第5話
意思があるかのように、ついてくる。それは、学校でも例外ではない。確かに袋に入れて机の引き出しの奥に貯金箱を蓋にしてしまってから出かけたはずだ。
それでも、着いてからカバンを開けたらそこにある。もはや気味悪がることもなく、代わりにストレスへと変換されていく。捨てる方法はないのであろうか。そういえば、ルカがマスクについて説明をしていた。といっても、頭と尾しか聞いていない。それに、最後にあの言葉である。それまでの説明を全て押し出してしまったのだ。
「一度以上能力を発動させたものしか見ることも触ることもできない」
裏を突けば、一般人にはないものと同じだ。
それは恐らく、剣の目の前にいる友人の仁にも言えることかもしれないのだ。
「なぁ――」
昨日見た特撮ヒーローを熱く語る仁を遮る。
「お前さ、変な力使ったことない?」
「はぁ? なんだそりゃ」
少々ストレートな質問であったが、仁の反応から察するに能力を発動させたことはないと半分程度ではあるが断定できる。
「いや、ないならいいんだ」
「何だよ。変だなぁ」
今度はケータイを取り出し、仁に見せつける。
「なぁ、これがなにか分かるか?」
「は、これは……」
剣のケータイを手に取り、しばらく見つめる。これで残りの半分が埋まった。
「これは、絶強戦隊バクオンジャーだよ。今、やっているやつなんだけどさ――――」
実は、ケータイを取り出すのと同時に例のマスクも見せていたのだ。それをケータイに被さるようにする。一般人ならば、マスクを見ることはできないのでケータイの画面しか見られない・
加えて、画面を敢えて小さく表示させることで仁が確実にケータイを取るように仕向けたのだ。その時、彼の手はマスクが触られる位置にあった。つまり、手がマスクをすり抜けたのだ。
いよいよこのマスクがデタラメなオモチャではないことが分かって来た。なら、ルカが言ってたことが嘘になる可能性もない。では、アクは実際に存在することになるのだが……
本当にアクと戦わなければならないのか。
世界はこの後どうなるのか。
数々の疑問が生じた時、仁と剣が挟んでいる机に影が覆う。
窓際の彼の席にだけそれが起きることは考え難い。二人は静かに首を横に曲げる。
「剣という男はどっちだ?」
今は小学生くらいの女の子が校舎の3階の窓枠に仁王立ちで登場する時代なのだ。






