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ロンド・オブ・ソード  作者: 紅姫
3/4

目覚め

「……ソ…………」


誰かが俺を……呼んでいる?

闇に向かって手を伸ばす。

しかし、その手は届かない。


「……ウ……ジ……!」


もう一度、闇に手を伸ばす。

……!

何かに触れた感触。

もう少しで届きそうだ。


「ソウジ……ゃん!」


手を、力強く伸ばす。

手に触れた何かを離さないように、しっかりと掴む。


「あらやだソウジちゃんったら♡ だ・い・た・ん♡」


「うぉうぇっ!? 何!? なんでオカマが俺の部屋に!?」


手になにやら柔らかい感触。

そのまま揉む。


「あんっ♡ ソウジちゃん……朝から元気ね♡」


「はへ?」


手に視線を向ける。

俺の手は――オカマの股間を握っていた。


「うわああああああ!!!???」


慌てて飛び起き、部屋の外に脱出し、そのまま壁をぶち破って外に出た。

勿論下に床などあるはずもなく……俺は転落した。道の真ん中に。


お、おおおお俺は何を!?

夢で俺を呼んでいた美少女は……。


考えたくもない。

恐らくオカマが俺を起こしに来たのだろう。


起こしに来た……のであろう。

襲いに来たのかも……いや、考えまい。


「ソウジちゃーん、朝ご飯出来てるわよぉ~」


「オカマさん食べていいですよー!?」


一刻も早く逃げ出したかった。

ギルドに向かって全力で走る。


トラウマになりそうだ。

今度こそボロイ宿には泊まるものか。


心に固く誓ったソウジであった。





「せいっ! はあっ!」


硬直し、動かなくなったゴブリンを前に、俺は安堵の息を吐いた。


「ふう……ゴブリンも大分簡単に倒せるようになったな」


ゴブリンの魔石を拾おうと、身を屈める。

魔石のそばには、ゴブリンの錆びた剣が転がっていた。


「お、ドロップアイテム。ラッキー」


ドロップアイテム。

倒れた魔物はそれを稀に落とす。

ドロップアイテムの使い道は多種多様だ。

武器に加工されたり、防具の一部となったり、或いは薬に調合されたり。

高位の魔物のドロップアイテムは非常に貴重で、国が動くことさえあるという。


「ゴブリンの剣かー。錆びてるし、売るくらいしか使い道なさそ……」


ゴブリンのドロップアイテムは、この剣と牙である。

剣は特に価値はないが、牙は短剣に加工もできる。


「どうせなら牙が良かったなあ」


そう言いながらも、ゴブリンの剣を腰に差す。


錆びてはいるが、短剣よりリーチは長い。

使えないことはなさそうだ。


次の獲物を探すため、あたりを見回す。

すると、視界の端に一匹の魔物が入った。


コボルトだ。

コボルトは、四足歩行の魔物で、犬の巨大版みたいなやつである。

当然危険度は段違いだが、さして脅威のある魔物ではない。

……と、マリーさんに読まされたモンスターの本で知った。


ところで、モンスターテイムという技術がある。

これは、魔物を手なずけ、自分のペット、というか一緒に戦ってくれる仲間にするものである。

コボルトは犬のようではあるが、醜悪な顔をして、人をも襲う魔物である。

あれが本当に手なずけられるのだろうか……。

犬のようにワンと鳴くのだろうか……。

甚だ疑問だ。


なるべく足音を立てずにコボルトの背後に回る。

後ろから襲うのが、一番早く終わるはずだ。


背後から短剣で切りつける。

コボルトはゴブリンよりも柔らかい。

故に、俺の力でも大きな傷を与えられるのだ。


手負いのコボルトにとどめの一撃を与える。

コボルトも、ゴブリンと同じく弱い部類に入る。

だから、弱い俺でもなんとか倒せるのだ。

……もっと強くなれないと心が折れそうだ。


ドロップした魔石を袋にしまい、今日の狩りを切り上げる。

もうオカマには会いたくない。

今日は岩穴ででも野宿するか……。

いつもの岩穴へ、ソウジは足を進めた。





火を起こし、壁にもたれる。

低ランクの魔物は火を恐れる。

この辺りなら、火を起こすだけで安全なのだ。

当然、遠くから来た中、高ランクの魔物に見つかったら一巻の終わりではあるが。


そんなことが起きないよう、ギルドは常に周囲を探知し、万が一があればすぐ警報をならして伝えるようにしている。

ギルドのおかげで、俺たちの命は守られているのだ。

ギルド様々である。

……オカマの宿は紹介しないで欲しかったが。



一日の疲れで、俺はすぐ眠りに落ちた。

眠る直前に聞こえた、かすかな足音は、俺の眠りを妨げることはなかった。



「あら、誰かしら? こんなところで寝ている命知らずは」




ようやくヒロインの登場か……はたまた三人目のオカマか。

次回もよろしくお願いします。

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