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迷走探偵秋谷静  作者: 青波零也
鏡花水月の君
8/12

アサノ、首を傾げる

「アサノか、すぐに来い!」

 翌朝、予備校への道をぽてぽて歩いていると突然携帯が鳴り……通話のボタンを押した瞬間、大音声のしゃがれ声が鼓膜を震わせた。

「こ、コバヤシさん?」

 慌てて問い返すと、携帯の向こう側にいる小林はそれがアサノの声であると理解したらしく、少しだけ落ち着きを取り戻して一言だけ言った。

「コズエのマンションだ、急げよ!」

「え、や、今から授ぎょ……コバヤシさん、コバヤシさん?」

 問い返すが、次の瞬間に聞こえてきたのはつー、つーという音だった。

 言いたいことだけ言った挙句、いきなり電話を切るとは相変わらずせっかちな方面にマイペースな男である。マイペースというのはあくまで「己のペース」であり、必ずしも「のんびり」を示さない好例だと思う。

 だが、基本的にそのペースを他人に押し付けることはしない小林が、あれだけ焦っていたところを見るに、長谷川に何かがあったのか。昨日はストーカーの影も見えず、長谷川も落ち着いた様子だったはずだが――

 いや、考えていても始まらない。アサノは思い直し、予備校に向けていた足を長谷川が住むマンションの方角へ向けなおす。今日は予備校の授業の中でもアサノが愛してやまない小論文実践講義だったのだが、今日はサボるしか選択肢はなさそうだ。

 とにかく、長谷川が無事であればいい。それだけを祈りながら、アスファルトを蹴った。

 

 

 大学に程近い場所に建つマンションの一室。そこが長谷川の住む場所だった。アサノはオートロックの扉の前で、あらかじめ聞かされていた長谷川の部屋の番号を指定してインターフォンを鳴らす。

「はい」

 聞こえてきた声は長谷川のものではなく、小林のしゃがれ声だった。久々に走ったこともあり、ぜえぜえ言いながらも何とか声を搾り出す。

「アサノっす。遅くなってすんません」

 入れよ、という返事と共に大きな自動扉が開く。めったに人の家にお邪魔することがないアサノは落ち着きなく辺りをきょろきょろ見回しながらも、何とかエレベータで五階まで上り、目当ての長谷川の部屋に辿りつくことができた。

 扉の前のベルを押し、再度名乗ったところで扉が開いた。チェーンがかかった扉の隙間から覗く、見慣れた緑と青のオッド・アイに安堵する。小林も険のある顔つきだったが、アサノの顔を見て気が抜けたのか、はあ、と肺の底から溜息をついて「入れよ」とチェーンを外しアサノを中に招き入れた。

「お邪魔します」

「あ……アサノさん」

 靴を脱いで中に入ると、ベッドの上に腰掛けた長谷川が、青ざめた顔でアサノを見上げていた。扉にチェーンをかけ直した小林が、長谷川の代わりに説明する。

「今朝、俺様を待ってる時に襲われたらしい」

「マジすか?」

 話によると、長谷川は最近毎日小林が来る時間に合わせてマンションの外に出るようにしていたというが、今日はいつもより少しだけ早く外に出てしまい、そこを襲われたのだという。

「それで、コバヤシさんが助けたんすか」

「や、そいつは違う。俺様が来た時、コズエの姿がねえから変だなと思って、連絡したが通じねえ。何かあったのかと思って辺りを探し回ってみたら、マンションの裏手に倒れてたんだよ」

「え……それって、手遅」

 れ、という言葉を遮って、つかつかと近寄ってきた小林はアサノに顔を寄せ小声になる。

「で、話はこっからだ、アサノ」

「は、はあ」

「どうも、コズエは記憶が混乱してて、襲われた直後から俺様が見つけるまでのことをよく覚えてねえらしいんだ。で、俺様から見ても、奴に何かされたって様子じゃねえ」

 まあ、確かに。何か手遅れになるようなことがあれば、どこかしらで判断がつくはずだ。あまり大きな声で言いたいことではないが。そして、観察力、という点では右に出る者のいない小林が何もなかったと断じるのだから、ここは納得してよさそうだ。

 ただ……記憶がなく、襲われた痕跡もないとなると。

「警察に届ける、ってのも出来ねえってことすね」

「ご名答。そこが正直厄介なとこだ。だが、とにかく今回はこの可能性を見過ごしてた俺様の失態、次は絶対にねえ」

 小林は今にも噛み付きそうな表情で虚空を睨む。きっと、ここにはいないストーカーを睨んでいるのだろう。勢いあまって自分が噛み付かれないといいなあ、とちょっと変な方向に不安がりながら、アサノは長谷川の方に視線を戻す。

