第13話
目的地に向かって歩を進める。引き寄せられるかのように迷うことはなかった。
やっと足を止めた。目の前には空色の屋敷が広がる。考えなしにやってきたので、正直どうやって中に入るかを考えてはいなかった。ダメ元でインターホンを押して、空色の友達だと告げたらあっさり通してくれた。恐らくだが、彼女に何か言われているのだろう。
記憶力はそこそこいい方で、行きと帰りの計二回通った道程を間違えるということはなかった。といっても、ほぼ一本道ではあるのだが。
例の基地に入る。自信はないが、もしかしたらルカがいる可能性にかけてやってきたのだが、予想通り彼女がいた。まさか剣がここにくることを予め知っていたわけではあるまい。
「どうした? 少年・剣。ここはサボリ場ではないから、用もなく仲間でもない者が頻繁に来るのは遠慮してほしいのだが」
「……お前、小暮がアンタらの言うアクと何か関係があるって言ってたよな?」
「………………」
「言ってたよな!」
「……あの女か」
「それからどうなったんだよ! 結局、あいつはどう関係してんのか分かってるのかよ!」
「…………結論から言うと、分かっていない」
「ふざけんな!!」
自分でも驚いてしまう。まさか、ここまでの大声が出るなんて思ってもいなかった。
「しかし、手掛かりが何一つないとは限らない」
「なんだよ」
「ここから先は機密事項だ。君は私達の関係者ではあるが、仲間ではない。仲間ではない人間に教える義理はない」
「………………そうかよ」
一気に魂が抜けてしまった剣。その足取りは亀よりも遅いくらいだ。小暮が無実だと信じていたかった。だが、それを追い求めれば求めるほどその反対の真実が浮き彫りになっていく。
家についてからは何も頭に入ってこなかった。母親の心配する声、近くを通る車の音、小学生の喧騒。その全てが必要なくなってしまったと感じるほど鼓膜を震わせない。
カバンを置き、その場に倒れ込んだその時。後ろのポケットからクシャッという音が聞こえた。
そこに紙か何かを入れた記憶なんてない。取り出して見てみると、それは一枚のルーズリーフだった。それが四つ折りにされていて、中を見ると。
――これは推測の段階ではあるが――
綺麗な字で書かれていた。話し方からルカが書いたものだと直感的にそう思えた。
――小暮と言う女を含め、この街の人間には共通点がある――
返事が来ないのは分かってはいるものの、つい「何だよそれ」とつぶやいてしまう。
――みんな、身に覚えのない罪を着させられている可能性がある――