第11話
「すげぇな……」
思わずそんな言葉を呟いてしまうほど、秘密基地のクオリティは高かった。彼女らを疑っていたわけではないが、悪戯で作れるレベルではない。
「普通に広いし」
今現在、基地にいるのは三人。バトミントンをしても余りが出るくらいに空間がある。
「本来なら、私たちのチームは五人だからな。余裕を持たせて作ったみたいだ」
「でもよ。なんで俺をわざわざここに呼んだわけ?」
基地の性能に対する驚きが強くて隠れてしまいそうだが、ここに来るまでずっと抱いていた疑問であった。仲間になっていない剣をこんな重要な施設に連れてくることのメリットは少ない。
「例えば、君が私たちの存在を世間に公表することにしたとして、誰が信じる? 君自身が信じていないのに」
「いや、それは確かに……」
「加えて、君が私たちの敵になることになっても、五人なら君に勝てる自信はある。君の能力を把握していないのが枷となるが、本人も知っていないみたいだから」
「それに、お主に此方らの素晴らしさを教えることにより、羨ましく思うようになれば、勧誘もしやすいからの」
「別に仲間になる気なんか微塵もないけどな」
そこから何が起きたわけでもなく、ちょっとした世間話をしたくらいで、空色が剣を引っ張って買いだして来たもので軽く手料理を振舞った。いつ来るか分からない歓迎パーティを圧倒するほどの前倒しで、かなりこじんまりと開かれたのだ。
空きっ腹に入ってくる料理は味には何の問題もなかった。むしろ、それを小学生が作ったことを考慮すると合格点だった。
あんまり間食をする方で、今日はイレギュラーではあるものの、夕飯時には帰ってこられそうなので晩御飯はきちんと摂ることにする。帰り道の途中、ちょっとした腹ごなしに本屋に立ち寄ることにした。好きな作家の最新作が一昨日から発売だったはず。予定ではもう少し後で買うつもりだったが、この際だから買ってしまおうと決心する。
新刊のコーナーの目ぼしい所に立ち、作家名、もしくはタイトルを追っていた。その時だ。
「―――――ん?」
視界の右端に通ってる高校の女子制服が見切れる。雰囲気に見覚えがあったような。好奇心でその女子についていく。
文庫本のコーナーに差し掛かり。辺りを見回す。目的の本を探すにしては少々雑な気がするが、それは人それぞれだろう。だが、そのおかげで顔をとらえることができた。
「……小暮?」
なんと、先日告白をしてくれた女子だ。これはチャンスと感じた。あの日の事情を説明すればもしかしたら。などと考えはしたものの、またルカが瞬間移動したかのように現れるかもしれないと危惧したので話しかけるタイミングが遅くなってしまった。
このまま、何も言わないよりはマシだと判断し小暮に近づこうとした。
しかし、当の小暮は挙動不審な行動を終えたかと思うと、平積みされていた本から一冊を予め開けてあるカバンに詰めるように押し込み。チャックを素早くしめてその場を足早に立ち去った。
「………………」
結局、何も言えなかった。