道程
式典へ参加する為のドレスは、甘いエクリュベージュの地に金の紗が重なってきらきらと光るものを選んだ。
私の蜜色の髪と琥珀の瞳が映えるように、計算され尽くした絶妙な色合い。大胆に開いた胸元にはアクセントになるよう豪奢な細工のエメラルドの首飾りを着ける。
未婚の乙女だった頃には着られなかったような、大人びたデザインだった。
アベルが絶賛してくれたドレスを抱えて出発した馬車の旅は、お伴のマルセルのお陰で随分楽しいものになった。移り変わる景色を眺めながら娘らしいお喋りをし、経由する村々で名物を御馳走されるだけの快適な旅だ。
が、王宮に到着してからは、久しぶりの故郷を懐かしむ間もなくハードスケジュールをこなさねばならなかった。
まず、実家が用意してくれた部屋でこれ以上ないという程丹念に旅の垢を落された。それから両親に堅苦しい挨拶をし、兄嫁の御機嫌伺いをし、近況を聞きに来る暇な貴族の相手をし――。
マルセルは周囲の煌びやかさと私の実家の侍女たちの気迫に慄き珍しく口数が少なくなっていたが、私も似たようなものだった。数ヶ月とはいえすっかり長閑な田舎暮らしが身についていたらしい。
疲労困憊の状態で成すがままに磨き上げられているうちに、いつのまにか式典の日がやってきていた。