 長谷川は、俯いたまま何も言わない。ただ、その手の中にこの前見た鏡が握られているのに気づいた。長谷川にとって、祖母の形見である鏡はきっと心を落ち着かせるお守りのようなものなのだろう。

 アサノは長谷川に近づいて、膝を折る。長谷川は少しだけ顔を上げてアサノを見た。本当は人と目を合わせるのは苦手なアサノだが、今だけは目を逸らさないように意識しながらできる限り優しい声をかける。

「だいじょぶっすよ。今は、怖いことは何もないっすからね」

「はい……」

 はい、と言いながら長谷川の表情は晴れない。アサノから見る限り、襲われた恐怖ももちろんあっただろうが、それよりも襲われた後の記憶がない、という事実から来る不安の方が大きいようであった。

 アサノは、少しでも安心させるために鏡を握る長谷川の手にそっと己の手を重ね……その瞬間に、視界が揺らいだ。

 ――現実の世界に、幻視が、重なる。

 アサノは現とそれ以外の境界線を知覚する能力を持つ。それを果たして「幻」と言っていいものかはわからなかったが、今のアサノの瞳に確かに映ったそれは、目の前に立ちはだかる顔の見えない黒い影、そして。

『どうして、どうして、ここにいるんだ。どうして』

 音として鼓膜を震わせたわけではない、しかし脳裏に響き渡る、知らない男の声。

「わっ」

 思わず声を上げて、一度は触れた手を離してしまう。その瞬間に幻視は消えて、男の声もぱたりと止む。現実の視界では、長谷川が不思議そうな顔になってアサノを見下ろしている。アサノは「はは」と愛想笑いをしながら、今一瞬聞こえた男の声について考える。

 アサノの知らない声は、おそらく幻視の中の、顔の見えなかった影のもの。そして、早口にまくし立てられた言葉に篭められた感情は、焦りと、アサノの感覚が正しければ「恐怖」であった。

 これは、長谷川の記憶なのだろうか。

 あらゆる境界線を越えた先を知覚するアサノは、時折自分と他人との境界をも越える。この能力が自由に使えるならこれほど便利なものはないが、つい最近自覚したばかりのこの力は、アサノの制御からは遠く離れたところにある。

 うかつな判断は出来ない。これがアサノにしか見えないものである以上、下手な憶測は事実を歪める。軽く唇を噛み、とにかく何を伝えなければならないか、頭の中でまとめようと試みる。

 そんなアサノの苦労を知ってか知らずか、小林は上着を羽織って長谷川に声をかける。

「コズエ、今は家から出ずにいてくれっか。買い物とか、必要なもんがありゃあ俺らでやる。お前さんもこんな状態で外に出るのは不安だろ」

「は……はい」

 そして、今度はアサノの方に向き直って言った。

「アサノ、しばらくここにいてやってくれねえか。俺様、ちょいとバイト先に頭下げてしばらく休み貰ってくる」

「できるんすか」

「言い訳が思いつかねえが、ま、何とかなるだろ」

 何とも場当たり的なことを口走りってから、小林は「じゃ」と短く挨拶した……と思ったら部屋からいなくなっていた。ごく普通に部屋から出て行ったのはチェーンの外れた扉から明らかなのだが、本当に人の動く速度で動いているのかたまに不安になる。

 長谷川も、小林に何か声をかけたかったようで片手を扉に向けて伸ばしていたが、その手が力なく布団の上に落ちたのをアサノは見逃さなかった。

 しばらく、沈黙が流れた。壁にかけられた、皿のような形をした時計がかちかちと時を刻む。改めて部屋を見回してみると、淡い色調で整えられた、落ち着く部屋だと思う。生まれてこの方実家から出たことがないアサノには、一人暮らしというものがどういう生活なのか想像がつかないが、もし自分ならばここまで部屋を綺麗に維持することは出来ない、とは思う。

 長谷川はベッドの上でしばし扉を睨んでいたが、やがて力なくアサノに視線を戻して言った。

「ごめんなさい。アサノさんも、授業ありましたよね」

「謝らねえでくだせえ。悪いのはハセガワさんじゃなくてハセガワさんに怖い思いさせるストーカーっす」

 アサノは言い切ってぷくーと頬を膨らませる。

 それに、長谷川に何かが起こってしまってからでは、寝覚めが悪すぎる。小林ではないが、一度関わってしまったからには危険が完全に去るまでは気になって仕方ない。

「あたしは好きでやってるからいいんすよ。それよりも、ハセガワさん、本当にだいじょぶっすか?」

「私は大丈夫です。ただ、どうしても、襲われた後のことが思い出せなくて」

 長谷川は不安なのかぎゅっと鏡の柄を握る手に力を篭める。

「今までも……今までも、あったんです」

「へ?」

「すごく、怖いことがあったような気がするのに、その間の記憶が消えてしまうんです。私、いつも一番大切なことばかりが思い出せません」

 それは、初めて聞く事実であり、アサノとしては見逃すことのできない事実でもあった。記憶の欠落がそうほいほい起こってはたまらない。また、「すごく怖いこと」という言い回しも気にかかった。

