36.戦闘の後は混浴露天風呂⁉︎
「なんだよヒルク。話って」
そう聞き返すと、俺は前屈みのヒルクに肩を抱き寄せられ、エスポワールの裏に連れ去られた。
「それがよぉ、相棒。 お願いがあるんだなぁ〜。
さっきの戦闘でチョウの魔族の変な粉を吸っちまってからよ、……アレがギンギンなんだ……!
ちょっと手ぇ貸してくれっ!」
「やっ、やめろっての!
そんなトコ、自分でマッサージしろよっ!
暗いから誰にもバレねえって!」
……その後の出来事は、俺とヒルクの男同士ヒミツという事にしておこう……。
俺がヒルクと仲良く戻ると、ミズナはエスポワールの調子をみてくれていたようだ。
「んー、やっぱりエスポワールは動きそうにないのよ……。
魔王城までは歩いて行ける距離でもないし、自動修復を待つしかないのよ……」
「んまぁでも、俺らに急ぐ理由はなくなったんだろ? 相棒」
「あぁ、魔王がトップたちに倒される心配はなくなったし、このまま一晩寝るか。
悪いが、俺はもう限界だ……」
俺はそれだけ言い残し、目を閉じた。
◇
そして目を開くと、一瞬で外は明るくなっていた。
きっと夢とかは一切見ずに泥のように眠っていたのだろう。
「あっ!コウ起きたみたいなのよ!
おっはよ〜!」
最初に気づいたのはミズナだった。
「おはようミズナ。
俺、どんくらい寝てたんだ……?」
「そうねぇ、二十時間くらいは寝てたのよ!
でもスヤスヤ気持ち良さそうだったし、起こさないで待ってたのよ!」
「てことは今は夕方かよ!
なぁんか一日無駄にした気分だぜ。
てか、ヒルクの身体から湯気出てないか⁉︎」
「お、やっぱ俺のことばっかり見るんだな?相棒」
「そういうわけじゃねえっての!
で、どうしたんだよそれ?」
「それがよぉ、周囲の警戒に行ったら温泉があったから、ゆっくり浸かっちまったぜ!
相棒も行く元気あるなら、行ってみ?」
俺はヒルクに詳しい場所を聞き、温泉に向かった。
◇
「おっ!あの湯気が立ち込めてる所だな!
硫黄のいい香りもしてきたぜ」
俺はその辺に服を脱ぎ捨て、温泉にダイブした。
ドッポーンッ!
「沁みるなぁ……、特に手の指先が!なんてな」
一人で冗談を言っていると、森の奥からミズナの声が聞こえてきた。
「コウ!き、聞こえる〜?
みんなが、コウ一人じゃ心配だからついてけって言うから……来ちゃったのよ」
「その声、ミズナか?
俺はもう元気だし、心配いらねーよ」
「い、今行くから、ちょっと待ってて欲しいのよ!」
……え?
まさか、混浴ってコトか……?
返事をする間もなく、ミズナが服を脱ぐ音が聞こえる。
ちゃぽ……ちゃぽ……。
その水音の方向を見ると、湯気の向こうから華奢な身体が現れた。
艶やかな淡い色の髪を無造作にまとめ、湯気で火照った白い肌はほんのりと赤らんでいた。
「ちょっ!ミズナ!
俺は入っていいなんて言ってないぞ……!」
俺はそう言って、ミズナに背を向けた。
「コウ、恥ずかしがってるの〜?
やっぱり可愛いのよっ!エヘヘへ!」
ミズナは両手でお湯をすくい、俺の背中にパシャっとお湯をかけた。
「やめろってのっ!ハハハ!」
自然と笑みが溢れた。
確か、ミズナと初めて会った時もこんなやりとりしたっけな。
振り返ると、白濁したお湯の中にたたずむミズナ肢体が目に映った。
水滴が滑らかな肩のラインを伝い、谷間へと吸い込まれていった。
本当に、綺麗で可愛い女性だ……。
「エヘヘへ、ありがとっ!
そんな風に思ってくれてるんだっ。」
しまった……!つい癖で目を見てしまった……!
俺は恥ずかしくなって急いで話を逸らす。
「ふ、冬の露天風呂って、なんでこんなに気持ちいいんだろうな〜?」
ちゃぷん……。
その時、俺とミズナ以外の誰かがお湯に入る音が聞こえた。
俺はすぐさまミズナの手を握った。
「ミズナ……、安心しろ。
この手は離すなよ……!」
ゆっくりと温泉の中を進むと、そこにいたのは人間のおばちゃんだった。
に……、人間⁉︎
それに、あの黒い髪はジャポルネ人じゃないか。
おばちゃんは俺に気がつくと、激しい剣幕で威嚇してきた。
「この青鬼め!その子を解放しな!
人さらいをするなら代わりに私をさらいなっ!」
「ちょっと待て、何を言ってるんだ?
俺はそんな事しないって!」
「お前ら青い肌の鬼は、人間をさらうんだろ?
私の息子は二十歳の時にやられたんだ……!
返してくれっ!私の可愛い子供をっ!」
事態を察したミズナが、おばちゃんに語りかける。
「おばちゃん、アタシたちは仲間なのよ!」
「仲間? アンタ、この青鬼に騙されてるよ!
コイツらは人間を食っちまう化け物だよ!」
「アタシたちは世界に平和を取り戻すためにここに来たのよ!
それに、人攫いってどういう事か教えて欲しいのよ」
おばちゃんは真剣なミズナの表情に納得し、語り始める。
「この日本ではね、私が産まれた頃から青鬼が現れて無差別に人間を連れ去っちまうんだ。
私たちは毎日それに怯えながら生活してるんだよ」
「ちょっと待て、日本国ってのはジャポルネ共和国の古い国号だぞ……。
何で未だにそんな呼び方をしてるんだ?」
「青鬼が現れてからは、また日本に戻ったらしいよ。
呼び方なんて、私は気にしないけどねぇ」
……なるほどな。
理由は不明だが、魔王は昔の世界に戻そうとしているのかもしれない。
そして、魔界には実は人間も暮らしていて、魔族が拉致行為を繰り返してるってのか……。
魔王のプランや信念と何か関係がありそうだな……。
「信じてくれてありがとうな。おばちゃん。
俺が今からその青鬼のボスの所に行って、人攫いなんてやめるように説得してきてやる!
だから、安心してくれ……」
「コウ、早速戻ってみんなにこの事を話すのよ!」
「ああ、行くぞ!ミズナ」
俺は例の如く、前屈みでその場を離れた。
◇
俺はエスポワールに戻り、魔界には人間が住んでいる事、魔族がその人間たちを拉致している事をみんなに話した。
「――以上がさっき聞いた情報だ。
誰が誘拐の指示を出してるかは分からないが、ソイツは相当クレイジーだ」
「アリィ知ってるで〜すよ!
人間誘拐の指示を出してるのは魔王さまで〜す!
意図は分からないですけど、その事も問い詰めなきゃならないで〜すね!コウさんっ!」
「あぁ……。
エスポワールも直ったみたいだし、今から魔王城に突撃するぞ!」
「ちょっと!コウたちばっかり温泉入ってズルいさね!
ウチも温泉好きだし、入りたいねぇ」
「す、すまん。ユータン。
温泉入ってから出発するか……?」
「冗談さね!この戦いが終わったら、みんなで露天風呂入りに行こうねぇ」
「そりゃ最高の露天風呂になるな……!
よっしゃ、魔王に会って全てを終わらせるぞ!
希望の船、エスポワール号!出航だ!!」
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