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+6話「CBXの鼓動は愛」

………………


焼野原九乃助は思う。

思えば、子供の頃言われた父の一言を、いつまで引いているのはどうかと…。

そんなんだから、いつまでも十代の子供と変わらないのだろうか。

ふと、彼の脳裏に高校時代のことが思い出される。


脳裏に映し出された場所は地元に居た頃、よく喧嘩に負けた時に気晴らしにタバコを吸いに来た川原だ。

タバコを吸う焼野原少年は、川原の草むらを眺めていると、ある物を発見した。

「ん…」

そこへ、タバコを咥えながら近づいて見ると、ボロボロになったバイクが捨てられていた。

かなりの年代物のようだ。

まだ動くのかなと思い、彼はバイクを立て直して引っ張っていく。

バイクに興味ない九乃助少年は、このバイクの名が解らなかった。

とりあえず、近くのバイクに持って行った。

店主の話によると、『CBX400F』というバイクだ。

このバイクは、暴走族関係に人気の車両で、このバイクの奪い合いが起きるほどの代物。

しかし、九乃助が拾ったCBXは、もはや、そんな奪い合いが起きるほどの価値が見当たらないほどにボロボロだ。

だが、九乃助は気に入ったのか、このバイクの修理を頼んだ。

エンジンは生きているようだったので、まともに走らせるまでに年月はかかったが、このCBXは復活した。

バイクが復活すると、九乃助は跨って走らせる。

免許はないが、夢中になって、毎日バイクを走らせた。

バイクで見る景色と、風が顔に当たると、この上なく気持ちが良かった。

クリスマスの日も、彼はバイクを走りまわした。

その時、彼は地元の峠の山頂に着く。

すると、この高さから自分の住む街の景色が見えた。

夜だったせいもあり、街の光は美しく輝き、九乃助少年の心を感動させた。


そんな過去の出来事の夢を、九乃助は熱にうなされながら見た。

すると、同時に彼の頭に、とある考えが浮かんだ…。


………………


レビンとキエラが、市街の病院へと足を運んだ。

理由は、九乃助、豪の見舞いだ。

昨日、九乃助、インプレッサの運転席で生死を彷徨っていた豪が、過労と高熱の風邪で倒れたので救急車を呼んで病院に入院させた。

医者もどうしていいか解らないほど、大変だったようだ。

おかげで、もうクリスマスイブどころではなかった。

そのことを、キエラは愚痴る。

「ああー、クリスマスパーティでもやろうと思ってたのに…。なんで、あのバカ二人のせいで…」

「とりあえず、無事で良かったじゃん」

そう、レビンは言う。

だが、未だに彼女の心には、九乃助が勢いで叫んだ『お前なんか、嫌いや!!』との言葉が残っている。

だから、複雑な表情だ。

そんな感じで、二人は病院へと入る。

このまま、九乃助の居る病棟へと向かって行った。


………………


「…」

「…」

病室に着いたレビン、キエラの表情が凍った。

看護婦、医者も困り果てた表情をした。

何故なら、九乃助の病室のベッドには、九乃助本人ではなく1/12スケールのプラモデル「ガ○ダム(1メートル50センチ)」が置かれていた。

ガ○ダムが雄雄しく、九乃助のベッドで眠っている。

「九乃助さんが、連邦の白い奴に…」

と、レビンは言う。

キエラは顔が固まる。

そして、医者が言う。

「高熱で倒れた焼野原さんが、失踪しました…」


………………


失踪した九乃助を探しに、二人は病院から出て行った。

「あのバカ、どこ行きやがった!!」

これを置かれると困る…との医者の言葉でガ○ダムを背負いながら、キエラは怒り叫ぶ。

ちなみに、これはとても重いので、背負ってアパートまでの住宅路を歩くのは苦痛でしかない。

重さの数だけ、キエラの怒りを増させる。

「どこ行ったんだろう…」

レビンは、そう言った。

九乃助は昨日、なにしに自分の部屋に来たのだろうか…。

こうのような考えが、彼女の頭に浮かぶ。

「重いよ、これ!!どうせだったら、動くプラモ置けよ!!」

キエラは額に、血管を浮かせる。

すると…。


ブォン!!ブォン!!!