「今までそういうことがあった、って、いつのことっすか?」

 不躾な問いだっただろうか、と少しだけ不安になったが、長谷川としても相談できる相手を求めていたのかもしれない。ぽつり、ぽつりと語り始めた。

「初めてそうなったのは、五年前、高校からの帰り道でした。怖い、と強く思ったその瞬間からの記憶がなくて、気づいたら病院のベッドの上でした。親の話では、道に倒れていた、と……それからしばらくこんなことは無かったのですが、つい最近、もう一度」

 それは今から一週間前、小林と出会う前日。ストーカーに肩を掴まれ、怖くて逃げ出した、その瞬間までの記憶はある。だが逃げている間の記憶は全くなく、気づいたらマンション近くの公園に立ち尽くしていたのだという。

 本当に怖いことはなるべく考えないようにする、というのは確かに精神衛生上有効だが、綺麗さっぱり欠落してしまう、というのはあまりに極端すぎやしないだろうか。

「五年前のことについては、何か、覚えてることはないんすか? 今回みたいに、知らない誰かに声をかけられた、とか」

「いいえ。本当に、五年前に何があったかは全く思い出せません。ただ」

「ただ?」

 言葉を切った長谷川は、鏡の中の自分を覗き込む。その向こうに置き忘れてしまった何かを探しているような、そんな切実さで。

「五年前のあの日から、絶対に忘れてはいけないことまで忘れてしまっている……そんな気がしているんです」

 忘れる。忘れるというのは人間に与えられた最も重要な能力の一つだ、そう言ったのはそれこそ小林巽だった気がする。あの自称『元神様』は、たった一瞬だけ目に映った男の姿を詳細に描いてみせたように、目にしたもの、耳で聞いたことをありのままにインプットする絶対記憶能力を持つ。

 一方で、小林は覚えたことを忘れられないのだともいう。忘れることが出来なければ、重要なことも、些細なことも、同じように脳味噌に刻まれてしまう。それは「忘れる」という能力を持つアサノには理解できない世界だが、決してよいことばかりでないことは、わかる。

 だから、恐怖の記憶を丸ごと忘れ去ることが出来てしまう長谷川は、ある意味では幸せなのかもしれない。忘れているという事実に、長谷川自身が気づかなければ。もしくは、忘れてしまった記憶の中身を知ろうと思わなければ。

 だが、長谷川は己の失った記憶に「絶対に忘れてはいけないこと」があった、という。

 忘れられないこと、忘れてしまうこと。己の記憶力と忘却力に疑問を抱いたことなどないアサノには、小林の感覚も長谷川の感覚も想像するだけで本当の意味で理解することなどできやしない。

 ……けれど。

「ハセガワさんは、思い出したいって思いますか?」

 アサノが投げかけた問いは、長谷川からすれば唐突なものだったのかもしれない。鏡から目を上げて、長い睫毛をぱちぱちさせる。

「……え?」

「それなら、あたし、ちょっとだけお手伝いできるかもしれねえっす」

 アサノはそんな長谷川の目を真っ直ぐに見据える。本当は、人と目を合わせるのは得意ではないアサノだ。何となく気恥ずかしさすら覚えてくるが、今この瞬間だけは真摯さを見せなければならない。そう己に言い聞かせて、言葉を選びながら言う。

「信じてくれなくても構わないっすけど、あたし、ちょっとだけ変わった力があるんす。人とかものに触ると、その相手の思ったことだったり、見たことだったりが、わかることがあってですね」

 いわゆる『サイコメトリー』に近いかもしれない、アサノはそう付け加える。

 あくまでアサノの能力は歪曲視であってサイコメトリーに代表される超常感覚……ESPではない、と定義されている。ESPは異能であり異能府の管轄である、と秋谷や助手から聞いたことがある。

 しかし長谷川のようにそもそも歪曲視や異能の存在を知らない者に、それを詳しく説明するのはナンセンスというやつだ。そもそもアサノだって、歪曲視とESPの違いを上手く説明できない。

 長谷川は、そんなアサノの言葉を、目を丸くしたまま聞いていた。その表情からは、アサノの言葉を信じているか否かを判断することはできなくて、アサノは更に言葉を重ねていく。

「もしかしたら、ハセガワさんが忘れちまったことも、見えてくるかもしれません。駄目で元々、って感じで試してみません?」

 言いながらも、正直胸が爆発しそうなほどに高鳴り、目の前がぐるぐる回りだすような思いだった。長谷川の不安に煽られるように、つい言葉にしてしまったけれど、次から次へと後悔が押し寄せてくる。

