28.決着!そして現れる新たな影
ゼロは腕を固定され、焦っている様子だ。
「な、何をしやがんだで!」
「居場所が分かれば、お前なんか拳一つで倒せんだよ!」
俺は自由な右腕でゼロの顔面を何度も叩きつけた。
「お前にさえ出会わなければっ!俺は……!俺はっ……!」
もし転校先でイジメを受けなければ、俺にはどんな人生があったんだろう……。
「あ、あの時は悪かっただで!コウ君!
俺の負けだっ!ごめんよごめんだで……!」
俺は馬乗りになって殴り続けた。
あの時は本当に悔しかった。
もしマオ君が助けてくれなければ、俺の人生は終わっていたのだろうか……。
人生は“もし”の連続だ。
仮の話を考えたらキリがないな……。
そう。仮にも俺がコイツを生かしておく世界線はないのだから。
(みんな!モグラの魔族はもう時期死ぬ。
散開の陣形は解除していいぞ!)
みんなにテレパシーを送ると、何故か魔族であるゼロも受け取っていた様子だった。
「……お、俺もう少しで殺されるって言っただでか?」
「あ?なんでお前に俺のテレパシーが聞こえんだよ?
まあいい、くたばれっ……!」
俺は更に無心で殴り続けた。
しばらくしてハッとしたのは、コイツがさっき俺の名前を呼んでいた気がしたからだ。
極限の状態になって、やっと昔を思い出せたのか……。
この時、既にゼロの息の根は止まっていた。
全力を出し切った俺はその場で倒れ込み、殺したゼロをただボーっと見ていた。
すると、遠くてミズナの叫び声が聞こえた。
「キャーー!!助けてっ!ゴブリンなのよっ!」
「まだ……いるのかっ!ミズナ、待っ……てろ……」
チクショウ!こんな時なのに力が湧かねぇ、足が動かねぇ……。
ヒルクやユータン、母さんも今は重症だろうな……。
ミズナが……、俺の大好きなミズナが……こんな所で……!
その時、誰もいないはずのエスポワールの方向から雪の上をギュッギュッと軽やかに走るような音が過ぎ去った。
そして、可愛らしい声が聞こえた。
「え〜いっ!」
……この声は、ミズナじゃない……!
聞いた事のない少女のような声がしたかと思うと、ゴブリンは断末魔を上げ、身体が燃えていた。
俺はそれを遠くから見届けると、気を失った。
◇
目を覚ますと、俺はエスポワールの中にいた。
外は少し明るくなり始めたようだ。
「んん……、母さんとユータンも戻ってたのか。
二人とも気を失ってるみたいだが、誰が運んでくれたんだ……?」
シャァァワァァァ
ん? 誰かシャワーを浴びてるのか?
シャワールームを見ると、ミズナの可愛い靴がちょこんと置いてあった。
こんな時にもシャワーか。
相変わらずキレイ好きなんだな、ミズナは……。
とりあえず、みんな無事で良かっ……、じゃないっ!ヒルクを忘れてた!
「ヒルクッ!どこだっ!」
エスポワールの中を見渡しても姿がない。
……外かっ!
俺はすっかり自動修復が終わっていたドアを開け、外を探した。
すると……、ん?
プカプカとヒルクが空中を浮かびながらこちらに向かって来た……?
「え゙え゙ーーーーー!!!」
目の前まで来るとドシャッとその場に落ちた。
ヒルクは気絶してるみたいだ。
な、な、何が起きてるんだ……?
頭の中が混乱している。
すると、ミズナはシャワーを終え、外に出てきたみたいだ。
「あっ!コウッ!もう起きても大丈夫なのよっ?
