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02.俺は人間の宿敵、魔族だ

 俺はバレたら確保されるという緊張感と不安感がありつつも、不思議と初めての人間の街にワクワク感もあった。


 「人間の街も魔族の街と変わらないんだな。

 とりあえず、あそこのレストランにでも入るか!」


 もちろん対価は持っていない。

 最初から食い逃げしてやるつもりだ。


 黒い布を深く被り直して入店した。


「「いらっしゃいませ〜!」」


 案外すんなりだ。

 まあ、こんな所に魔族なんかいる訳ないって思ってるだろうから警戒なんてしてないんだろう。


「えーっと、ソルトパスタとガーリックステーキ、それとフェンリルのスープ。

 もちろん五人前ずつで!」


「えっ⁉︎ 五人前でお間違いないでしょうか?」


 ハッとしてうつむき、首を縦に振る。

 

「はぁ……かしこまりました……」


 やっちまったか? かなり注目の的だ。

 久しぶりの飯の匂いにテンションが上がっちまった。

 店の客全員に見られてるかもな……。


「お待たせいたしました〜!」


「どうも……」


 注文から食事までずーっとうつむいている。

 しかも急にテンションが低くなった。

 明らかに不審者だが、今はそんなのお構いなしだ。

 ウマそうな料理に俺はがっついた。


 

 ウェイトレスが最後のスープを持ってくる。

 もちろんアツアツでいい匂いだ。

 が、足元の小ビンにつまずき、俺の方へ倒れてくる。


 ガッシャーン!

 

「ア”ッっっチぃィ!!」


「申し訳ございません!お客様!」


 ウェイトレスが急いで俺の濡れた布を捲ろうとする。


「あっ!やめ……!」


 俺の青い肌を見たウェイトレスは言葉を失う。

 そして、仇敵を見るような目に変わる。


「……ナニ……コレ?」


 その様子を見ていた隣の席のオヤジが大きく息を吸い込む。


「魔族だ!魔族がいるぞォォ!!」


 耳の裂けるような大声だ。

 それと同時に俺は店を飛び出て路地裏へ逃走する。

 

 近くにいた人間全員が俺を追いかけてくる。

 おそらく誰一人俺には力では敵わないだろう。

 だが、人間の強さはこの団結力なんだと悟った。


 路地から路地へ、乗り越えられそうな塀ならどんどん飛んで移動した。

 

 俺だって魔族の端くれだ、人間なんかに捕まってたまるかよ……!

 俺にはどうしても生き延びて復讐してやりたいヤツらがいるんだ!


 

「げっ!行き止まり……。仕方ない、一旦戻るか」


 別の路地へ進むために引き返そうとすると、今朝の女とは打って変わって超絶美少女が現れ、俺を追い詰める。


 ……終わった。

 

 けど、こんな美少女に捕まるのなら悪くないかな。


 そう思った矢先、美少女が叫んだ。


「隠れて!」


 ……へ?


「いいからそこの窪みに隠れるのよ!」


 俺は状況を呑み込めなかったが、今は従うしかない。


 さっきレストランで隣の席だったオヤジが来て、美少女に声をかける。


「おーい!そこの女!コッチに魔族が来てないか?」


「コッチには来てないみたい!多分アッチなのよ!」


 ドドドドドド!!


 人間の大群が向こうへ駆けていく。


 ドドド……!


 足音はだんだん小さくなっていく。


「もう大丈夫なのよ!魔族さん。

 今はとにかくアタシを信じてついてきて欲しいのよ!」


 俺は言われるがまま、ついていく事にした。


 ◇


「あれ?ここって……?」

 

 着いたのは今朝の家だ。


「アタシはここで生物の研究をしてるミズナ!

 ここにはアタシしか住んでないから安心して欲しいのよ!

 よろしくね!魔族さん!」


「君しか住んでないって、今朝の白衣のモサ女は?」


「……いきなり失礼しちゃうのよ!あれもア!タ!シ!

 んまあ、普段はあの格好なんだけど、素敵な魔族さんがお庭にいたから気に入ってもらいたくて……。

 あの後、一生懸命お化粧しちゃったのよ♡」


「あっ……、そ、そうなんですね」


「ちょっと〜!なんで急に敬語なのよ〜?」


「あ、いや、本能というかなんというか……」


 何やってんだ俺ー!

