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スモール・マウンテン  作者: 大原英一
第二話 ユリが咲いた
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【解決編】中編

「脅しじゃないか、って」

 マスターは消え入りそうな声で言った。その表情は苦渋に満ちていた。彼が心配しているのは、脅されたであろうレイモンド鈴木ではきっとない。直感的にそう思った。

「マスター……あなたが心配しているのは、脅したほうの人間ですね?」

 彼は無言だった。オレは質問を変えた。

「探偵の目的はなんだったんです? どうも強請ゆすりの類いではなさそうだ。だってマスター、脅したのはあなたではないから」


 やがて彼はぽつりと言った。

「探偵は、理由がしりたかったそうだ」

「理由……脅迫者がレイモンド鈴木を脅して、ライヴをやめさせた理由ですか?」

「うん」


「まいったな……」

 オレは頭に手をやりつつ言った。

「理由つまり動機のある人間を、オレらはしっているじゃないですか」

 マスターはオレを見ようともしない。

「源次ですよ。アイツはもともと面白くなかったんです。自分以外の家族3人が仲よくステージで歌うことが。だからレイモンド鈴木を脅して追っ払った」

「ちがう……源ちゃんじゃない」

「え、ほかに誰が?」

 すると彼は目をふせて言った。

「子どもだ、と探偵は言っていた」



「はあっ!?」

 そんな……信じられない。条件に合致する子どもはひとりしかいない。田代家に少年こどもは、ひとりしか。



「マスター、最初からぜんぶ話してください」

 オレが言うと彼はじろっ、とこっちを睨んだ。だからそうしようとしたのに石原くん、きみが口を挿んだんじゃないか、とまるでオレを責めているようだった。すみません。

「恵一くんだ。納涼祭のまえ、彼が探偵のところへやってきてこう言ったらしい」

 爆発しない爆弾のつくりかたを、おしえてほしいと。探偵は答えた。しらない、と。

 恵一くんはすぐにあきらめて帰った。彼は納涼祭のチラシを、探偵は名刺をそれぞれ相手に渡した。


 納涼祭当日。恵一くんのことが気になった探偵は、ライヴ会場のある公民館の駐車場へとやってきた。開演1時間まえには現地に到着していた。

 探偵は恵一くんのすがたをさがした。到着がだいぶ早かったこともあり、すぐには見つからなかったそうだ。

 開演40分まえ。探偵のスマホに着信があった。しらない番号だった。そういう場合、探偵は相手が留守電にメッセージを入れるのを待つようにしている。

 探偵は留守電を聞いた。メッセージを入れた人物は鈴木と名乗った。探偵は鈴木にコールバックした。


 鈴木が言うには、いま彼の目のまえに爆弾があると。それで探偵は恵一くん……と名前は出さずに、先日の爆弾少年のことを鈴木に話した。

 鈴木が言うには、爆弾と一緒にメモがあったと。そこにはこう書かれてあった。警察へ通報するまえに彼女に電話しろ、と。

 鈴木はメモにあった携帯番号に電話した。それで彼女つまり探偵とつながったというわけだ。

 探偵はじゃあ、指示どおり警察へ通報したら? と鈴木にアドバイスした。鈴木はじゃあ、そうすると言って、さらに探偵に礼を言って電話を切ったそうだ。

 結果的に爆弾は爆発しなかったし、警察が公民館にやってくることもなかった。電話で言ったのと、ちがう行動を鈴木はとったのだ。

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