31.激戦!二体の魔族
「お、おい、アリエッテ!な、何のつもりだよっ///
それに、いやらしい指示ってどういう意味だよ……⁉︎」
「わわっ!順番間違えたで〜す!透明になってから脱ぐんでした……。
えっと、いやらしい指示って言うのは、敵が嫌がるような作戦を立てて欲しいって意味で〜す!
ん〜、ジャポルネ語は難しいで〜す……」
すまん。……聞いたはいいが全く耳には入らなかった。
透明とはいえ全裸の女の子が近くにいるという、とんでもなくハレンチな状況だからだ……///
ふとヒルクの方に目を向けると、自慢の大盾でバレないようにアレを隠してやがった……。
くそっ!
俺は道具がないから、隠せる物がない……。
「お、おう。みんな、先に降りてていいぜ?
俺は……、まあちょっと落ち着いてから降りるよ」
「ちょっとコウ〜? 後でお仕置きなのよ……!」
ミズナは不機嫌そうに言った。
最近はミズナも勘が鋭くなったよなぁ……。
「アンタもバレてるからねぇ?ヒルク。」
「げっ……! あ、姉貴ぃ、何のことだよ……?」
こんなやり取りはありつつも、俺たちは外に降りた。
気を取り直して、俺は作戦の指揮を取った。
「今回は少なくとも二体同時に魔族を相手することになるから、合流される前に俺たちの方から誘き寄せようと思う……。
モコモコの土にヒルクを送り込んで、残りは分担して周囲の警戒だ!」
「「りょーかいっ!」」
ヒルクは早速、挑発するように耕された大地の上に大盾を突き立てた。
すると、狙い通り遠方から凄い勢いで距離を詰めてくる魔族が現れた。
(みんな、テレパシーは伝わってるな!あのフェンリルの魔族の名前はジェイだ!
ユータンはいつも通り不意打ちで首を狙え!
だが、アイツは魔王軍では二番目に強力なアタッカーだったから、くれぐれも用心しろよ!)
ヒルクが構えた大盾の陰からユータンがジェイの首めがけて剣劇を繰り出した。
その瞬間、近くの川の中から巨体が飛び跳ねてきた。
アイツは……、ヒューだ!
ヒューはジェイの目の前に力強く着地し、重厚な盾でユータンの剣を跳ね返して距離を取った。
ヒューはまるで動く岩塊のような威圧感を放っている。
「よお、久しぶりだな。ジェイ、ヒュー。
俺のことは覚えてるか?」
俺の問いに対してジェイが答える。
「ええ、もちろん覚えていますよ。コウ君。
煮え切らない指揮でいつも迷惑でしたからねぇ?
声も小さかったですし……。
魔界を追放されても、くだらない勇者パーティごっこですか?」
追い討ちをかけるようにヒューも煽りだした。
「お前ら人間も、こんな無能に付き合ってやるなんて暇なんやなぁ?
まあ所詮人間なんてワシら魔族に力で劣ってるんやし、無駄に死ぬだけやで?」
「……おい、ヒュー。
あんまり俺の仲間を舐めない方がいいぜ?
今からその煮え切らない指揮を受けてくれる人間に殺されちまうんだからなぁ……!」
くそっ、ヒューは何の継承者なんだ……。
あの時の戦闘スタイルを思い出せ……!
それに、今コイツは水の中から出てきたんだぞ……!
そんな事に頭を巡らせていると、ヒューは俺の顔面めがけて噛みついてきた。
このスピードは……回避できない……!
ならば、こうするしかっ……!
俺は即座に自分の右腕を凍結させ、ヒューにわざと噛み付かせた。
「どうだ……?
俺の冷気はお前の顎じゃ噛み切れないほどに硬いはずだぜ……?」
くっ……! 激痛だ……!
噛み切られはしないが、手のひらに鋭い歯が食い込んで出血しそうだ……!
「なんや噛み切れなくても噛みついちまえばこっちのもんやで?コウ!」
直後、ヒューはそのまま身体を捻り、俺の身体もろとも巻き込む勢いで回転させた。
ぐっぅうあっ……!
これっ、デスロールってやつか!
てことはヒューはワニの継承者って事か……。
それなら、あの作戦で勝てる……!
(みんな! ヒューは俺とアリエッテで倒す!
残りのみんなはジェイの注意を引いて時間を稼いでくれっ!
アイツは冷静沈着な男だから、こちらが隙を見せずにいれば長期戦に付き合ってくれるはずだ!)
四人は事前に伝えてあった盤石な陣形を取り、ジェイは攻めあぐねている様子だ。
(アリエッテ!今から一瞬だけデスロールを止める!
その隙にヒューの目にスマホのライトを浴びせてくれ!)
俺はアリエッテにそう伝えるとすぐに、脚を曲げてデスロールの勢いを弱めた。
アリエッテは、すかさずヒューの上に飛び乗ってスマホのライトを目に浴びせた。
「スマホフラ〜ッシュ!」
「ぐわっ!な、なんやっ!眩しなったでっ!
くそっ!ワシの上に乗ってきよるんは誰やっ!」
ヒューは腕で振り払うが、アリエッテはふわりと躱した。
……ワニは夜行性だ、かなり効くはずだぜ?
突然の敵襲と閃光に驚いたヒューの顎の力は弱まり、俺は腕を引き抜いた。
そして、右手から溢れる血を凍結させて刃を生み出し、ヒューの心臓に突き刺した。
「これで終わりだっ!ヒュー!」
「ぐ、ぐわぁぁぁっ!!」
……が、背中側の皮膚は異様に硬く貫通させることはできなかった。
チッ……、貫けなかったか……!
(みんな、まだ油断するなよ!
死んでからも動いたネコの魔族を思い出すんだ!
ヒューはまだ動き出すかも知れないぞ!)
その瞬間、ヒューの穴の空いた心臓部から大量の水流が放たれた。
それはまるで意志を持った生き物のようにうねり、それぞれに襲いかかった。
(ユータン!
フリーズグローブで水流を狙って凍らせるんだ!)
「了解したよっ!凍てつきなっ!」
俺も手から冷気を放出して、いくつもの水流を空中で凍らせたが、とても全ては無理だった……。
……くそっ、数が多い! 撃ち落とせないっ……!
凍らせられなかった何本かの水流は、ジェイと対峙している四人の陣形を崩しにかかった。
(すまないヒルク!受け止めてくれっ!)
「任せとけっ!相棒! ……どわっっ!!」
ヒルクはみんなを守るように盾で受け止めたが、あまりの威力に吹き飛ばされ、地面を転がった。
その隙をジェイが見逃すわけがなく、無防備なヒルクに襲いかかった。
「ガードさえ仕留めれば私の勝ちです……!
死んでくださいっ!」
しかし、そのジェイの隙を見逃さない女がいた。
どんな強者も獲物を狩る瞬間に隙が現れることをユータンは知っていた。
ユータンはジェイの首めがけて横から勝利を確信した一閃を決めるが、ジェイは超反応で剣を歯で噛んで受け止めた。
「くっ、歯で白刃取りなんて聞いたことないさねっ!
母ちゃんからもらった大切な剣なんだ、離しなっ!」
ジェイはそのまま頭を振って剣を投げ捨てた。
戦闘中にユータンの手から剣が離れたのはこれが初めてだ。
普段は無表情なジェイが深い悲しみと怒りに満ちた表情で口を開いた。
「へぇ……、アナタいいですねぇ、親がいて。
私は本当の親が誰なのか分からないんです……よっ!」
ジェイは懐からダガーを取り出し、ユータンの首に突き刺した。
「……まずは一体処理、ですね……」
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