32.母の加護。そして、魔界へ……
パァン!!パァン!!!
大きな銃声が荒野に鳴り響いた。
それと同時に、ジェイは腹部を抑えて倒れ込んだ。
「ぐぅ……、ハァ……ハァ……。
女剣士さん……、アナタは何故動けるのですか……?」
そう。ピストルを打ったのは首をダガーで突き刺されたはずのユータンだった。
実は首に巻いていた母親の形見のスカーフは防刃で、ユータンはその加護を信じていたからこそ、反撃に出られたのだ。
(今だ!ミズナ、母さん!
回復される前に超高温のスチームを吹きつけるんだ!
フェンリルの体は熱に強いらしいから、呼吸器から内部を焼くぞ!
ジェイは息が上がってるから、効果的なはずだ!)
「了解なのよっ!」 「了解したわ!」
ミズナと母さんは掛け声を出して水流と火炎を合わせて放った。
シュゴォォォと言う音と共に凄まじい水蒸気が発生したが、ジェイは逃げられずにうずくまっていた。
やったか……?
しばらくして、ユータンがスチームの中に閉じ込められて動かなくなったジェイに近づいて語りかけた。
「なぁ、魔族さん。アンタ、本当の親が分からないって言ってたね……。
ウチも同じで、あの剣もこのスカーフも育ての母親にもらったもんなのさ。産みの親は分からない……。
けど、アンタも誰かに育ててもらって、ここまで成長できたんじゃないのかい……?」
「あぁ、少し……思い出しましたよ。……ゴホッ。
A、B、C、D、E、F、G、H、I、J……。
ジェイと言う名前は……古いエウローペ語の十番目の文字で……、ゲホッ、私は孤児院では……ただの十番目のガキに過ぎなかったのですよ」
「アンタ、孤児院で育てられたのかい……」
「えぇ……。そこで唯一、私を人間扱いしてくれる……シスターがいましてね……。
他人への敬意だけは忘れるなと教えられたの……ですけど、守れなかったみたいです……。
あれ……?私やっぱり元々は人間だったのですね……」
ジェイは大切な記憶を思い出して愕然としてるみたいだな……。
……まあ俺には関係ないな。
とっとと次の目的地を決めちまうか。
「おいジェイ。
話してるところ悪いが、トップはどこにいるのか知らないか?」
「……ええ、トップ団長はアネモネ君とゲイル君を連れて魔王城に反逆に行っている……はずですよ。ゴホッ」
「そうか、最終決戦は三つ巴になりそうだな……」
さてと、コイツはどうやって始末するか……。
「……コウ君、テレパシーが使えるのって……本当だったんですね。
でも始末される前にお願いが……あるので聞いてくれませんか……?」
「あぁ。どうやら自分が人間だって自覚してる奴に目を見られると想いが伝わっちまう固有能力らしいぜ……。
で、お願いってなんだよ?
俺はお前と会話なんてしたくもねぇんだぞ……」
「アナタが追放された時の人間の女の子……いましたよね?
あの子は生きて今も……パパを待っていますよ」
「なに……!生きて……くれてるのか……。
それに、俺の事をパパって呼ぶのは本当なんだな?」
「えぇ……、本当ですよ。……ゴホッ。
さっき気づきましたが、多分アナタの固有能力で……意図せず洗脳して……しまったのでしょうね……。
お願いって言うのは……、その子に会ってあげて欲しいって事です……。ゲホッ。
子が親を待つツラさは、痛いほど……分か……」
「……もういい、喋るな……」
この言葉が出た理由は本当にジェイと話したくなかったからか、心身ともに辛そうなジェイに同情したからか、分からなかった。
いや、分からないフリをした。
ジェイは最後の力を振り絞ってユータンにお願いをする。
「ゴホッ、……女剣士さん、最後のお願いです……。
私を……、もう楽にしてください……」
「あぁ……、もう休みな」
「ありが……」
スパンッとユータンの剣は神の使いフェンリルの魔族の首を切り捨てた。
出発前に髪を切っていたユータンのシルエットは、まるで勇者のようだった。
しばらく静寂が続き、モコモコの土に小さな足跡だけがチョンチョンと近づいてきた。
それはもちろんアリエッテの仕業だ。
その時、頭部の無いジェイの身体はその足跡に向かってほんの少しだけ跳躍して力尽きた。
「わわっ!ビックリしましたで〜す!
アリィに向かってジャンプしたです!」
「アリエッテ、気をつけろよ……!
魔族は頭くらい無くたってしばらく動くもんだぜ?
それと、そろそろ魔王に連絡を入れてくれ。
明日の朝、裏切り者の魔族は東海岸から攻め込むってな」
てか、透明人間もとい透明魔族と話す時は目線が合わなくて喋りにくいな……。
でもそういや、俺って元々目を見て話すタイプじゃなかったような……。
「とにかく!みんな今回もよく指示通り動いて戦ってくれたな!本当に感謝してる!
次の目的地はいよいよ魔王城だ……!
明日の朝には着くから、ゆっくり休んでくれ!」
みんな次はいよいよ魔界かと決意の表情をしているが、ミズナだけは怪訝そうな表情で俺に聞いてきた。
「ねぇ、コウ? アタシさっきの話、少し考えたのよ。
わざわざ三つ巴の戦いにしないで、魔王と兵団が潰し合うのを待つのじゃダメなのよ?」
「いや、アリエッテとも話したんだが、人類の安寧のためにも俺たちは魔王の真の狙いを知る必要がある。
魔王は強いとはいえ、一対三じゃ分が悪い。
だから、魔王がやられる前に到着しなくちゃならないんだ……!」
「そっか!やっぱコウはちゃんと考えてたのね!
あともう一つ聞きたいんだけど、次に戦う魔族は何の能力を継承してるのよ?」
「どうしたんだよ?
ミズナが戦闘の質問をするなんて珍しいな」
「アタシ、やっぱりコウの役に立ててない気がして……。
いつも後ろに隠れてばっかりだし……」
「そんなの気にしてたのかよ、らしくないぜ?
俺はミズナのポジションは後方が最適だと思ってるからそう指示してるだけだ。
それに……、俺は……あ、愛するお前が側にいてくれるから頑張れるんだよっ……!」
「コウ……」
「そうだ、次の魔族の能力についてだったよな!
みんなにも聞いて欲しいから、エスポワールで移動しながら話すぜ!
みんな!乗ったか? そろそろ出航するぞ!」
俺たちはエスポワールに乗り込み、急いで魔界へ向けて飛行を始めた。
中では、次の戦闘に向けての作戦会議が行われていた。
◇
翌朝、俺たちは海から登る太陽を初めて拝んだ。
「みんな、起きてるか〜?
いよいよこの海を渡ったら、魔界と呼ばれている島、ジャポルネ島に入るぞ……!」
返事がないので後ろを見ると、みんなぐっすり眠っていた。
……みんな、疲れてるんだな。
あと一時間は海上だし俺も一眠りさせてもらうか……。
◇
ボゴォォォォン!!!
大きな音で飛び起きた。
「コウっ!地上から攻撃されたみたいなのよ!」
「なにっ⁉︎ ここは西海岸だそ!
昨日はアリエッテに頼んで東から入るって嘘の情報を流したんだが、惑わされなかったのか……!」
「そんなはずないで〜す!
昨日の夜から間違いなく魔王軍は東海岸の防衛を固めてるで〜す!」
『推力低下。付近の安全な場所に着陸して下さい』
エスポワールの機械音声がそうアナウンスした。
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