 今まで、何も知らない相手に対してここまで己の能力について語ったことなどなかった。大抵、こんなことを言ったところで誰も信じてはくれないか、電波を受信していると思われてしまう。小林と出会い、あの事務所に世話になるようになるまで、自分自身ですらそれが本当に己の頭が生み出した幻想なのでないか、と疑う日々だったのだから、他人ならば信じられなくて当然だ。

 そして、非日常の世界に足を踏み入れたことのない長谷川にとっては、アサノの言葉など、単なる妄言にしか聞こえないに違いなかった。真剣に悩んでいる長谷川からすれば、アサノが長谷川の言葉を真剣に受け取らずにからかっている、そう見えておかしくない。ふざけるなと罵倒されたところで、アサノは何一つ言い訳できる立場ではないのだ。

 果たして、長谷川はどうアサノの言葉を受け取ったのか……恐る恐る長谷川の顔色を伺っていると、少しだけ表情を曇らせた長谷川が言った。

「それって……痛かったり、します?」

 へっ、とアサノは間抜けな声を上げてしまう。それから、慌てて答える。

「や、別にハセガワさんは痛くもかゆくもねっすよ。こっちが勝手に見るだけなんで。というか、あたしもまだ修行不足なんで、見えるかどうかもわからねえんすけど」

「もし見えなくても構いません。お願いしてもいいですか」

 アサノの想像に反して、長谷川は決然とした口調で言った。これには、アサノの方がついつい問い返してしまう。

「……信じて、くれるんすか?」

「信じている、わけではないんです。そんな魔法みたいなことあるわけない、って疑っている私もいるんです。けど」

 長谷川の唇が、震えながらも言葉を落とす。

「どんな手がかりでもいいから、知りたいんです。忘れたままは、嫌なんです」

 そこに篭められた思いの強さは、アサノにも伝わってきた。根本的な理解からは程遠いけれど、それでも、長谷川がどれだけ今の状況を不安に思い、打開したいと望んでいるのかはわかった。

 アサノは長谷川の目を真っ直ぐ見据えたまま、頷いた。

「わかりました、それじゃ、やってみましょう。手を出してもらえねっすか、出来れば両手がいいっす」

 長谷川は鏡を布団の上に置いて、両の手の平を上に向けてアサノに差し出した。アサノはそこに手を重ねて、目を閉じる。ゆっくりと握る長谷川の手は、アサノの手よりも少しだけ冷たく、ひんやりとした感触があった。

 目蓋の裏の闇の中、己が立つ世界に合わせていた焦点を、ゆっくりとずらしていく。もっとずっと広い、本来ならば知覚出来るはずもない領域を俯瞰的に見下ろす視点へと。世界と世界の狭間にたゆたう揺らぎ、歪曲を見つめる視点へと。

 この視点の移動を完全に意識の力だけで出来るようになれば一人前だ、と師匠……副所長には言われるけれど、これがなかなか難しい。ふとした拍子で突然歪曲を超えた場所に焦点が合ってしまったり、逆にもっと広く視野を取らないとならないのに、今ここにある視点に縛られてなかなか歪曲を見つけられなかったり。

 それでも、今日は上手くいっているらしい。目を閉じていながら、アサノの目にはちらちらと様々な色で揺らぐ何かが見える。

 これが……歪曲。世界と世界の境界線が、特に曖昧な場所。

 これを感知する能力者が歪曲視であり、この向こうからやってくるこの世ならざるものが、歪神と呼ばれるものである。幽霊や妖怪、果てには神や悪魔まで、そういうものを十把一絡げに纏めたものをそう呼ぶのだという。

 だが、今見つけたいのは歪神が住む遠くて近い世界の歪曲ではなく、握った手で繋がっている、長谷川の世界へ続く歪曲。焦点を少しずつずらしながら、それらしい歪曲を探す。

 と、アサノの中で何かが震えた。この感覚は、求めたものを見つけたときの感覚だ。己の勘を信じて、そこに焦点を合わせていくと……あった。

 アサノの視点で見ると、銀色に揺らめく水面のような歪曲。これが長谷川の持つ世界に繋がっていることは、直感的にわかる。この感覚は言葉で説明できるものではなく、無理に喩えるならば、手に触れたときに感じたひんやりとした感触に似ていた。

 アサノは深呼吸をして、目を閉じたまま言う。

「それじゃ、今からいくつか質問しますけど、何も言わなくていいんで、ただ、楽にしててください」

「はい」

 手に入っていた力が、ふっと抜けたのがわかった。アサノの目に映る歪曲も、柔らかく揺れる。それでいい、とアサノも思う。

 見習いのアサノに出来ることはそう大したことではない。アサノは長谷川の失われた記憶に関する質問をする。長谷川は言葉にして答えないまでも、その質問に関連していることを意識の表層に上らせるだろう。それを歪曲を通して読み取ろうというのだ。

