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スモール・マウンテン  作者: 大原英一
第三話 レイニーレイニー……レイニーブルー
22/40

裏1

 行きつけの喫茶店「スモール・マウンテン」で朝のコーヒーにありつくと、やっと人心地がついた。

「マスター……どうしよう、オレ、ヘンな夢見ちゃった」

「美女軍団にモテモテの夢っすか」

 常連仲間の源次がとなりで茶化した。

「中学生か。あと軍団て。……ちがうよ」

 オレは今朝がた見た奇妙な夢のことをマスターと源次に話した。夢のなかで、オレは石原オレじゃなかった。ヤマゲンという男になっていた。


「そんなの、オレだってよく見ますよ。仮面ラ○ダーになっている夢とか」

「小学生か。それはアレだろ、源次が変身してるだけだろ?」

「いや、本郷た○し」

「もうええわ。あと伏せ字やめろ」


 オレらばかコンビのやりとりを、マスターがにやにやしながら見ている。

「きみたち、本当に仲がいいね」

「マスター、どう思います? ……オレ、精神的にまいっているのかなあ」

「ボクは専門家じゃないからねえ。でも、たとえば、映画の断片が夢のなかで再構成されたとか、ってことはないかな」

「まあ、ありえなくは、ないですけど。それにしちゃ地味で妙にリアルなんですよねー」

 言ってオレはコーヒーカップに口をつけた。

「石原さん、それ、誰かの呪いじゃないっすか」


 この源次くんは、オレがもっとも恐れている可能性のひとつを、さらっと言っちゃってくれる。

「源次、おまえのうしろにお化けが」

「小学生か。……マジな話、その夢に出てくる人たちって、石原さんに助けてもらいたいんじゃないっすか?」

 オレは苦い顔になった。コーヒーが苦かったわけじゃ、けっしてない。


「そんな雰囲気でもなかったけどなー」

 わかってないなー、と源次は首をふった。腹立つわ。

「助けておくれ、とか恨めしやとか、そんなストレートな言いかた、するわけないっしょ? 昔話じゃないんだから。どこかに隠されているんじゃないっすか、彼らのメッセージが」

「……怖いこと言うなよ」

 マスターがはっは、と笑った。

「まあ、ネガティブな要素ばかりじゃないかもよ? 夢のお告げってね。たとえば出会いとか、ね」

「幽霊との出会い、とかね」

「だから……おまえはなんで彼らを殺そう、殺そうとするんだよ」


 まあ石原くん、とオレをなだめつつマスターが聞いた。

「その、夢に出てくる彼らって、どんな人たちなの? いや会社みたいなところで3人で会話してるっていうのは、さっき聞いたけれども」

 オレはため息を吐いた。

「タタキっていうおっさんと、ワカバヤシっていう女性と、あとオレ扮するヤマゲンって男性の3人です。顔はおぼえていません、名前しかわからない」


「タタキにヤマゲン……変わった名前の人たちだね」

「タタキはそうとして、ヤマゲンのほうはあだ名っぽい感じですね。略称ってゆうの? 小山源・・次さんとか、そんな名前だったりして」

「ちょっと、オレらの名前使わないでくださいよ。……なんか、あらためて聞くとちょっと気味わるいっすね」

 いまごろ気づいたか、源次よ。

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