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ロンド・オブ・ソード  作者: 紅姫
2/4

戦闘

心地よい鳥の鳴き声の中、爽やかに起床する。

……ベッドがただの木の板でなければ。


身体中が痛い。

これなら野宿と大して変わらないではないか……。


ギシギシとなる恐ろしい階段を下り、食堂へ向かう。


「あ~ら、お・は・よ・う♡」


「……おはようございます」


「どうしたの、元気ないわねえ」


「いえ、大丈夫です」


「そう~? はい、これ朝食ね」


そういって乾パンを渡された。

銅貨2枚の食事……確かに妥当である。

銅貨2枚なら乾パンしか買えないであろう。

乾パンを口に放り込み、むしゃむしゃと咀嚼する。


それにしても……これなら野宿した方が良いのではないか。

何故朝からオカマを見なきゃいけないんだ……。


寝ざめは最悪であった。いつも通りである。





「マリーさん、これ受けます」


「ゴブリンの5体討伐ね。分かったわ。ソウ君、気をつけてね」


「はーい、行ってきます」


ドアに向かって歩く。

素手でなんとかなるのだろうか。

いや、なんとかせねば。

倒せないと死ぬ。マジで。


「待ってソウ君! あなた武器は?」


「ここにあるじゃないですか?」


「……どこに?」


ポンポンと拳をたたく。


「この拳ですよ。それじゃあ」


「ちょっと待って!!」


「まだ何かあるんですか?」


「いや貴方ねえ、素手で勝てるわけないじゃないの! あなたまだ弱いのに!」


バカな……?

最弱のゴブリンなら最弱の俺の拳でもなんとかなると……。


「なんとかならないわよ!」


「心でも読めるんですか!?」


「仕方ないわね……。ちょっと待ってて」


「え? は、はい」


マリーさんは奥に行って、数分したら短剣を1本持ってきた。


「はい、これあげるわ。どうせあなた、お金ないんでしょ?」


「いや、そんな申し訳ないですよ」


「いいの! 今度、ご飯奢ってくれればいいから。ほら、行きなさい」


ご飯奢る方がお金かかりそうな気がするんだけど……。

乾パンじゃダメだよな。

ご飯代集めるために今夜はまた野宿かなあ。





街を出てすぐのところにあるこのグラス平原。

ここは専ら、弱い魔物しか出ないから新米冒険者に人気がある。

というか他のとこ行くと死ぬ。


その一角には、今日も新米冒険者が叫んでいた。


「うわあああああゴブリン2体もきたあああ!!」


……実に情けない。

ソウジは、本日もまたゴブリンから逃げていた。


「卑怯者おおお!! 1体ずつかかってこいよ!」


当然、ゴブリンにそんなこと言っても理解するはずもない。

聞いた話では、高位の魔物は人語を理解するらしい。

そんなこと、今のソウジにはまっっったく関係ないが。

もしかしたら一生関係ないのかも知れない。

出来ればそんな事態は回避したいが。


「ふう、なんとか逃げ切ったな。よし、1体のゴブリン探そう」


あたりを見回し、ゴブリンを探す。


「お、発見。よし、マリーさんに貰ったこの短剣で、ゴブリンなんてけちょんけちょんにしてやるぜ!」


ゴブリンに向かって走り出す。

すると、向こうもこちらに気付いたようで、こっちに走ってくる。


「うわあああゴブリンこえええ!!」


思わず背を向けたくなる衝動を抑え、ゴブリンに向き合う。


「俺は情けない男は卒業した! かかってこいよゴブリン!」


短剣を握り、前方に構える。

ゴブリンの動きは単調である。

だから、ランク1の俺でも狩れるのだ。

いや、まだ狩ったことないけど。


「きええええ!!」


ゴブリンの攻撃を一歩引いてかわす。

勢いでよろけたゴブリンにすかさず短剣で腕を切る。


「よし、入った!」


もちろん、ゴブリンもそれで終わるわけがない。

残ったもう一つの手で攻撃をしてくる。


だが、腕を切られて動きがより単調になっている。

それをかわせない俺ではない。


かがんで躱し、背後にまわる。

そのまま背中を切りつける。

すかさず返す剣でもう一度切る。


「きいいいいいい!」


ゴブリンが背中を切られて前へ倒れこんだ。


「もらった!」


馬乗りになり、背中に深く短剣を突き刺す。


「き、き……」


ゴブリンは動かなくなった。

しばらくすると、ゴブリンは灰となって消えた。

その場所には、小さな石が一つ、転がっていた。


魔石である。

魔物の心臓ともいうべき石で、これを破壊されると魔物は死ぬ。

魔物は死ぬと灰になり、この魔石を落とす。


それを拾って袋に入れる。


「よし、一体目……っと」


次の獲物を探すべく、俺は走った。





誇らしげな顔でギルドに入る。

当然だ。はじめて自分で魔物を倒したのだ。

浮かれるのも当然である。


「マリーさーん!」


「ソウ君お帰り……ってあなた血だらけじゃないの! どうしたの!?」


「あ、いや……これ返り血ですから」


「うわ……」


「それより、これ魔石です。はい」


「え、ええ。はい、これが報酬よ。銅貨25枚」


「25枚!? そんなにもらえるんですか!」


「ええ。討伐クエストは、採取クエストより基本報酬がいいのよ。まあ、例外もあるけどね」


「へえ……今まで俺は何を……」


「ま、まあ今日は頑張ったんだし、宿に戻ってお風呂にでもはいってらっしゃい」


マリーさんに言われた通り、宿に戻って……いや、あんな宿には戻りたくない。

新しい宿を探そう。もうちょっといいとこ。


【ボロイ宿】を素通りして、もう少し先まで歩く。

すると、いかにも安そうなボロくさい宿が見えてきた。


「よし、ここにしよう」


宿の前に立ち、名前を確認する。


「えーと【ボロくさい宿】ってデジャヴ!! もういいわ!」


壁は相変わらず木で出来ているが、剥がれているところはない。

さすがにたらいは無いと信じたい。


「ごめんくださーい。一晩泊まりたいんですけど……」


宿に入り、カウンターに声をかける。

すると、奥から女の人の声が聞こえてきた。妙に高い。


「はあい♡ お・ま・た・せ♡」


俺は絶望した。


「なんでまたオカマなんだよ! ボロい宿にはオカマしかいないのか!」


「オカマじゃないわよ!」


「え、うそ、どう見ても男……」


「あたしはお・と・め・よ♡」


「やかましいわ!」





なんとか部屋に入り、ベッドに腰掛ける。

銅貨15枚も取られた。食事代込みで20枚。

確実に足元見てるよね畜生!


オカマはもうこりごりである。

次はもうちょっとお金が貯まるまで野宿しよう。

ボロい宿はもう嫌だ。


始めての戦闘と、オカマの対応による疲れで、俺はすぐに眠りに落ちた。

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