園田雄一郎③
――二度目のオフ会が開催されることになった。
それまで貴史は毎日予知夢を見続けていた。
雄一郎は貴史の予知夢が本物であると、納得せざるを得なくなっていた。
二回目のオフ会当日、雄一郎は、欠席のメッセージを全員に送信した。
死を目前にした老人が参加することは、他のメンバーに気を遣わせることになるのではないかと思い、憚られたのだ。
直接参加はしないものの、雄一郎は、集まったメンバーの後をつけて様子を見ることにした。
(私は何をやっているんだろうな)
メンバーを遠目から観察する自分の姿に、雄一郎は苦笑した。
雄一郎の存在に気づくことなく、メンバーはファミレスに移動し、話を始めた。
一見、普通の若者らしい行動だ。
しかし、よく観察してみると少し不自然なところが見えてくる。
友香は会話にほとんど入ることなく、ずっと俯いているし、菜穂美は明らかに無理して前のめりになって話している。貴史はこの話題を聞かれたくないのか、異常に周りを気にしてはコソコソしている。唯一、普通に見える聡が逆にこの集団の中では一番浮いていた。
しかし、本人達はそれなりに楽しんでいるようだ。
メンバーの様子を観察していた雄一郎は、一人満足げに頷いた。
メンバーの元気な姿を見るのが、自分でも不思議なくらいに嬉しい。
オフ会が終わり、メンバー達が帰路に向かう中、友香がふとこちらを気づいた。
そして、そのままじっと雄一郎を見つめている。
以前会ったのはもう二年も前だ。
見つかったとしてももう覚えていないと思っていたのだが。
(バレたか……?)
友香は何も言うことなく、会釈してその場を去って行った――。
――メンバーは、日に日に活動的になってきていた。
口ばかりで何も活動できなかった今までと比べ、それは大きな変化だった。
それと比例するかのように、雄一郎の体調は日増しに悪くなっていた。
外出することもできなくなり、床に伏せる時間が増えた。
雄一郎にとってWINKのチャットだけが、唯一の楽しみになった。
幸いなことにオフ会に一度も参加していない雄一郎を、メンバーは見捨てることなく接してくれた。
オフ会の度に、どんなことがあったのか丁寧に報告してくれる。
三度目のオフ会では、雄一郎も驚く意外な展開となった。
会社を立ち上げることが決まったのだ。
(これが、この子らを集めた結果か……)
問題を抱えているメンバーにとって、それは大きな決断になることだろう。
身体が動かない雄一郎はクジの購入などはしていなかったが、その決断に敬意を表し、1000万円を融資することにした――。
――会社は順調に動き出した。
既にほとんど動けなくなっていた雄一郎は、野田を使って何度か会社の様子を探らせていた。
会社の様子を聞くことが雄一郎の楽しみとなった。
会社を大きくするために、がむしゃらに働いていたあの頃。
目を瞑るとメンバーが活気良く働いている姿が想像できる。
いつしか雄一郎は自分の若かりし頃と、メンバーを重ね合わせていた。
問題がある人間ばかりだと思っていたメンバーは、貴史の予知夢だけに頼ることなく、それぞれが得意な分野で実力を発揮しはじめた。
聡はリーダーシップと行動力、菜穂美は直感の鋭さと事務処理能力、友香は豊富なアイデアと物怖じしない精神力。
貴史だけが能力を持っていたわけではなかったのだ。
「ご主人様は、人の隠れた能力を見抜く目をお持ちになられたのでしょう」
会社の様子を報告した後、最後に野田はそう付け加えた――。




