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スモール・マウンテン  作者: 大原英一
第三話 レイニーレイニー……レイニーブルー
27/40

裏4

 2日後、オレは憧れのヤマゲンと会うことになった。憧れ、なんて自分でもちょっとヘンだと思う。

 だがほかに上手い表現が見つからない。めっちゃドキドキするし、ちょっとあやしいとも思う。これが憧れじゃなくて、なんだというんだ。

 19時に吉祥寺で待ち合わせした。吉祥寺なら最寄駅から井の頭線で1本だし都合がよかった。

 オレとヤマゲンを引き合わせた多々木探偵事務所も吉祥寺にあるらしかった。まあ広告チラシの配布エリアにうちのアパートが含まれていたのも妥当だ。


 吉祥寺の改札を出てエスカレータをおりると、正面がJR線への連絡口で、左手が南口の出口になっている。南口を出るとすぐにマックが見える。そこで待ち合わせした。

 オレのスマホに着信があった。画面を見ると約束の5分まえだった。

「もしもし石原です」

「あ、山元です。いまマックに着きました」

「オレもです」

 ふと、4メートルくらい先にケータイで通話している男性のうしろ姿が見えた。

「ちょっと振り返ってもらって、いいですか」オレは言った。

「あ、どうも」

 それがヤマゲンとの初対面だった。


 けっきょくマックには入らず、ヤマゲンのエスコートで焼き鳥メインの居酒屋に腰を落ち着けた。

 平日だったのと時間が早かったこともあり、店内はいていた。なにより個別のブース席だったので、ゆっくり話すことができそうだった。なんか、ちょっとデートみたいだった。

 とりあえずビールで乾杯したあと、たがいに自己紹介をした。


「石原鉄也、35歳です」

「山元聡です。歳は33プラス2歳です」

 オレはにやっとした。

「そこは、笑うところですか?」

 すると彼は苦笑しながら首をふった。

「そうでも、ないんです。……石原さん、いきなりですけど気持ちのわるい話しても、いいですか」

「大丈夫ですよ、愛の告白以外なら」

 ヤマゲンは無言で微笑んだ。いや、そこは声に出して笑うところでしょう……。

「じつはオレ、いわゆる記憶障害があるみたいなんです」


 思わず絶句した。だが、目のまえの相手が信用できると、まだ決まったわけじゃない。とりあえず話を聞いてからだ。

「聞かせてください」

 オレはうながした。


 ヤマゲンが記憶の一部をうしなったのは、ごく最近のことだそうだ。

 その日彼は、いつものように出社した。彼は多々木探偵事務所の職員だった。

 ところが事務所は様変わりしていた。彼の雇い主である多々木所長も、同僚の若林芽衣子のすがたも見当たらなかった。

 かわりに、あたらしい所長がそこを仕切っていた。女性の所長で、元いた所長の姪御さんらしかった。

 姪御さんの名前は可奈さんといった。彼女の説明では、2年まえにはすでに事務所は代替わりしていたらしい。

 そこでヤマゲンが丸々2年分の記憶をなくしている事実が判明した。

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