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スモール・マウンテン  作者: 大原英一
第三話 レイニーレイニー……レイニーブルー
32/40

【解決編】中編

 マスターが3人分のコーヒーをテーブル席に運んできた。そのうちの1杯は店主自身が飲む。今日はそんな特別な日だ。

「お待たせしました」

「ありがとうございます」

 可奈さんはマスターが席に着くのを見計らって、話を切り出した。

「今晩はお時間をとっていただき、ありがとうございます。またお店を借りてしまって申し訳ありません」

「お気になさらずに。さ、冷めないうちにどうぞ」

「いただきます」

 会釈して彼女はコーヒーカップに口をつけた。

「あ、おいしい」


 可奈さんはゆっくりとカップを置いた。

「石原さん、マスターはどこまで事情をご存じでしょうか?」

「えっと……オレが妙な夢を見たということ、それだけだと思います」

 ふと思いついてオレは彼女に聞いた。

「ってゆうか、夢の話、可奈さんにもまだ伝えていませんでしたよね」

「夢ね……なるほど」

 彼女はうんうん、とうなずいた。

「とりあえず、アタシがわから事情を説明します。アタシ側と石原さん側のふたつのストーリー、それがマスターのなかでつながってくれたら、うまく説明できたことになるはずです」

「おまかせします」

 オレが言うと、マスターもうなずいた。


 可奈さんのストーリー、その1。

 ある日、山元やまもとという男が事務所にやってきて、おかしなことを言い出した。自分はここの職員だが、雇い主である多々木さんや同僚の若林さんのすがたが見えない、と。

 可奈さんは山元に説明した。ここの事務所は2年まえに代替わりしていて、当時の職員は誰も残っていない、と。

 山元はどうやら、この2年間の記憶を丸々うしなっているらしかった。可奈さんは山元が立ち去る際、彼の携帯番号を聞き出した。

 もし2年まえまでの職員のことでなにか情報が入ったら、かならずお伝えすると約束して。


 そこまで聞いて、オレは居ても立ってもいられなくなった。山元すなわちヤマゲンの携帯番号……それがめっちゃ気になる。

 だが、話の腰を折るまいとオレは我慢した。


 可奈さんのストーリー、その2。

 またある日、石原という男から電話があった。彼もまた2年まえの事務所および職員について質問してきた。

 可奈さんは山元に話したように、事務所は2年まえに代替わりしている旨を石原にも伝えた。

 電話で石原は、先代の所長のほかにヤマゲン、若林という名前を口にしていた。先日訪ねてきた山元も、たしか若林という名を口に……。

 そこで可奈さんは、ふと気づいたそうだ。石原の言うヤマゲンとは山元かれのことじゃないか、と。

 山元のときと同様に、なにかわかったら連絡すると石原に伝え、可奈さんは電話を切った。

 そして彼女は即、山元に連絡を取った。石原という男がヤマゲンや若林を捜しているが、ヤマゲンとは山元あなたのことじゃないか、と。

 可奈さんは山元に、石原の携帯番号を教えた。


 オレはハラハラしながら彼女の話を聞いていたが、とりあえず、ここまでは居酒屋でヤマゲンから聞いた内容とおなじだった。

 だから、このあと可奈さんから伝えられた事実に、死ぬほど驚いた。

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