコプター式竹とんぼ】があるから、クルマ要らんやろ」

「あのう、石原さん」

「ん?」

「もうこの話、ヤメませんか」

 オレは目が点になった。この話をはじめたの誰ですか、源次くん……。

 と、かるくキレそうになったところで、テーブル席の片づけを終えたマスターがカウンターにもどってきた。


「なに、面白そうな話?」

「聞いてよマスター。石原さんが少年の夢、壊すんすよ」

「壊してない。そして、おまえは少年じゃない」

 源次がドラ○もんのひみつ道具について、ざっとマスターに説明した。したらば、彼の目が急にらんらんと輝きはじめた。

「石原くん、源ちゃん、明日またくるよね? きみたちヒマだもんね」

「いやあ、明日はちょっと……」

 察しのいい源次があからさまな演技をした。そう、本当にめんどくさい話をするのはほかでもない、このマスターだと彼はしっているのだ。


「マスター、また、なにか浮かんだの?」

 オレはニヤリとして聞いた。

「まあね。正解者には新作のミートパイを只で提供するから、きみたち頑張って」


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