30.戦争は何のため?誰のため?
さっきまでのお茶目なアリエッテとは雰囲気が変わった。
「何を言ってるんだ……? アリエッテ。
俺たちは人類が安心して生き続けるために魔族を絶滅させようと魔界に向かってるんだぞ……?」
「コウさんの冒険は魔王さまを殺してハッピーエンドって言う単純な物語なので〜すか?」
二度目のアリエッテの無垢な質問に、今度は俺が襲われた。
襲われたと感じたのは、その質問は核心をついていると思ったからだ。
……俺はしばらく黙り込んだ。考え込んだ。
「……そうだよな。アリエッテの言う通りだ。
俺たちの目的は人類の安寧で間違いないが、その手段として魔族の絶滅しか考えていなかった……。
ただ、俺は無数にある手段を見えないフリして突っ走ってたんだな……」
「魔王さまと戦うと言っても、武力ではなく言葉で戦うべきで〜す!
コウさんの固有能力は、その戦いにおいては最強の武器だと思うで〜す!」
「おかげで目が覚めたぜ。ありがとう、アリエッテ。
魔王が言っていた人類革新とは何のことなのか、知るためには対話しなきゃいけないよな!」
「やはりコウさんは素晴らしいで〜す!
アリィの目的は魔王さまの真の狙いを知る事なので〜す!
コウさんなら魔王さまと対話できると思いま〜す!」
アリエッテはそう言って、また俺に抱きついてきた。
日も登ってきて、さっきより鮮明に裸体が見えてしまった……。
「まぁたミズナに叱られるぞ?
そろそろエスポワールに戻るか!ほら、タオルケット羽織りな」
こうして小さな魔族の女の子が仲間に加わった。
◇
エスポワールに戻ると、みんな起きていた。
ミズナが先に説明してたみたいで、アリエッテの事は大体は把握してる様子だ。
「は、はじめまして!アリエッテって言いますで〜す!
みなさんの事はずっと前から隠れて見てたので、アリィは大体分かってると思うです!
よ、よろしくお願いしま〜す!」
「俺はヒルクだ!
俺たちのピンチを救ってくれたんだってな!
ありがとよぉ〜!アリィ!」
「ウチはコイツの双子の姉のユータンさ。
まあ、みんなの姉御でもあるから、アリィもなんでも頼って欲しいさねぇ!」
「私はサヤカよ!よろしくね、アリィちゃん!
ユータンちゃんがみんなのお姉さんなら、私はみんなのお母さんね〜」
「あ!アリエッテちゃんっ!
良かったらアタシの服、貸してあげるのよ!」
「ホントですか!ミズナさんありがとうございま〜す!
ミズナさんの可愛い服着られるの、嬉しいで〜す!」
こんな調子で小一時間ワイワイ盛り上がったので、そろそろ出航を提案した。
「みんな自己紹介も終わったし、そろそろエスポワール動かすぞ〜?
てか、後ろ陥没してるの忘れてたぜ……」
俺はそう言ってエスポワールを出航させた。
またいつも通り、討伐の日々が始まる……!
◇
しばらく飛行を続けると、ふとアリエッテのスマホの事が気になった。
「なぁ、アリエッテ。
何体の魔族が俺たちを狙ってるのか、スマホに情報は来てないのか?」
「もちろん来てま〜すよ!
今のところ八体の魔族が派遣されてま〜す!
ネコとモグラは倒したので、あと五体で〜す!」
「五体……?六体の間違いじゃないのか?」
「実はアリィもその八体の中に入ってるので〜す!
ちなみに八体の魔族には魔王さまから称号が与えられてて、ネコはウラノス、モグラはサターンで〜す!」
「ウラノス……、サターン……。
それってエウローペ語の惑星の名前だよな?
「そうで〜す!
魔王さまは相当宇宙が好きなんだと思うで〜す。」
「なるほどな。アリエッテの称号は何なんだ?」
「アリィはこの惑星、アースなのです!」
「アースか!こりゃ魔王に気に入られてるに違いないな。
あとの五体はどんな奴らなんだ?」
「残りの五体は元々コウさんと一緒にゴブリン討伐兵団をやってた魔族で〜すよ!
今の兵団は統制が取れなくなって二つに分かれて行動してるみたいで〜すけど」
「プハハ!アイツら俺がいないとダメ兵団じゃねぇか。
どうせトップの野郎の無茶な指揮のせいでジェイが抜けて、ヒューがついてったんだろうな」
「あ、そういえば!
コウさん、スマホで魔族たちを撹乱するって言ってましたけど、そろそろ何か連絡送りま〜すか?」
「いや、スマホで嘘の情報を送るのはココ一番の正念場にしよう。
それまでは、あえて正確な情報を送ってくれ」
「わっかりましたで〜す!」
その時、外の監視をしていたヒルクが話しかけてきた。
「おーい相棒!南側の地面見てみ?
あんなに広い範囲の土がモコモコに耕されてるぞ!
なんかの魔族がいるに違いねぇ……!」
「確かに、ウチらこんなの見た事ないさね……。
あ!あそこ、ゴブリンの死体があんなに大量に……!
生物学者のミズナ先生、何か分からないかい?」
「んー、多分これって……、フェンリルの狩場に似てるのよ……!」
「そういや俺、人間界に来たばっかりの時にフェンリルのスープを食べたけどよ、俺が昔生きてた時代にはそんな生き物いなかったぞ?」
「アリィの時はいましたで〜すよ!
この辺りはアリィの国があった場所なのですが、よく生息してたで〜す!
フェンリルは潮風の吹く乾燥地帯で、耕した土に付着した潮で簡単に調理もする賢い生き物なので〜す!」
「なるほどな……。他にはどんな特徴があるんだ?」
「熱い地域にいますし、調理に火も使うので体は熱に凄く強いで〜す!
あと、耕した土に足跡を付けたら最期、硬質な牙で一瞬で噛み千切られるで〜す」
「そうか……、火を使うなんて相当賢いんだな。
教えてくれてありがとうな!アリエッテ。
母さんもフェンリルについて知れてよかったな!」
「実はお母さん、もうミズナちゃんの部屋の本で読んでて知っていたわ……。
お母さんの師匠は生物学の神と呼ばれる先生だったんだけど、フェンリルはその先生が産み出した人工生物で、神の使いと呼ばれてるって本に書いてあった……」
「じ、人工生物……⁉︎
なぁ母さん、こんなの生物学を知らない俺だって分かるけど、野性化させるなんて禁忌じゃないのか⁉︎」
「もちろん、いけない事よ……!
だけど最初のフェンリルには親と呼べる存在がいなかったわ。それで、親の愛を求めて脱走したみたい……。
先生は重責を問われて処刑されたようね……」
「アリィは昔、赤ちゃんフェンリルのお世話をした事がありま〜す!
フェンリルは我が子への愛情の注ぎ方が分からないみたいで、赤ちゃんは一人で成長するか他の動物に育てられるんで〜す!
成長すると、本当の親を探す旅に出てしまうのですけど……」
「そうか……、孤独で悲しい生き物なんだな……。
よし!それじゃ、見つかる前に着陸させるぞ!
姿はまだ見えないが、近くにフェンリルを継承した魔族がいるはずだ!
しっかり準備していくぞっ!」
「「了解!」」
フェンリルを継承したのは誰なんだろうな……。
トップか……? ジェイか……? ヒューか……?
そんな事を考えながらエスポワールを減速させて平らな場所に着陸させると、俺の目の前で急にアリエッテが服を脱いですっぽんぽんになった……!
「さぁ、コウさん!
アリィにいやらしい指示をして欲しいで〜すっ!」
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