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スモール・マウンテン  作者: 大原英一
第三話 レイニーレイニー……レイニーブルー
25/40

3

【ルールを理解している人】【計画性のある人】【勘のいい人】【運のいい人】


「そうか、そういうことか」

 言いながら多々木さんはきゅっきゅっ、と名刺の裏にマジックペンでなにかを書きはじめた。

「このなかで最強のカードはどれだと思う?」

 彼はお手製の4枚のカードを開示した。それが上記の【○○の人】である。

「そりゃ【運のいい人】でしょ」

 オレは即答した。

「ほう、どうして」

「どうして、って……ふつう、そうじゃないですか」


「そうかね」と多々木さん。「じゃあ、今度は芽衣子くんに聞いてみよう」

 そして彼はおなじように4枚のカードを若林さんに見せ、おなじ質問をした。

「うーん……【ルールを理解している人】ですかねえ」

「えーっ、マジっすか!」

 オレはかなり大げさに驚いてみせた。彼女がわざと外しているような気がしたからだ。


「どう考えても【運のいい人】でしょう。宝くじだって、きっと当てちゃいますよ?」

 すると多々木さんがニヤリとして言った。

「病気や事故に遭ったけど九死に一生を得た、なんてのも【運のいい人】かもね」

「なんでマイナス発進なんですか」オレは反発した。

「そういうのって、」若林さんが言った。「あまり現実的じゃないと思います。トランプのジョーカーとおなじで、たしかに、うまく機能すれば最強かもしれないけど、そもそもジョーカーの使用をみとめないルールもあるわけで。そう考えると、やっぱルールありきじゃないですか」


 オレは口をパクパクさせた。たまに、この若林さんという女性が恐ろしくなる。なんて冷静で理性的な判断をするのだろう。いつもは天然なのに……。

「いやいやいや、」

 だが今日のオレはゆずらなかった。


「ルールありきなのは、わかりますよ? そのうえで【運のいい人】が最強だって言っているんです」

「旅先で賊に身ぐるみ剥がされ、でも命だけは助かった人っていうのも、【運のいい人】かもね」

「だから、なんでマイナス発進やねん」思わず関西弁が出た。

 見ると、いままで多々木さんが座っていた位置にマスターがいた。

「ボクはこの【計画性のある人】っての、好きだなあ」

 いやマスター、好きとかじゃないから。どれが最強かを論じているのであって……。

「オレは、やっぱ【勘のいい人】っすね。カッコイイもん」

 いや源次、おまえには聞いてない。あと理由が小学生か。


「石原さん、【運のいい人】なんて存在しないのよ。幸も不幸もある一定の確率でしか起こらない。それもごくわずかな確率。ジョーカーをひく確率とおなじくらいかな、でも、ジョーカーの使用をみとめないルールもまたあって……」

「あの若林さん、オレ、ヤマゲンさんじゃないの?」

「石原さん」





 そこで目が覚めた。また寝汗びっしょりだった。

 まあ今日のは強烈でしたわ。夢のなかに現実のメンバーまで入り乱れて、もうすごいことになってましたわ。

 夢が侵食されはじめている、と直感的に思った。だがこれは侵食じゃなくて終焉だった。

 これ以後、もう彼らの夢を見ることはなくなった。

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