もう少し安静にした方がいいのよ!」
「そんな事よりっ!今ヒルクが浮かんでたんだよ!」
「コウも見たのね……。
それなら話が早いと思うのよ!」
ミズナはタオルケットを持ってきて、空中に広げた。
すると、それは地面には落ちずに浮いていた。
まさか……。
タオルケットはひとりでにクルクルと向きを変え、金髪に青い肌の魔族がだんだんと姿を現した。
タオルケットに身をくるめるその姿は、ミズナよりも断然幼い、十代前半のような少女だった。
「コウ。驚かないで聞いて欲しいのよ。
この子はアリエッテちゃん。
見ての通り魔族だけど、ゴブリンに襲われたアタシを助けてくれたのはこの子なのよ」
「じゃあ、ヒルクだけじゃなくて、俺たちをここに運んでくれたのもアリエッテ、キミなのか……?」
「は、はいっ!コウさん、はじめましてで〜す!
あのっ、何から話していいのか難しいですけどっ、とりあえず伝えたいのは……、アリィ、コールドスリープされる前のこと思い出せたんで〜す!」
「なにっ⁉︎本当かそれ!
人間だった頃の記憶があるっていうのか……⁉︎」
「はい!本当なので〜す!
アリィは透明になれるので魔王軍の偵察兵に選ばれたのですが、潜入してる途中で少しずつ人間だった頃の嫌な記憶がフラッシュバックしたので〜す……」
「そうだったのか……。
それは凄いが、一体何がきっかけだったんだ?」
「お腹が空いて食べ物を盗んだり、ミズナさんの家にピッキングして侵入したりで〜す。」
「なるほどな……。
そういう行為で思い出したって事は、もしかしてアリエッテは盗みをやって処刑されたって事か……?
でも君はまだ子供だろ……?」
「はい……。でも当時のアリィの国は独裁国家で、子供でも容赦なく処刑されたので〜す……。
ちなみに、ちょうどこの辺りがアリィの国があった場所で〜す!
その時の話、ミズナさんには話しましたが、コウさんにも聞いてほしいので〜す」
「あぁ、俺にはアリエッテがそんな悪事を働くようには見えない。
てか、アリエッテは当時の一連の記憶なんて、どうやって思い出したんだ?」
「それは、みなさんが一度魔界へ向けて出発した時の事で〜す。
アリィはミズナさんの家に侵入して魔王さまの役に立つ情報を盗もうとしたので〜す。
そこで、ミズナさんが開発したって聞いていた、記憶を呼び起こすヘルメットを興味本意で着けてみたんで〜す」
「なるほどな、じゃあ俺よりも先にアリエッテが使ってたって事か……。
でも、ドーパミンが一定量以上分泌されてないと使えないんじゃなかったか?」
「それに関しては心配いりませ〜ん!
アリィ、自分で自分のマッサージをして気持ちよくなったんで〜す!」
...おいおい、自分でマッサージって……ドコをいじったんだよ……!そっちが気になるぜ……。
「と、とりあえずは使えたんだな……!
じゃあ、その時に思い出した記憶を聞かせてくれ」
「分かりましたで〜す!
コウさんありがとうございま〜す」
そう言うと、アリエッテは自分が人間だった頃の記憶を語り始めた。
「アリィは貧困に喘ぐ小さな国で大家族の長女として産まれたで〜す。
六人姉妹みんな女の子で、一番下の子が産まれる前に父は第一次AI戦争で戦死してしまいました……。
なので、母を含めた七人で暮らしていましたです」
なるほどな……、アリィは俺がコールドスリープした時代から……おおよそ百年後の人間ってわけだな。
「アリィの母はナースとして働きながらも、夜は娘たちの生活に必要な物を次々と盗んで生計を立てていましたで〜す。
決して褒められた事ではないのですが、アリィも十歳の頃には母の盗みの手伝いを始めてましたです……。
ある日、いつも狙っていた店に大きなチャンスが訪れましたです。
なんと、その時間の店員はお婆ちゃん一人だけだったのです……!」
まさか……、物騒な事でもしたんじゃないだろうな……。
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※作者は特級の声優ヲタです。キャラクターの脳内再生CVなど、お気軽に自由なコメント待ってます!




