第17話
情報量が多いと言うよりは、質が幾らなんでも一般的ではないために、この不可思議な出来事を綺麗に処理することができなくなっている。
目の前に空色が二人いる。もちろん、二人が双子ならば問題ないのだが、そのような雰囲気ではないことだけは理解できる。
「お主は何者だ?」
「此方は久遠寺空色だ」
喋り方は瓜二つだ。性格が違っていることは身をもって体感しているし、ひったくりをしている時点ですでにそうだろう。
「空色。やっていいぞ」
「承諾した」
すると、空色は左手を伸ばす。すると、捕まえるために置いてきたランドセルから例のマスクがすり抜け彼女のそこに収まる。マスクが凡人には見えないのが幸いだ。今は偶然にも人気が少ないとはいえ、もし見ることができたらと思うと。
空色はその左手をゆっくりと顔に近づける。
「装着」
次の瞬間、彼女は手を離したがマスクは落ちることなく張り付いている。彼女の周りに小さくつむじ風が起きる。それを両手で弾き飛ばした。
「手加減はしないのでな、覚悟するがいい!」
一気にもう一人の空色に飛びかかっていく。油断していたのか、偽物はされるがままにぶっ飛ばされていく。
「いくらなんでも、強すぎるだろ」
どんなに鍛えたとしても、普通の人間には成し得ない芸当を次々と繰り出す。相手もある程度反撃はしてくるものの、大体は躱されるか受け流されるだけだ。
「あれがマスクの力だ」
「あ? どういうことだ」
「前にも説明したが、マスクをつけると能力が強化されるだけでなく、身体能力も上がる。これは、マスクや個人に差がでるが、人間離れするのは間違いない」
「あぁ……そうだっけか? っていうか、お前は戦わなくていいのかよ?」
「私はあくまで監督的立場にいる。試合に出るわけにはいかない」
「……何だよ、そりゃ」
「空色、そろそろ止めだ」
いつの間にか、偽物を空中に放り投げ、自分はさらにその上まで飛んでいた空色はその言葉を聞いてか、両手を左側の腰に持っていき力を溜める。
「あれが、空色の能力」
それを偽物目がけて放り出すと、彼女の手から氷が噴き出してきてそれを捕えるように包む形に変化し地面に叩きつける。
「空気中の水分を凍らせる技だ」
ルカが偽物に近寄っていくので、思わずつられていく。
「それで、こいつは何なんだよ?」
「大方の見当はついている。今日はそれを君に知らせたくてきたんだ」
そういうとルカはどこから出して来たのか小型のナイフを取り出した。
「コイツ……コイツらの正体は――――」
頬をナイフで切ると、人間の血とは思えないほど黒いものが流れてくる。
そしてルカは言い放った。
「ドッペルゲンガーだ」