 実のところ、こういう風に能力を使うのは初めてだが、理論としてはそう間違っていないはず。思いながら、アサノは第一の質問をする。

「まずは、試しに五年前のことを思い出してみていただけますか? もちろん思い出せない部分もあると思いますが、出来る限り」

 ざわざわと揺らめく銀色の歪曲の奥を覗き込もうと試みる。人の内面の世界に足を踏み込むというのはどこか後ろめたさも付きまとうが、今回ばかりは仕方ないと己に言い聞かせて歪曲に目を凝らし……

「……?」

 思わず、首を傾げてしまう。

「どうしました?」

 長谷川の声が聞こえてくる。アサノは目を閉じて視線を歪曲に留めたまま、言う。

「や、その、どうも上手く見えないみたいで」

 上手く、なんてものじゃない。銀色の歪曲の向こうに見えるのは、闇。温かくも冷たくもない、何の色も見せようとしない空洞だった。

 こんなことは今までに一度も無かった。意図して相手の内面を覗くのはこれが初めてだが、今までも誤って覗いてしまうことはあった。その時は、具体的な記憶の映像や、意味はわからないまでも色や形、時には熱や匂いといった五感に訴える「何か」が渦巻いているものだった。

 何も見えない、そんなことがあるだろうか。それともこの歪曲が長谷川の内面に続くものではなく、全く関係のない場所を覗き込んでしまっているのだろうか。

 一週間前、そして今日。

 質問を変えてみるけれど、見えるのはぽっかりと空いた空洞のみ。だからといって別の歪曲を覗いてみる気にはなれず、アサノは諦めて長谷川の手を離した。その瞬間にアサノの目蓋の裏に映っていた銀色の歪曲はゆらめいて消え去った。

 目を閉じたまま、元の場所に焦点を合わせようと試みながらアサノは言った。

「……すみません、何も見えないみたいっす。お役に立てず申し訳ない」

「そう、ですか」

 長谷川の声に滲むのは失望に似た感情だった。自分の未熟さを責められているようで、アサノは申し訳なさに頭を垂れずにはいられない。先ほどまでは、きちんと見えて、聞こえていたような気がするのに。

 ……先ほどまでは?

 アサノははっとして目を開けて、くらっと来てカーペットの上に手をついてしまう。まだ、視点が微妙にこっちの世界に戻りきっていなかったのか、目に映る何もかもがぎらぎらと輝いて見えてしまったのだ。長谷川の姿までが銀色の肌を持つぎらぎらした何かに見えてしまって、思わず片手で目を押さえてしまう。

「大丈夫ですか?」

 だ、だいじょぶっす、と返しながらも目を擦る。それで、やっと視界が回復する。もしここに師匠がいれば、精進が足らないと怒られていたに違いない。

 それはそれとして、どうしても胸に引っかかってしまっていることを言葉にする。

「おっかしいなあ、さっきは確かに声が聞こえたから、これで何かしら見えてもおかしくないんすけど」

「声?」

「はあ。男の人の声で、『どうして、ここにいるんだ』って」

 怯えるような、責めるような。そんな声だったと思い出す。長谷川の手に触れた瞬間に流れ込んできた、アサノのものではない記憶。それが何を示しているのか、アサノにはわからなかったけれど。

 刹那。

「どうして……ここに……?」

 長谷川の顔色が、変わった。アサノは「どうしました?」と首を傾げる。けれど、長谷川にはアサノの声は届いていなかったのかもしれない。

「どうして、って……私、待っているから、ここに……でも、そうだ、何を待って……」

 両の手を握った長谷川は、目を見開いたまま小さく震えていた。明らかに様子がおかしい。アサノは長谷川の膝を叩いて大きな声で呼びかける。

「ハセガワさん? ハセガワさん、だいじょぶっすか?

 それで、やっと長谷川もアサノの存在を思い出したのだろう。目を激しく瞬きさせて、アサノに焦点を合わせる。

「え……あ、アサノ、さん」

「ごめんなさい、やなこと思い出させちまいましたか?」

「いいえ、そうではないんです。でも、何かを思い出せそうな気がして」

 長谷川の視線が、再び遠くへと投げかけられる。もちろん、窓の外を泳ぐ鯨のように、記憶がそこに泳いでいるわけではないだろう。それでも、長谷川は自分の中にない何かを探すかのごとく、じっと虚空を見つめていた。

 アサノは躊躇った末に、もう一度長谷川の膝を叩いて意識をこちら側に引き戻してから言った。

「でも、無理はよくねっすよ。ハセガワさん、ただでさえ怖い目にあって疲れてるんすから。お手伝いするって言い出したあたしが言うことじゃねっすけど、やっぱここはゆっくり休んだ方がいいっす」

