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スモール・マウンテン  作者: 大原英一
第三話 レイニーレイニー……レイニーブルー
24/40

裏2

 めちゃめちゃビックリした。喫茶「スモール・マウンテン」での朝のおしゃべりを終え、今夜の夜勤に備えるため帰宅したときのことだ。

 ふと気がむいてアパートの郵便受けを開けた。自慢じゃないが、独り暮らしのオレは毎日郵便受けを開ける習慣はない。

 たぶん月に1、2回といったところだろう。各種支払いの請求書が郵送されてくるので、最低でも1回は開けるのだ。たまたま今日がその日だった。

 必要な書類を取り出すために、まず、山のような広告チラシを排除する必要がある。宅配ピザ、寿司、たこやき、ハンバーガーとつぎつぎにチラシを捨てていく。

 郵便受けはアパートの1階に住人の数だけまとめてあって、その真下にチラシ廃棄ボックスが用意されている。これに片っ端から突っ込んでいくのだ。


 捨てようとした1枚のチラシに偶然目が留まった。それで冒頭へもどるが、めちゃめちゃビックリしたというわけだ。

【多々木探偵事務所 050-XXXX-XXXX】

 探偵事務所の広告など、ふだんなら見向きもしない。だが、オレは「多々木」という3文字に思わず目をうばわれた。


 いったいこれは、なんという偶然か。それともただの間違いか……いずれにしても、ためしてみる価値は充分あった。

 電話をかけるまえに夢の内容をもう1回反芻した。が、自分でもおどろくほど細部については忘れていた。

 いや細部じゃない。主要人物メインである多々木という男性と若林という女性の顔が、まず思い出せない。ヤマゲンはもともと一人称カメラ視点なので、顔はわからない。

 まあいい。逆におぼえていることだけメモに書き出していく。

 多々木、若林、そしてヤマゲン。彼らは会社みたいなところにいて……いやちがう、事務所だ!


 思わず部屋で独りで叫びそうになった。そう、夢のなかでヤマゲンは会社ではなく「事務所」という言いかたをしている。

 彼ら3人が話していた内容もアリバイがどうしたとか、それっぽい内容だった。まあ雑談の域を超えないかもしらんが。それでも、彼らがまともな仕事の話をしていないことだけはたしかだ。

 ……なんかオレ、探偵という仕事にそうとう偏見があるらしい。気をつけよっと。


 ひとつ深呼吸してスマホを取り出した。通話モードにしてチラシの番号を画面にタッチしていく。見たかんじ、オフィス用のIP電話の番号のようだ。

 数回コールしたあと、電話がつながった。

「お電話ありがとうございます。多々木探偵事務所です」

 女性の声だった。すわ、もしかして彼女が若林さん? ……だが焦りは禁物だ。オレはまず大物から指名した。

「もしもし……あの、石原と申しますが。そちらに多々木さんという男性は、いらっしゃいますでしょうか」

 すぐに応答はなかった。たっぷり4秒は間があったと思う。

「……えっと、叔父のお知り合いのかたでしょうか」


 電話の女性はそう聞いた。

「あ、はい」

 オレは正直に答えた。知り合いっちゃ知り合いですよ、夢のなかで、ですけども。心で呟いた。

「あのですね、叔父はいま海外にいまして。私が2年まえにここを引き継いだのですが」

「そうなんですかー」

 言いながらオレは脳ミソをフル回転させた。やばい、初っ端からはずしてしまった、弾はあと2発……。

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