【解決編】中々編
可奈さんのストーリー、その3。
山元が探偵事務所を訪ねてきたその日の夜、じつは可奈さんはあるアクションを起こしていたらしい。
ニューヨークにいる叔父にメールを送ったのだ。内容はずばり、2年まえまで事務所の職員だった(と思われる)山元という男性、もしくは若林という女性をしっていますか、と。
「姪のアタシが言うのもアレですが、叔父は変人で気まぐれで、それでいてけっこう多忙なんです」
そう言って彼女は笑った。
「はやい返事なんて期待できません。返事をくれるかさえ、あやしい」
「ところが昨日、叔父から返事のメールが届きました。問い合わせてから1週間以内という迅速さで、びっくり。
返事の内容はいたってシンプルでした。そんなやつらは、しらんと」
「ええええええーーーっっっ!!!」
もうアカン、オレは叫んでいた。
「どういうことですか、それ……」
「どういうことでしょうね」
ふふ、と可奈さんは笑った。茫然自失のオレとは対照的に、余裕すらうかがえる。
「とりあえず、考えられるのはふたつ。ひとつ、山元さんが大ウソつきだということ。もうひとつ、山元さんが思い違いをしているということ。彼の言う記憶障害が本当なら、そういうこともあり得るんじゃないかと」
「つまり大ウソつきか、本当の記憶障害か、どちらかですね」
オレは若干、怒気をにじませて言った。
「ええ、」と彼女は表情を曇らせた。「それで残念なんですが、大ウソつきの線のほうが濃厚です。しかもタチがわるい」
「ホントそうですよっ」
オレは口から泡を飛ばして言った。やばいやばい、怒りの気持ちをセーヴしなきゃ。
「でも、なんで山元はそんな、調べればすぐバレるようなウソをついたんだろう」
マスターが質問した。着席してから初の発言だった。
「よくわかりません」
可奈さんは首を振った。
「ですが、ちょっとここから、気持ちのわるい話になってくるんです」
「それって石原くんが見たという、夢のこと?」
彼女はうなずき、オレを見た。
「それじゃあ石原さんにバトンタッチしますね」
いきなり振られて戸惑ったが、オレの話は簡単だった。いわゆる与太話だからだ。
夢を見た。夢のなかでオレはヤマゲンだった。ほかに多々木のおっさん、女性の若林さんというキャストが登場した。
ある日、(夢じゃなくリアルに)ポストを開けると、偶然多々木探偵事務所の広告チラシを見つけた。それで可奈さんと知り合い、その後ヤマゲンとも知り合った。
「すごいね石原くん、きみ、夢のなかの人物と本当に会っちゃったんだ」
「マスター、ここ重要です」可奈さんが口を挿んだ。「山元という男性は実在するんです。アタシも会いましたし、石原さんも」
そして彼女はオレに、つづきを促した。
オレはふたりに話した。ヤマゲンと吉祥寺で飲んだこと。彼とあやふやな別れかたをしたこと。そして、彼と連絡が取れなくなったことを。
ヤマゲンの携帯番号だと思っていたものが、じつは可奈さんの番号で、じゃあオレはどうやって彼と会う約束をしたんだって話になる。
「信じられますか、こんなこと」
「もちろん」
「えっ」




