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37.いざ、魔王城へ


 エスポワールは魔王城へ向けて飛行を続けている。


「コウっ!あそこ見て欲しいのよ!

 普通に街で人間が暮らしてるのよ!」


 ミズナは地上を指差している。


「本当だ……。

 こんなの、俺が魔界にいた頃も知らなかったぞ……!

 とにかく、魔王が何を隠してるのか問いただしてやらねぇと……」

 

 それを聞いたアリエッテが思い出したかのように提案する。


「あっ、コウさん!また魔王さまに嘘情報は流さなくていいんで〜すか?」

 

「いや、ここまで来たらもう小細工はいらないな。

 魔王には今から会いに行くと伝えてくれ。」


「わっかりま〜した! 流石コウさんですっ!」


 一回嘘の情報を流してるから次は信じてくれるか分からないが……。

 

 ◇


 しばらく飛行を続けると、魔王城が見えてきた。


「みんな、あれが俺たちの目的地、魔王城だ」


「す、すっごい大きいのよ……!」


「おい、相棒。あの奥のデッカい四角い建物はなんだ?

 同じようなのが何個も建ってるぞ?」


「あれは千年前から稼働してる原子力発電所さ。

 当時は度々事故が起きて周辺地域を放射性物質で汚染してたんだ」


「なんだよそれっ!危険じゃねぇか!

 でもよぉ、エスポワールだって動力は原子力だろ?」


「おそらく今は当たり前のように安全に核エネルギーを使う技術が確立されたんだろうな」


「コウさんっ!魔王さまから返信きたで〜す!

 エスポワールは中庭に着陸させていいそうですよ!

 歓迎するって言ってるで〜す!」


「そうか、意外な返答だな……。

 魔王も俺たちと話し合う気があるって事か……」

 


 俺はエスポワールを減速させ、魔王の指示通りの場所に着陸させ、外に降りた。

 すると、城の中から魔王自らが迎えに出てきた。


「アリエッテまで仲間につけるなんて、流石は人間の能力の継承者だよ、コウ君」


「魔王ってやっぱり……マオ君、なんだよな?

 追放前に俺に久しぶりって言ってた意味が、今なら分かるぜ」


「ああ、小学生ぶりだね。コウ君。

 人間だった頃の記憶を思い出せたのなら、私のプラン通りに事態が進行してると捉えさせてもらうよ。

 さあ、ここじゃ寒いから私の部屋で話すとしよう」

 

 マオ君はそう言って俺たちを部屋まで案内した。

 昼間の城の中を見るのは初めてだが、何というか禍々しいオーラを放っている。

 


 ガコンッ、キィーー。


「うん。ここが私の部屋だ。

 人数分のお茶は用意してある。六人の勇者たちよ、遠慮なく座ってくれ。

 コウ君とは、ここで話すのは追放の時以来だね」


 俺たちは円卓に腰をかけた。

 出された温かい緑茶はミスマッチな気がするが……。


「ああ。まさかこんな形で再びここに来るとはな……。

 俺は最初は殴り込みに来るつもりだったんだぜ?」


「無理もないさ。あんな仕打ちを受けたんだからね。

 でも流石はコウ君だよ。

 最終的には対話を望んでくれたんだ」


「そりゃどうも。 んじゃ、単刀直入に聞くぜ?

 マオ君のプランってのが何なのか教えてくれ」


「うん。最初からそのつもりさ。

 でも、その質問に答えるには少し私の昔話に付き合ってもらわなきゃいけないんだが、いいかな?」


「ああ、聞かせてくれ。

 マオ君はどうしてコールドスリープされたんだ……?」


 マオ君は目を瞑って、緑茶を啜ってから語り出した。


「私には妹がいたんだ。

 コウ君は一度会った事があったかな……?」


「確か、マオ君が転校してきた日の帰りに迎えにきてたよな」


「ああ、そうだ。

 その妹が社会人になって二年目の夏、過労で自らこの世を去ったんだ……。

 生前、上司からハラスメントを受けていると私に相談してくれてたのだが、私は何もしてやれなかった」


「そうだったのか……」

 

「無力感から私も妹の所へ逝きたいと思うようになった。

 だが、何度自分で死のうと思ってもできなかった!怖かったんだ……、当たり前だ、人を殺した事もないのに自分を殺すんだ、怖いに決まってる。

 普通の人間にそんな事はできない。だが、妹はそれをやったんだ!それ程までに絶望していたんだよ!」


 マオ君の目からは大粒の涙が溢れた。


「……だから私は誰かに殺して欲しかったんだ!

