第14話
大よそのヒントをルカからもらった剣ではあるが、これでははっきり言って情報が少ない。これでは、真相には到底だが辿りつけない。
と言っても、以前にルカが言っていた、アクと何か関係があることについては確かだという裏付けがなされたに違いない。
暇があれば彼女からの手紙を見返し、その文字から感じ取られる憶測を頭の中に無限に広げる。どれも超理論に過ぎないが、それを肯定する材料が手元にある。
マスク
そもそもこのマスクはどのようにして生まれたのか、何を目的とされているか、ルカがそれに関する説明をしたとは思うが、ほぼ聞いていなかったので、本当に説明したのかどうかは定かではない。別に直接会って確認するくらいのことは容易だが、なるべく首を突っ込みたくない相手に対しておめおめと聞き出すのも馬鹿馬鹿しい上にプライドが許さない。
色々な意味でお手上げ状態だと言わざるを得なくなってきた。もっともっと核心に触れる手掛かりが欲しい。一度は実際に自分の足で稼いでみようかとも考えてはいたが、その方法が上手く思いつかず断念してしまった。
何度も何度も提案しては否定しを繰り返してきた。人生においてこれほどまでに頭を使ったことは他にあっただろうか。知恵熱が出てしまうのではないかと思うほど酷使している。
実際に目まいが起こる。本人に言わせれば何の問題はないのだが、それが体育の時間に起きてしまったものだから、クラスメイトも教師も友人も過剰に心配してしまい、保健室で残りの時間は休むことになった。
思わぬ幸運ではあるものの、ベットの中でも考えていることは結局同じだった。しかし、ここはベットだ。睡眠を促す場所であるのだ。寝不足に加え目まいを起こした剣が眠りにつくなんて彼は数時間経ってからのことだと思っているが、実際はものの数分だ。時間の感覚さえもおかしくなっている。
不意に寝てしまうと中々夢は見ないもので、意外とあっさりと目覚めてしまった。これもまた、数分のことだと錯覚しているが少なくとも昼休みが終わっていた。少々頭が変に感じてもおかしくはない。おかしくはないのだ。だから、今まさに目に飛び込んでいる光景も幻覚であると思う。いや、そうだと信じたい。
「…………久遠寺」
「おはよう。もう昼だが」
空色が馬乗りの状態で顔を覗いているのだ。この何とも言えない苛立ちをどう表現しよう。
「…………なんでここにいる?」
「お主と話がしたくてな」
体調も優れて来ているので、授業をサボる目的でそれに応じる。場所を変えようという空色の提案に乗り、最寄りの公園に向かうことになった。
この公園はある程度、木々が育っていることもあってか死角が多い。すぐにバレることなどないだろう。
「んで、話ってのは?」
二つの可能性を考えた。一つはいつものように、勧誘をすること。毎度のことでありそうなことだが、それなら保健室で事足りるはずだ。
二つ目は、新たな情報。理由は思いつかないが、これを教える可能性はゼロではない。
どちらかと言えば後者に賭ける。ちょっとした期待を持ちながら空色に寄ろうとした。
「最初からこうしていればよかった」
「……あぁ?」
小さくて聞き取りづらかった台詞を処理する前に、鳩尾に重い衝撃が走る。
「…………ぁあうっ」
全く考えられなかった第三の答えが返ってきた。