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夢現  作者: 猫芽ヒカル
18/34

向井聡⑤

 昼食をコンビニ弁当で済ませ、しばらく昼寝しているといつの間にか二時十分を過ぎていた。

聡は慌ててインターネットで@7の当選番号を確認する。


(一等……8439651……。)


手元の抽選券と一つずつ見比べる。数字はピタリと一致していた。


「うおお……。」


あまりの喜びに呻きに似た声が漏れる。


(本当に当たってる!でもこれから、えっと、どうすればいいんだ? とにかく、メンバーに報告してみようか?)


 頭が混乱している。

ひとまず、WINKにログインしてみることにした。

貴史と菜穂美、そして友香がチャットを始めていた。


 SATO_00:こんにちは、当たってたね!

 NAMI_1212:サトーさん、ハロー!やったね!

 TAKA_302:おう、サトーさん! 当たったな。

 PapaPopo:はしゃぐな! バカヤロー共!

 SATO_00:正直、俺今どうしていいか、混乱中。

 NAMI_1212:まずは銀行に行って換金かな? 合ってる?

 TAKA_302:た、たぶん……。

 PapaPopo:いい大人が馬鹿ばっかりかよ!

 SATO_00:1000万もどうしましょうね……

 TAKA_302:現実感がないな。

 NAMI_1212:とりあえず、預金かな……

 SATO_00:そうですね……


 どうやら他のメンバーも混乱しているのは一緒のようだ。


 TAKA_302:こういう時にマスターさんがいると心強いんだけどな~。

 PapaPopo:役に立たない大人がここに3人ほどいます!

 NAMI_1212:マスターさんも、もちろん買ってるよね?

 SATO_00:そうだと思いますけど

 TAKA_302:とりあえず、マスターさんが揃ってから今後のことは考えよう。

 NAMI_1212:そうね、とりあえず換金してくるわ

 SATO_00:俺もナミさんと少し時間ずらして行ってきます

 TAKA_302:じゃあ、また夜に。

 PapaPopo:来なくていいって言ってんだろ!


 それからしばらく後、聡は銀行に換金に来ていた。

銀行の応接室に案内された聡の目の前には、現金一千万分の札束が積まれていた。


「こちらが当選金になります」


銀行の中でも上級の役職らしき男性が、ニコニコ愛想笑いを浮かべて話しかけてきた。

目の前にあってもこれが自分の持ち物だという実感が湧かない。


「当選金はどうなさいますか?」


男性が笑顔を崩さず尋ねてくる。


「と、とりあえず、ここに預金しといてもらえますか」

「ありがとうございます。それでしたらこちらに印鑑を」


手続きが終わると、男性は聡に向かって深々とお辞儀した。


「今後とも当行を御贔屓にお願いします」


なんとなく聡も釣られて頭を下げた。


 銀行を出た聡は、慣れない緊張感から解放されて、肩を回した。

人にペコペコされるのは初めての経験だった。


(他のメンバーもそうだろうけどな)


他のメンバーが神妙に当選金を受け取っている姿を想像して、聡は一人ニヤけた。



 TAKA_302:さて、今回のミッションは大成功に終わったわけだけど、

 TAKA_302:この後はどうしようか?

 NAMI_1212:来週もまたやる?

 SATO_00:どうしましょうかね、あんまりやると怪しまれそうな気もしますけど

 PapaPopo:お巡りさん! コイツラです!

 MASTER_Q:パパさん、別に悪いことした訳じゃないんだよ。


 その夜、全員が集まったチャットでは今日の事、そして今後の事が話し合われていた。


 SATO_00:別に悪いことをしている訳ではないけど、どこか罪悪感ありますよね

 TAKA_302:そうだな。別にお金が欲しい訳じゃ……欲しいか。

 NAMI_1212:親に仕送りもらうよか、ましだよね

 PapaPopo:脛かじり息子! 親不孝者!

 TAKA_302:ぐぬぬ……。

 MASTER_Q:皆さんは、この予知夢をどんなことに使いたいんだい?

 NAMI_1212:そりゃあ何か役に立つことに使いたいよねー

 PapaPopo:ナミ当たり前のこと言ってんじゃねー!バカ!

 MASTER_Q:自分の役に立つことかい? それとも人の役に立つことかい?

 TAKA_302:そりゃ、自分もハッピーで人の役に立つことが一番いいよな。

 SATO_00:そんな使い方ってありますか?

 NAMI_1212:うーん、すぐには思いつかないね

 TAKA_302:全然わかんね。

 MASTER_Q:またオフ会で決めるかい?

 PapaPopo:またオフ会かよ!ありえねー!

 NAMI_1212:賛成! 今度はちゃんとマスターさんも来てね!

 TAKA_302:そうだね、毎週集まってもらって悪いけど。

 MASTER_Q:今度はなるべく行きたいね。

 SATO_00:タカさんだけの為じゃないですよ。みんなも楽しんでますから

 PapaPopo:全然楽しくねーぞ! オフ会はんたーい!

 NAMI_1212:それじゃそれまでに各自色々考えてくること!でいいかな?

 SATO_00:了解です

 TAKA_00:OK!

 MASTER_Q:分かったよ。

 PapaPopo:無視するなー! 反対だって言ってるだろー!


 こうして第三回のオフ会が決定した。

メンバーは次回までに各自新たな予知夢の活用法を考えることになった。

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