 長谷川は、まだ納得が出来ないようだったが、アサノが「落ち着いたら、もう一度見てみますから」と付け加えたことで、やっと頷いてくれた。

 アサノもほっとして、肩の力を抜く。そこで、初めてアサノは背中がぐっしょりと汗で濡れていたことに気づいた。自分で思っていよりもずっと、意識を集中させていたらしい……それを自覚した途端、異様な疲労感が体に襲い掛かってきて、ベッドに上半身を投げ出してしまう。

 長谷川は驚きの声を上げて、それから恐る恐る声をかけてくる。

「アサノさんも、大丈夫ですか」

 別に、体に異常があるわけではない。ただ、純粋に、どっと疲れただけで。かろうじてひらひらと手を振って、声を絞り出す。

「はひ……でも、ちょっと、喉渇きました」

「あ、それじゃお茶淹れますね、ちょっと待っててください」

 すみません、と礼を言って、アサノはベッドの上に頭を預けたまま、キッチンに向かう長谷川を見送った。それから、ふと視線をベッドの上に戻せば、投げ出されたままになっている古い鏡が、赤い牡丹の咲く背面をさらしていた。

 

 

「……それが、何かおかしいんすよ」

 帰って来た小林に長谷川を任せ、一旦事務所に戻ってきたアサノはカステラをつまみながら言う。

 今日のバックグラウンド・ミュージックは秋谷がアサノに合わせてくれたのか、モーリス・ラヴェルの組曲『鏡』だ。軽快なリズムの、しかし不安を誘う音色を重ならせる「道化師の朝の歌」がなかなかに心地いい。

 ソファに深く腰掛けてアサノを見つめていた秋谷が、「何がおかしいんだい」とアサノの話を促す。アサノは慎重に言葉を選びながら、自分が長谷川の部屋で見てきたこと、聞いてきたことを語る。

 今日、ストーカーに襲われたらしいが、その時のことは全く覚えていないこと。

 一週間前にも全く同じようなことがあったこと。

 そして、五年前にも同じように恐ろしいことがあったけれど、その時の記憶を丸ごと喪失していること。

「どうも五年前に、何か大切なことも一緒に忘れっちまった、とか言ってました」

 随分都合のいい忘れ方ではありますよね、とアサノは付け加えてから、自分の意見は求められていなかったか、と首を横に振る。なるべく客観的に、自分の考えは交えずに。そう思ってはいるけれど、これもなかなかに難しい。

 秋谷はそんなアサノを薄い微笑みを湛えたまま見つめていたが、やがて口を開き猫のような声を立てる。

「初めて記憶を失ったのは五年前、ってことかな」

「話を聞く限りは」

 ふむ、と秋谷は腕を組み、少しばかり視線を虚空に投げかけて言った。

「実はこっちでも、五年前にハセガワ氏の周囲でとある事件があったことを掴んだ」

「事件……ですか?」

「そ、『交通事故未遂』」

 こうつうじこ、みすい。口の中で呟いてみて、アサノは首を傾げてしまう。

「何かすげえ言葉っすね、それ」

 意図して起こされた事件であるなら「未遂」という言葉もしっくり来るが、交通事故はあくまで突発的に起こる出来事であり、またその言葉が使われるのは「起こってしまった出来事」に対してであるはずだ。それを未遂と表現するのは、明らかにおかしい。

 もちろん秋谷もわざとそういう単語を選んだのだろう、アサノの反応に満足げな笑みを零しながら言った。

「客観的に見れば明らかに事故なんだ。ただ、ハセガワ氏の視点から見れば……仮に彼女が覚えていれば、の話だがね、それは『未遂』なんだろう」

「ええと……ええと?」

 何ともわかりづらい大仰な言い回しに、アサノはつい問い返してしまう。秋谷は「結論を急くのは悪い癖だよ」と笑いながらも、アサノにもわかるように言い直した。

「ハセガワ氏の故郷で、五年前、事故があったんだ。狭い道を走っていた車が、一人の女性を撥ねて逃げた。その被害者が、当時高校生だったハセガワ・コズエ氏だった」

「は? どゆことっすか?」

 そんなこと、長谷川は一言も言っていなかった。いや、覚えていないのか。だが、そんな事故に遭ったとすれば、怪我をしたという事実から、恐怖の原因が交通事故であったということまでは理解していておかしくない。病院のベッドの上にいた、ということは覚えていたのだから。

 しかし、秋谷は薄い唇の端を上げて続けた。

「……という風に見える現場状況だったんだよ。ハセガワ氏の荷物は散乱し、アスファルトには急ブレーキの跡。そして犯人はそのまま逃亡している。だが、当のハセガワ氏は、無傷で道の端に倒れていたんだ」