 やべー!昨日の裸の女って、この子だったのかよーー!!


「ふぅん?なんでもいいけど、やっぱり魔族ってみんなが言うように悪い奴ばっかじゃないのは分かったのよ」


「あ、そそ、それなら良かったでございます」


「……ん〜?

 とりあえず、中どうぞ!」


 玄関を開け、家の中へ案内するミズナ。

 俺は前屈みでその後をついていく……。

 

「今、お茶出すからそこで座って待ってて!

 あ!魔族さんってお茶とか飲むの?紅茶なのよ!」


「あ、お……お願いしま……す!」


 俺とした事が緊張でガチガチだ。


 ミズナが紅茶を持って隣に座る。


「アタシね、生物の研究をしてるって言ったじゃない?

 特にゴブリンに興味があるんだけど、危険だからやめとけ!って母には言われてたのよね。

 でも、どうしてもアタシ知りたくて家出をしちゃったのよ」


 ミズナの真剣な表情を見たら、だんだん硬くなっていた身体がほぐれてきた。


「そうだったのか……。

 お父さんには止められなかったのかよ?」


「アタシの家は母子家庭だったのよ。

 小さい頃、仕事ばっかの父に嫌気がさした母が、私を連れて出てきたんだって」

 

「お母さん、一人で育ててくれたんだな……。

 きっとミズナの事、大切に思ってるはずだぜ」


「……うん」

 

「でも、ゴブリンなんて魔界でも手を焼いてたんだ。

 どうやって研究なんかするつもりだよ?」


「魔界もそうなの⁉︎アタシてっきり魔族ってゴブリンなんかより強いと思ってたのよ!

 確かにアナタってちょっと力自慢の人間くらいよね〜!」


「なっ!俺が一番気にしてる事を……。

 実は俺、魔族のクセに魔力が使えないんだ」


「そうだったの?ごめんごめん!アタシてっきり……。

 てか、アタシの事ばっか話しちゃってたのよ!

 まだアナタの名前も聞いてなかった!」


「俺はコウ。

 昨日、魔界から追放されて人間界に来たんだ」


「コウね!可愛い名前!

 にしても、追放って、何をやらかしちゃったのよ?」


「人間の子をかくまった。……って事にされた」


「なにそれ冤罪ってやつ?ひどーい!

 それならアタシも魔族をかくまってる現行犯なのよ!エヘヘへ!」


「プッ!そりゃ追放もんだな!ハハハ!」


 自然と笑みが溢れた。魔界にいた頃は笑った事なんてなかった。

 こんなに温かな気持ちになった事も……。


「コウやっと笑った〜!笑った顔も可愛くて好きよ♡」


「そんなの、言わなくてもいいっての///」


「照れちゃって可愛いっ!」


 そんなに可愛い可愛い連呼しなくたっていいだろ。

 一番可愛いのはお前だよォォ!!


「でも、本当にゴブリンの研究なんて危険だぞ?

 俺、ミズナに何かあったら……!」


「危険なのは承知の上なのよ!

 だけど、人類、魔族、ゴブリンの身体を調べればこの世界の真実に辿り着けると思うの。

 そこがアタシの最終目的なのよ」

 

「そっか.……。じゃあ俺が手伝う!

 生きていく為にかくまってもらわなきゃだし、その見返りになるか分かんないけどさ……!

 それに、俺もゴブリンの攻略は必須なんだ。

 魔界に戻って、俺を追放したヤツらに復讐をする為に……!」


「じゃあアタシたち良いコンビになれそうね!

 さっきも話したけど、アタシ魔族の身体も研究したいのよ!

 ……だからね、ゴブリンの研究が上手くいったら、コウの身体も調べ尽くさせて欲しいのよ!どうかな?」


「んー、前屈み状態でよければ……?」


「……なにそれ? どういう意味なのよ……?」


 ジト目のミズナに見つめられ、恥ずかしくなる俺。


 こうして出会った魔族の男と人間の少女。

 二人の同棲生活はこれから始まる♡

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 ※作者は特級の声優ヲタです。キャラクターの脳内再生CVなど、お気軽に自由なコメント待ってます!

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