大きなマフラー音が響いた。

その音が、二人の耳に入る。

イライラしてるキエラには、うるさく感じた。

そして、二人は音の方に首を向けると…。


「よぉ…」


二人は驚いた。

振り向くと、病室から抜け出した九乃助がバイクに跨っている。

「九乃助さん!」

いきなりの九乃助の登場で、レビンは驚く。

キエラは、九乃助の出現の怒りで血管を浮かせる。

彼女の背中のガ○ダムが、微妙に目が光ったぽい感じになった。

バイクは、九乃助の高校時代修復させたCBXだ。

そのバイクを病院から抜け出して持ってきてまで、二人の目の前に出現した。

「ふざけんな!お前!!このガ○ダムなんだ、バカヤロウ!!!」

キエラは背中のガンダムを背負いつつ、キレ叫ぶ。

そんなキエラを無視して、九乃助はレビンの顔に目を向ける。

レビンは、九乃助から目を逸らす。

すると…。

「ちょっと、乗れや…」

九乃助が、首を動かしてバイクに乗るようにレビンに指示する。

その一方で、キエラは叫んでいる。

だが、彼の耳のは入っていない。

レビンは指示されたように、九乃助のバイクに近寄る。

そして、バイクのリアシートに跨った。

彼女が乗ると、九乃助は、このままエンジンを始動せる。

あくまで、キエラを無視して。

「おい!こら!!無視すな!!」

CBXは、キエラを無視したまま、九乃助、レビンを乗せ動き始めた。


………………


九乃助は走り出したCBXに彼女を乗せ、ただ黙って、バイクを飛ばしていた。

レビンも同じく、黙って九乃助にしがみついている。

街中から、景色がずっと流れている。

景色は流れ続け、周囲は建物から森林に囲まれるまでになった。

そのせいか、空気がとても澄んでいる。

周りに居た車の数々は、いつのまに減っていく。

ついには、車は見えなくなった。

すると、景色も森林地帯から峠道路へと変化した。

太陽も、いつのまにか沈み暗くなった。

それでも、九乃助は黙り込んで走り続ける。

レビンも黙り込む…。


しばらくして…。

ついに、バイクが止まった。

すると、レビンは絶句した。

「綺麗…」

バイクに跨る彼女の目に映ったのは、峠の山頂の高さから見える自分達の住む街の灯火だ。

キラキラと景色は光っている。

その美しい街の光に、彼女は言葉を失う。

この景色は、高校時代に九乃助が発見した街の光だ。

九乃助は、これをレビンに見せたかった。

だから、病院を抜け出してバイクを駆け続けた。

これは九乃助なりの罪滅ぼしと、精一杯の彼女へのクリスマスプレゼントだ。

レビンは、ただ街の景色に見惚れる。

そして、九乃助の気持ちが理解できたのか涙が零れた。

「クリスマスも、悪くねぇな…」

九乃助は、彼女から顔を離して言う。

実言うと、彼は照れている。

我ながら、臭い真似をしたな…と思うからだ。

だから、顔を逸らした。

「九乃助さん…、あの…」

彼女は、なにかを言おうとする。

今まで、ずっと謝りたかったからだ。

すると…。

「ごめんと言うなよ…。お前のごめんなさいは聞き飽きた」

そう九乃助は、彼女に言う。

すると、更に彼女の目から涙が溢れた。

「ありがとう…」

そう言って、彼女は手で自分の目を拭う。

彼女を見て、九乃助は微笑む。

すると…。

「うっ…」

九乃助が、急にふらついた。

「九乃助さん!!」

レビンが驚く。

九乃助の体に異変が起きた。

急に悪寒、吐き気、頭痛が強烈になってきた。

鼻水も流れてくる。

これは、先日からの風邪の症状だ。

今まで、よほど夢中だったのか、風邪の症状は麻痺してたのに、今頃になり緊張が解けたせいか、また高熱に襲われた。

「レビン、医者を呼ん…」

そう言いながら、九乃助はふらつく。

すると…。


バタッ!


このまま、九乃助の意識は消えた。

レビンは、倒れた九乃助の元に駆けつけ叫んだ。

「九乃助さん!!目を覚まして!!ここ圏外!!!白目向かないでよ!!!」

そう彼女は、必死に叫んだ。

だが、いくら叫んでも、九乃助が目を覚ましたは、ちかくを通りがかった人に呼んでもらったレスキュー隊が来るまでなかった。

このレスキュー隊が来るまでの1時間について、レビンは『とても、地獄でした。本当に、地獄でした。地獄ってレベルじゃありません』と彼女は答えた。


そして、後日に病院に運ばれた九乃助の首には、レビンが編んだマフラーが巻かれていた。

このマフラーはひどい出来ではあったが、九乃助曰く『地獄の中の天国』と答えた。

こうして、二人のすれ違いから起きたクリスマスの事件は、これにて終焉となる。

一番迷惑したのは、ガ○ダム背負わされ、クリスマスパーティ出来なかったキエラと、誰も見舞いに来なかった篤元豪だと言うのは言うまでもない。

篤元豪は、こう語る。


『メイドも良いけど、ナースもたまりませんな』


………………


6日連続の時事連載となった本作を読んで頂き、ありがとうございました。

ただ6日連続だったということで、多少、作品の出来が荒く、誤字、脱字がありましたら、本当に申し訳ございません…。

本家の復活は先ですが、この作品のご愛顧よろしくお願いします…。

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