「無傷でって、怪我も汚れもなく、ってことすか」

「そういうことだね。不思議な事件だろう? 念のため病院に運ばれたハセガワ氏だったが、検査でも異常なし。唯一、その時起こったことだけは、恐怖のためか忘れてしまっていた、と聞いていたが」

 それが続いているのだとすれば、確かにアサノくんの言うとおり「都合のよい」記憶の欠落だ。

 秋谷はそう言って緑茶の入ったカップを手に取る。アサノもカステラで甘くなった口の中を、苦味の強い緑茶で整えてから言う。

「……そりゃあ、イミフな事件っすね」

「だが今はまだそれ以上のことはわからない。推測するにも材料が足らないからね。逃げた車が鍵になっていそうだけど」

「まだ、逃げた奴は掴まってないんすか?」

「実質被害者はゼロ、器物破損があったわけでもないからね。それ以降のことは警察側も掴んでいないみたいだ」

 むう、とアサノはむくれる。事情はわかったが、事情だけわかっても仕方ないのだ。結局のところ、これだけではストーカーの件や、長谷川が忘れてしまった「大切なこと」の手がかりにはならない。

 ただ、交通事故、といえば。

 初めて長谷川に出会った日、鏡に触れた時に見たイメージと、そっくりそのまま一致することに気づく。もしかすると、秋谷もアサノの見たイメージを元に長谷川についての調査を進めていたのかもしれないが。

 鏡。あの鏡は、もしかすると、事故の瞬間を見ていたのだろうか。アサノが『視る』のは何も人間の持つイメージだけではない。時にはモノに焼きついた強いイメージを共有することもあるから、可能性がないわけではない。

『鏡というのは常に正直なもの』

 不意に、秋谷の声が頭の中に蘇る。長谷川に会った時にあの鏡をもう一度見せてもらおう、そう心に決める。長谷川自身が忘れていることを仮に鏡が知っているのだとすれば、それは一つの手がかりになる可能性がある。

「その他に、アサノくんがハセガワ氏についてわかったことはあるのかい?」

「あー、あとは聞いた話じゃなくて、あたしがハセガワさんと一緒にいるときに『視た』ことなんで、正直どこまで正しいのかは怪しいんすが」

 秋谷は「構わないよ、どんなことでも聞かせてくれたまえ」と笑顔で話を促してくれる。聞き手である秋谷がそういう態度でいてくれるのは、アサノにとっては本当にありがたいことだ。喉の奥に引っ込みかけていた言葉を、改めて声として放つ。

「何か、黒い影が目の前に立っていて、男の人の声が聞こえました。確か『どうして、どうして、ここにいるんだ。どうして』って言ってて。焦ってるような、怯えてるような、そんな感じで」

「どうして……か。他には?」

「今日は何も。一度きちんと見せてもらおうとしたんすが、全然見えなくて。何も見えないなんて珍しいんすけどね」

 秋谷は顎に手を当て、アサノの話を聞いている。口元のニヤニヤとした笑いはそのままだが、これは秋谷の顔に常に張り付いているものであるため、アサノも気にせず続ける。

「ただ、男の人の声がしたって話をしたら、ハセガワさんの様子が変になっちまったんす」

「変……というのは、どういうことかな」

「何かを待ってるからここにいるのに、何を待ってるのか思い出せない、って震えてました。何か、思い出そうとしてたみたいっす」

 多分、思い出しかけたことが長谷川にとっての「大切なこと」かとは思うけれど……結局、小林に任せた時点で長谷川がそのことを思い出した様子はなかった。

「欠けた記憶、五年前の事件、大切なこと、ここにいる理由、何かを待っている……」

 秋谷はアサノから聞いた要素を、一つ一つ確かめるように言葉にして、しばし黙り込む。ピアノの音色だけが部屋の中に響いていたが、やがて秋谷はゆるゆると首を横に振って言った。

「ふむ……これでもまだ、考える材料が足らないと見るべきかな」

「流石にアキヤさんでもわからねっすか」

 秋谷が独特の思考の飛躍で真相を掴んできたことを知っているアサノは、解決が遠いと知って思わず肩を落とすが、秋谷は猫のように目を細めて笑う。

「物事というのは、いくつかの視点から見て初めて誰の目にも明らかな立体像を結ぶものさ。例えばアサノくん、君の得意分野は誰かの平面視点を借りて物事を見ることであって、事実の立体を把握する能力じゃない。私は物事の像を形作るのは人より得意かもしれないが、それでも平面図一枚では立体は作れない」

