29.アリエッテの過去
店の中には盗賊二人とお婆ちゃんが一人、制圧するのは容易な事だろう……。
そう考えていると、アリエッテは続きを話した。
「母は、今日はチャンスだから大量に盗もうと言ってサクサクと慣れた手つきで盗んでいったので〜す。
だから、いつも以上にアリィも急いだんです……!
そしたら、大きな棚が服に引っかかって倒れて、お婆ちゃんが下敷きになってしまったのです……。
アリィは驚いてその場から逃げてしまいましたです。
でも、母は仮にもナースだったので放っては置けないと言い、お婆ちゃんを助けましたです。
もちろん、そんな事をしたので盗みも警察にバレてしまい、母は逮捕されましたです。
後日、アリィも盗みに関わっていた事が警察にバレて、連行されましたです。
アリィはそのまま処刑が決まり、母や妹たちとはそれっきりなのです……」
「そうだったのか……。
まだ子供なのに、辛い環境だったんだな……」
「いいんで〜す。
アリィは悪い事をしたので当然の報いなのです……」
「でも、アリエッテはこうして助けてくれたんだ。
俺たちにとってはヒーローなんだぜ!
でも、数日は一緒にエスポワールに乗ってたんだろ?
どうしてこのタイミングで姿を現したんだ?」
「アリィにとっては、このタイミングが完璧だったので〜す!
みなさんの大ピンチを救う事も出来ましたし、それに、実はアリィはずっとミズナさんと二人でお話しができる機会を伺ってたんで〜す!」
「ん? なんでミズナなんだよ?」
「他のみんなは強そうなので、事情を話す前にアリィが返り討ちに合いそうだったのです……」
「それは、すまんかった……」
確かにアリエッテから見たらミズナが一番話しやすそうだよな。
魔族を前にした俺たち戦闘組の殺気は尋常じゃなかっただろうから……。
アリエッテは何かを思い出したように、咄嗟に話し出した。
「あっ!だからエスポワールの食べ物を盗み食いしてたのもアリィなんですっ!ごめんなさいっ!
アリィ……人間だった時からこんな生き方しかできなくて、本当に自分で自分が嫌になっちゃうです……」
「気にすんなよ。アリエッテ。
今日からは俺の食糧、分けてやるからよ!」
「……コウさんっ!ありがとうございますで〜す!」
アリエッテはそう言いながら俺に勢いよく飛びついて来たので、タオルケットが脱げてしまっていた。
……ちょ!
と、俺が注意しようとしたその時、隣で見ていたミズナが声を出した。
「アリエッテちゃんっ!
そんな格好でコウに抱きつくのは、き、禁止なのよっ!
ほら!すぐ離れるのよっ!もうっ!」
ミズナはアリエッテにヤキモチを焼いてるみたいで可愛かった。
が、追い討ちをかけるように、アリエッテの無垢な質問がミズナを襲う。
「ごめんなさいミズナさんっ!アリィはそーゆーつもりじゃないので〜す!
でも、やっぱりコウさんの事、大好きなんで〜すか?
アリィ、ミズナさんが夜に自分の部屋でコウさんの名前を呼びながら一人マッサージしてたの、ずっと見てましたから安心して欲しいで〜す!」
あ……。
無垢がゆえの最大火力の言葉がミズナを襲った……。
ミズナは顔を真っ赤にしてエスポワールに走って行った。
こうして俺は、ミズナの一人マッサージ事情を知ってしまった……♡
まあ、ミズナは少しの間一人にしといてやるか……。
「そういや、アリエッテはスマホ持ってるのか?
さっき戦ったモグラ男が言ってたんだが、今の魔族はスマホで連絡取り合ってるんだって?」
「もちろん貰いましたで〜すっ!」
「やっぱりみんな持たされてるんだな……。
最後に魔王に連絡したのはいつだ?」
「そうで〜すね……。
皆さんがネコの魔族にやられて人間界に戻って来る少し前で〜す!
魔王さまには尾行するって言っちゃったで〜す」
「なるほどな。じゃあそろそろ連絡しないとマズいだろ?
アリエッテのスマホは魔王軍を撹乱するのに使えるから、どんな連絡をするかは慎重に決めないとな……」
「アリィは気の利いた事は思いつかないので、魔王さまに伝える内容はコウさんにお願いしたいで〜す」
「そうか。それなら後で考えるから任せとけ。
にしても、アリエッテは透明化する能力なのに、スマホなんてどこに隠し持ってるんだ?」
「アリィのスマホは光学迷彩機能付きなので〜す!」
「光学迷彩って……!
俺が昔生きてた時代にはそんな技術なかったぞ」
「アリィの時にもなかったで〜すよ!
でもどうやら、魔界では古の時代に放棄された技術を蘇らせようとしてるみたいで〜す!」
「だろうな……。テレポーターにスマホだもんな。
でも、光学迷彩も人間界では見なかったな……。
何か人類に悪影響を及ぼす技術だったって事か……?」
「それはアリィには分からないで〜すけど、魔族の科学者に聞いてみるしかないで〜すね。
確かパンチラティって名前のお爺ちゃんで〜す!」
「パンチラティ……?
確か、魔界の裁判長もそんな名前じゃなかったか?」
「あ!コウさんは追放裁判の時に会ってるんで〜すね!
裁判長、普段は研究室にこもってるみたいですよ。
あと、ジャポルネに辿り着いた魔族の教育係もしてますで〜す!」
「教育か、俺もされた記憶がうっすらあるな……」
「多分、コウさんも復活直後の記憶が混濁している時期に、ジャポルネ語を教えられたで〜すよね?
それと、世界が平面って事もで〜す。でも結局、それは嘘だったで〜すよね?」
「俺は元々ジャポルネの人間だから言葉は話せたけど、確かにこの世界は球体ってのが真実だよな。
なんでアイツらそんな嘘を教えたんだ……?」
「簡単に言ってしまえば魔王さまの趣味なので〜す。
魔王さまは人間だった頃は天文学者で、人類の宇宙進出が夢だったみたいで〜すよ?
それで、真実に気づけるような天文学に興味のある魔族は、アリィみたく危険な任務から外されるみたいで〜す」
そうだったのか、マオ君は天文学者になっていたんだな……。
「コウさん、マオ君って誰で〜すか?」
「え⁉︎ アリエッテ、俺いま声に出してたか……?」
「出してないで〜すよ!
アリィもテレパシー拾えるみたいで〜す!」
「そうだったのかよ!
でも待てよ...、テレパシーが伝わるのは人間、もしくは人間の能力を継承した魔族だったはずだ……」
その時、俺はモグラ男のゼロとの戦闘を思い出した。
ゼロにも死の間際にテレパシーが伝わっていたぞ……!
てことは魔族でもテレパシーが伝わるのは、自身が人間であったという自覚がある者って事か……!
「アリィ、何かマズい事しちゃったで〜すか?
コウさん、顔怖いで〜す」
「あぁ、すまない。
アリエッテも戦闘に参加できそうだなって思った反面、もし敵の魔族が人間だった頃の記憶を持っているなら作戦が筒抜けになっちまうなって思ったんだよ……。
魔王と戦う時にはテレパシーは使えないな……」
それを聞いたアリィから笑みが消えた。
「アリィ、魔王さまと戦うなら協力はしないですよ」
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※作者は特級の声優ヲタです。キャラクターの脳内再生CVなど、お気軽に自由なコメント待ってます!




