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嫌われ剣士の異世界転生記  作者: 夜之兎/羽咲うさぎ
第六章 混色の聖剣祭(上)
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プロローグ 『始まりと終わりの色』

ここからは、第二部となります。

プロローグということで、かなり短いです。

「誰も彼もが、自分だけは大丈夫だって、ずっと思い込んでいる。今日、親が死ぬ かもしれない。明日、友人が死ぬかもしれない。明後日、自分が死ぬかもしれない。そんな可能性を微塵も考慮せずに、日々安穏と、何も考えずにダラダラと流されるまま、風の向くまま、悲劇の可能性にも気付かずに、無為に生きてる」


 酷くしゃがれた声だった。

 世界に絶望し、全てに諦観した、そんな声だ。

 包帯から覗く赤と黒の瞳は、どす黒い希望で塗りつぶされている。


「ある日突然、龍に襲われるかもしれない。通り魔に殺されるかもしれない。流れ弾を喰らうかもしれない。病気に掛かるかもしれない。――魔神が世界を壊すかもしれない。この世には失わなければ大切だと気付けない物で溢れてる。それは悲劇だ。絶望だ。だからこそ己は、世界に絶望を撒き散らす。絶望を知ってこそ、希望を知ることが出来る。それがおれが出来る、唯一の施しだ」


 早口に、まくし立てるように。

 その男はペラペラと言葉を重ねていく。


「うん、わかるよ」


 その言葉に賛同する者がいた。


「施し、素晴らしいですね。ええ、貴方の考えは素晴らしい。絶望、悲劇、そう痛み。痛みこそわたし達が世界へ与えられる祝福。だから傷付けて、刺して、斬って、突いて、傷を開いてあげなきゃね。傷をえぐって、ぐじゅぐじゅと痛みを与えることこそ、素晴らしい祝福なのだからっ!!」


 否。


 それは賛同などではない。

 紡がれた言葉は男の言葉とは徹底的に噛み合わない。

 自分の世界に浸り、ただ無為に羅列しているだけだ。


「はぁ、キンキン声で喚かないでくれる? 耳が痛いんだけど? うん、一つ提案なんだけど、目の前にいるこの僕様やつがれさまが眠そうにしてるのが見えないんだったら、世界云々の前にその役立たずな目をえぐったらどうかな」


 彼らの言葉に、また気怠げに返す言葉があった。

 あくびをし、心底興味なさそうに、憂鬱な声色が言葉を紡ぐ。


「あぁ、すいません。だけど目。 良いね! そうしよう、そうしよう、そうしましょうっ! 是非是非是非是非! わたしの、目をっ!」


 グチュリ、と何かが潰れる音がする。

 続いてぼたぼたと、液体が床を打つ。

 部屋に漂うのは、濃厚な鉄の臭い。


「あぁぁ……痛いっ! す・ば・ら・し・い!」


 自身の瞳をえぐり、ケタケタと異常者が笑う。


「気持ち悪っ。眠気覚ましにもならないから、もう死んでいいよ」

 

 それを見て、心底面倒くさそうに溜息を吐く少年。


 異常だった。

 どうしようもなく、異常な空間。

 会話は噛み合わず、誰一人として興味を持たない。

 

 そんな中へ、一人の女性が現れる。

 異常な空間に、とろけるような笑みを浮かべて入ってくる。

 そして、全てを受け入れるように手を広げ、こう言った。


「さぁ――『正義』を始めましょう」




 ――世界の闇で、『黒』が犇めく。

 


 


  

新章です。

第一話は明日、更新しますが、二話以降はしばらく隔日更新とさせていただきます

申し訳ありません。


――CM――


ブレードオンラインの三巻が本日発売となります。

イラストレーターは雫月ユカ様に担当して頂いております。

書籍版と色々変わっておりますので、興味のある方は是非。


それでは嫌われ剣士の新章をよろしくお願いします。


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