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スモール・マウンテン  作者: 大原英一
第三話 レイニーレイニー……レイニーブルー
30/40

裏7

【多々木探偵事務所 090-XXXX-XXXX】


 この広告チラシを目にするのはこれで2度目だ。たった2日のあいだに、またおなじチラシが投函されていた。

 どんだけ営業熱心なんだよ!

 ……ふと違和感をおぼえた。あれ、ここの番号ってたしか「050」からはじまってなかったっけ?

 つぎの瞬間、背筋がぞわりとした。この番号……「090」からのそれに見おぼえがあった。

 とりあえず大量のチラシを廃棄ボックスに突っ込み、探偵事務所のそれだけを持って、アパートの自室へと駆け込んだ。


「マジかよ……」

 部屋に入るなりスマホを取り出して通話履歴をしらべた。そこに表示された番号と広告チラシの番号を照合し、思わず、くずおれた。

 どちらもヤマゲンの携帯番号だったのだ。


 通話履歴にその番号があるのはヘンじゃない。オレが直近に通話したのはヤマゲンなんだから。

 だが、おなじ番号が探偵事務所の広告チラシに載っているのは、めちゃめちゃヘンだ。彼はもうそこの職員じゃない。

 ふと思い出して、通話履歴を見直した。オレが2日まえにかけた「050」からの番号をさがそうと。

 見つからなかった、最悪だ。

 しらないうちに履歴から削除してしまったのか。いや、それはないでしょう……。目眩がしてきた。


 考えるまでもなく異常事態だった。ただの思いちがいなら、まだ救いがある。だが、これはあきらかに記憶ちがいだ。

 この2日のうちに、オレはふたりの人間と通話している。少なくともそう記憶している。だが番号はひとつしかない。

 えらいこっちゃ、で。


 意をけっしてリダイヤルした。これで、はっきりする。存在しないのはヤマゲンか、それとも探偵か。

 数回のコールで電話がつながった。心臓がバクバクしていた。

「もしもし」

 電話の声は女性だった。時刻は22時半を指していた。

「夜分にすみません。石原ですが」

「どうかされました」

「あの、多々木可奈さんですよね?」

「……やっぱり」


 その「やっぱり」は、意味はわかんなかったけど、オレにとってとても心強く響いた。思わず泣きそうになった。

「あの可奈さん……オレ、えらいことになっ」

「石原さん」

 彼女はオレに、皆まで言わせなかった。



 数日後、オレは探偵の多々木可奈さんと会うことになった。場所はオレの行きつけの喫茶店「スモール・マウンテン」である。

 オレと会う際、信頼できる第三者に立ち会ってほしい、との彼女の要望だった。それで申し訳ないけど、マスターに頼み込んで閉店後にちょっとだけ、店をつかわせてもらえることになった。

 マスターにとっちゃいい迷惑だが、オレのあまりの必死さに、ついに首をたてにふってくれた。

 彼も、オレが夢の話をしたあたりから、なんかおかしいと気づいていたらしい。さすがマスター。

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