第4話
ベッドの上で天井を見つめながら、今日の出来事を思い出す。
急にヒーローをやってくれと頼まれ、即座に断った。もう少しマシな言い方があったのだろうかと疑問が生まれても、その言い訳ばかりが頭の中を駆け巡る。つまりは、多少の罪悪感が残っており、これがまた厄介で剣の心に靄を作り出す。一刻も早く抜け出したいので、親に叱られた子供のようにふて寝することに決めた。
翌日の目覚めは最悪だった。当然のことだろう。雨に打たれてまま帰宅し、風呂にも入らず、ましてや体も拭いていないのだから体温が奪われていく。加えて、今日は休日だ。休みの日に風邪をひくとはなんて不運なのかと嘆く人は大勢いるはずだ。
頭痛に侵されながらも、ベットから起き上がり、まずは着替えをと洗面所へと向かう。その間に襲ってくる激痛は脳みそだけでは飽き足らず、体全体を傷つけながら走る。血液中に鮫がいるのではないかと錯覚するほどだ。
着替えを終わらせ、頭痛薬を服用し、今日は安静にしようかとベットに入ろうかと思ったが、その足元に置いてあるバックに目が行く。そういえば、ケータイをそこにしまったままだ。友達から何か連絡があるかもとチャックを開ける。
「………………」
自分の記憶が正しければ、昨日はルカからの誘いを断ったあと、手にしたマスクを彼女目がけて投げつけ、そのまま足早に立ち去ったはずだ。ルカが一切何の反応も示さなかったので印象に残っていた。要は手元にマスクなんてないはずだ。
しかし、バックの中に強く主張するかのようにマスクが一番上にある。この数奇な出来事のせいで剣の頭痛は緩和された。
そのマスクが心なしか不敵な笑みを浮かべているように見えた言い訳は全て消されてしまっていた。