 その時に思いついたんだよ……。

 死刑になれば殺してもらえるじゃないか……!って。」


 自分で死ぬ勇気が持てないからって他人に迷惑をかけるのかよ! ……そう言いたかったが、妹を思うマオ君の気持ちを考えるとそんな事は言えなかった……。

 

「私は妹の無念を晴らすために妹の会社に行き、のうのうと生きているその上司を含む数名を殺して死刑を望んだ。

 だが、判決は無期懲役。

 こんな残酷な事ってあるのか……」


 俺たちは黙ってマオ君の話を聞くしかなかった。


「しばらく刑務所生活が続いたある日、私は目隠しをされて怪しげな研究室に移送されたんだ。

 そこで何をされるか、君たちは知っているだろう?

 そう、私はそこの女性に注射を打たれ、コールドスリープされたんだ。

 まさか、コウ君のお母さまとは思わなかったがな」


 マオ君はそう言いながら、母さんの方を見た。


「私も覚えているわ。

 魔王、アナタが二体目の被験者よ……」


「やはり、私は間違っていなかったんだな。

 そして私が目を覚ましたのは、今から五十年ほど前だ。

 しばらくは記憶が混濁していて訳もわからず放浪していたのだが、そこで見かけたのは知能の衰えた人間だった。

 

 そこで私はやるべき事を思いついた。

 人類全体の革新のためにも、間引きを行おうと……。


 もちろんこのような非人道的な行為は優生学と言って、19世紀末から20世紀半ばにかけて日本やヨーロッパで広まった禁忌の学問だ。


 間引きの方法としては、一ヶ月でジャポルネ語を習得できなかった者を手下に襲わせたんだ。

 来たるべき時のために、人類全体の意思疎通を目的とした言語の統一は必要だったんだ」


「マオ君、来たるべき時ってなんだよ……?」


「私は元々は宇宙分野の仕事をしていて、イノベーションに人生を捧げようとした男だ。

 

 そこで立てた予測はこうだ。

 人類は近い将来、地球外知的生命体と接触する。


 これこそが私の考える、来るべき時だ」


「それがマオ君のプランって事か……。

 待てよ。じゃあ、今ジャポルネで暮らしてる人間はなんなんだ?」


「彼らは元からジャポルネ語を話す人間だ。

 間引きの対象外となった彼らは、時間をかけて選別している最中だ。

 独自の基準で評価をつけ、評価の低い者を拉致して食用にしているんだ。

 人間の肉を喰らいたいという魔族は多いしな……」


「なんでそんな手間をかけるんだ?

 もちろん本当はいけない事だが、マオ君らしくないというか……」


「さあな……、私にも分からないんだ。

 ただ、私のように身近な人を突如失う辛さを分からせたくて……やっているだけかもしれない……」


「そうか……。

 それと、わざわざ古い国号の日本って言ってるのは何か理由があるのか?」


「それについては、私の個人的な思い入れ……かな。

 日本という呼び名に戻したのは深い意味はないんだ。

 実は、妹は小さい頃から世界史が好きで、特に古い国名を覚えるのが好きだったんだ。

 それを思い出しただけさ……」

 

「あぁ、少しずつ分かってきたぜ……。

 聞きたい事は次で最後だ。

 トップから聞いたんだが、俺がプランの最重要ピースってのはどういう事なんだ?」


「そうだったね。

 そこがコウ君にとっては一番大事かもしれない。

 私がコウ君に頼みたい事は二つある。


 一つ目は、来たるべき時のために、コウ君が地球大統領に就任し、テレパシーで地球人の総意をまとめて地球外知的生命体と対話して欲しいんだ。

 

 ちなみに、私は五十年以上この姿である通り、魔族となった者は老化しないらしい。

 永い時を生き続けられ、テレパシーも使えるコウ君が適任だと私は考えたのだ」

 

「なぁんか随分と勝手な話じゃないか。

 まあ、文句は後で言うとして、二つ目はなんだ?」


「二つ目は、私のプランの終着点に関してだ……。

 それは千年前から変わっていない。

 妹のところへ逝くこと。

 

 どうだい?コウ君。

 私の今までの話を聞いて、私を悪だと思っただろう?

 私は多くの命を奪ってきた。

 だが私はやはり弱い。

 千年経っても自分で自分を殺す勇気は持てなかった……。

 

 さあ、この大罪人を断罪してくれ。

 全力で殺しにかかって来い!

 これが私のプランの終着点だ……!」

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