「つまり、ハセガワさん以外の視点から見ないと、アキヤさんでも真相はわからねえ、ってことすか」

「アサノくんは物分りがよくて助かるね」

 アサノは頭がよいとも言えないが、決して致命的な馬鹿ではない。秋谷の言葉が比喩と誇張に満ちていて、なおかつそれらを取っ払ってしまえば単純明快な真実ばかりであるということは、アサノも既に理解しているつもりだ。

「でも、ハセガワさん以外の視点っていうと……」

「それこそタナカ氏や、ハセガワ氏を追い回しているというストーカーとやらじゃないかな。この辺はまだ私でも掴みきれていない部分だしね」

 後者については、結局さっぱり尻尾をつかめていない。ただ、田中氏については……

「あ、そうだ。昨日、タナカさんとお喋りしたんでした」

 報告しなければ、と思っていたのだが、長谷川の件でどたばたしてすっかり忘れていた。正直、長谷川の部屋にいる間は全く田中のことなど頭に上らなかった。

 アサノの言葉は秋谷の興味を引くことに成功したのか、俄然目を輝かせてソファから身を乗り出す。

「へえ、タナカ氏が。アサノくんが誘ったのかい?」

「いいえ、タナカさんの方が誘ってきたんです。歪神に興味があるみたいでしたけど……アキヤさん、何かお話したんすか?」

「ああ。アサノくんが何を見ていたのか気になっていたみたいだからね。それと、タナカ氏には歪曲視の才能がありそうだよ」

「タナカさんに?」

 それは意外な言葉だった。歪曲視とは対極の位置にいるはずの異能府の代行者が歪曲視の才を持つことの意外さもさることながら、歪曲視を持たない秋谷がそれに気づいた、ということが何よりも驚きだった。

「かろうじて、アサノくんが連れていたものが『視え』てたみたいだからね」

「キツネさんが、っすか? そりゃあ珍しいっすね」

 ついつい、部屋の片隅で丸くなっている狐によく似た獣を見てしまう。副所長の相棒である白い獣は、鬱陶しげに顔を上げてアサノを睨んだあと、すぐにまた顔を毛の中に埋めてしまう。

「それで、タナカ氏は何をアサノくんに聞きたがっていたんだい?」

 ぱたんぱたんと動く大きな尻尾に見入ってしまっていたアサノは、我に返って秋谷に視線を戻す。

「ええと、幽霊は存在するのか、とか。ドッペルゲンガーを知ってるか、とか」

「……幽霊に、ドッペルゲンガー?」

「実のところ、あたしはそんなに詳しくねえんで、後でコバヤシさんにでも聞こうと思ってたんすけど」

 結局、長谷川のことを優先していてすっかり忘れていたのであった。

「どうして、タナカ氏がそれを知りたがったのかは、聞いたのかな?」

「聞いてみましたけど、『わからない』って言われちゃいました」

「だろうね」

 ――『だろうね』?

 まるで、田中の意図がわかっているかのような言葉に、アサノは口をぽっかりと開けてしまう。だが、秋谷はそんなアサノの反応にも構わず、ふむふむと頷きながら言葉を続ける。

「きっと、タナカ氏は本当に何もわからないんだろうね。思ったよりずっと単純な動機だったということかな」

「その、アキヤさん、もしかして、タナカさんがどうしてハセガワさんについて知りたがってるか、わかったんすか」

「いや、確信に至るには、タナカ氏についてもう少し調べてみる必要がある。あと、タナカ氏側から見てもストーカーについてはわからずじまい、か」

 そう、そうなのだ。一番の問題についてはまだ何も解決していない。田中のことは秋谷に任せればいいが、長谷川の身の無事に関してはそうはいかない。結局のところ、最終的にはアサノと小林で解決しなければならないことなのだ。

 アサノはうー、と唸って頭を抱えてしまう。このままストーカーから長谷川を付きっ切りで守っていても、ストーカーの脅威が取り除かれるわけではない。ストーカーの脅威が取り除かれない限り、長谷川の心の平穏は守られない。

 事件の解決は、まだ、遥かに遠い。

「ストーカーの尻尾さえ掴めりゃ、コバヤシさんもいることですし、絶対にすぱっと解決できるのに……」

「限りなく乱暴で無責任な言い方をすれば、ハセガワ氏さえ許せば早期解決も不可能じゃないと思うけどねえ」

 秋谷はしれっとした口調で言った。アサノは首を傾げて、それから何となく秋谷の言わんとしていることを理解してしまって、思わず眉根を寄せる。

「……あー、何かすごい嫌な予感しますけど」

「多分その予感で正しいよ」

 それは、とても簡単な方法だ。手っ取り早い、という点では最も有効な方法でもある。ただし。

「危険ですし、コバヤシさんが絶対許さない、気が」

「だよねえ。ま、参考までにってことさ」

 参考までに。

 まあ、相談するだけならばタダかもしれない……とは、思う。小林の反応を想像すると、少々恐ろしくはあったけれど。

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