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13.人間からの襲撃

 レストランに到着すると、店内がざわつき始めた。


「おぉー!本物だ!」


「ねぇ!意外とカッコよくない?」


「女性もよく見ると美人だぜ!」


 こんな調子でガヤガヤしている。


「いらっしゃいませ〜。二名さまですか?

 お席にご案内しますね〜!」


「いや、今日はテイクアウトをお願いしに来たんだ。

 ……って、あー!!

 あの時、俺にスープをかけたウェイトレス!」


「あーっ!あの時は申し訳ございませんでしたっ!」


 深々とお辞儀をするウェイトレス。

 が、手に水を持っている事を忘れているのか、また溢して俺の服にかかった。


「あわわわっ!またまたすみませんっっ!!

 冷たくないですかっ⁉︎」

 

「いや、いいんだ!

 それより、俺の方こそ食い逃げして悪かった!

 次の日、お金と手紙をこっそり置きにきたんだけど、気づいてもらえたかな……?」


「えぇ、気づきましたわ。

 あの時から、もしかしたら魔族って悪い奴らじゃないのかもって……」


 その後は、他のお客さんとも楽しく会話をして元気をもらった。

 みんなに頼まれていた料理を注文して、レストランを後にする。

 


「いっぱい注文したわね〜!

 誰がこんなに食べるの?やっぱりヒルク君?」


「まあ、アイツとユータンはかなり食べ……」


 パァン!!!


 そんな会話をしていると、俺の右腕に激しい痛みが。


 ……ピストルか?


 撃たれた俺の右腕からは大量の血が吹き出した。

 俺はその場に倒れ込む。


 護衛のユータンは銃声の方へ全力で向かっていた。


「コウっ!大丈夫っ⁉︎」


 母さんに支えられる。


「俺、撃たれたのか……?」


「とにかくっ!止血しないとっ!」


 母さんはウサギの描いてある白いハンカチで俺の傷口を縛った。


 昔、久しぶりに帰ってきた母さんと公園に行った時の事を思い出した。

 本当は嬉しかったんだけど気恥ずかしくて、ツマンナイッ!とかアッチイケッ!とか言って困らせてたっけ。

 で、母さんから逃げたらつまずいて転んで、右腕を擦りむいて……。

 

 その時も母さんはウサギの描いてある白いハンカチで縛ってくれたっけ。

 

 そんな事を考えていると、ユータンが子供の脚を掴んでこちらへ歩いてくる。


「コウっ!犯人捕まえたよ!」


 犯人、と呼ぶには幼い、まだ十歳手前くらいの男の子だった。


「返せ!母ちゃんを返せよ!この悪魔ァ!」


 男の子が叫ぶ。


「お前らが、僕の母ちゃんを...、母ちゃんを奪ったんだ!

 どうせお前らはゴブリン討伐とか嘘ついて、また人間を襲うんだろ!

 母ちゃんを返せよっっ!!」


 悲痛な叫びを聞いた俺は、この子をどうする事もできなかった。


 すると、母さんが俺を守るように身体を乗り出し、男の子に語りかける。


「撃つなら私を撃ちなさい。

 魔族とゴブリンを生み出したのは私よ。

 だから、あなたの仇討ちは私を殺して終わりにして」


 男の子はピストルを母さんの額に向けて構えた。


 よせっ!そう言おうとした瞬間、ユータンのビンタが男の子に直撃し、ピストルを落とした。


 ユータンは涙を溢した男の子を抱き締める。


「ウチもね、母親をゴブリンに殺されたんだ。だからその気持ちは痛いほどに分かるさ……。

 でもこの魔族の親子は人間と協力して責任を持って必ずゴブリンを駆逐する。ウチが保証するさね。

 だから許してやってくれないかい……?」


 男の子は黙って頷いた。


「このピストルはウチが預からせてもらうよ」


 ヒルクとユータン、そして、この男の子のような悲劇を二度と起こさないためにも、俺たちは急いでゴブリンを駆逐しなければならない。


 そう固く決意して、俺たちは家に戻った。

 

 ◇


 家が近づいてくると、ヒルクとミズナが掃除をしながら話している声が聞こえてきた。

 

「なぁ、ミズナってSなのか?」


「違うのよ!アタシは……、こう見えてMなのよ……!

 ちょっ、ヒルクッ!そこはビンカンなのよっ♡」


 ……アイツら、まさかスケベな事してんじゃねぇだろうなぁ!


 俺は玄関から勢いよく中へ飛び込んだ。


「おい!ヒルクッ!お前ミズナに何やってんだっ!」


 そこには、自分の服を持っているミズナと、ゴミ箱を漁るヒルク。


「ど、どうしたのよ。コウ。そんなに怒った顔して」


「……え?ミズナたち何してたんだ?

 ってか、ちっともガラクタ部屋変わってねぇじゃねぇかよ!」


「それがよ……、張り切ってガラクタ部屋の片付けを始めたのはいいんだが。

 俺とミズナじゃ大きい家具が運べなくてな……」

 

「それで、代わりにアタシのいらない服の整理をしてたのよ」


「……え?SとかMとかって?」


「服のサイズ以外に何があるのよ?」


「……え?ミズナが敏感とかってのは?」


「……、何の話なのよ……?

 ヒルクに服捨ててって渡したら、ビンとカンのゴミ箱に入れたからそこは違うよって話をしただけなのよ」


 ……。

 

 

 遅れて母さんとユータンが入ってくる。


「さあ!美味しそうなパスタ買ってきたからみんなでお昼にしましょ〜!」


 母さんはテーブルにお昼ご飯を広げた。

 片付けは一旦休憩してみんなでパスタを食べることにした。


 

「ちょっと!このパスタ美味しいわね〜!

 みんな今までこんなに美味しいの食べてたなんてズルいわ〜!ふふ」


「ホントに美味しいのよ〜!

 コウがここのレストランで食い逃げしてくれて良かったのよ!ありがとね!コウ〜♡」


「褒めてんのか?それ……。っ、痛っ!」


 スプーンで食べようとすると、撃たれた右腕が痛む。


「おいっ、相棒。なんか怪我したのかよっ?」


「ちょっとな……。ミズナと同じ、右腕を怪我しちまったよ。まあしばらくしたら治るから大丈夫だ」


「ウチがついていながら、すまないねぇ。

 ウチらと同じ境遇で、母親をゴブリンに殺されたって男の子にピストルで撃たれたのさ。

 ほらこれ」


 そう言うと、ユータンはヒルクにピストルを渡す。

 

「こりゃ驚いたなぁ、子供がピストルなんてな……。

 しっかし、このピストルかなりのアンティーク品だぜ?どこで入手したんだろうな?」


「さあねぇ。こんなのコウたちの時代のものなんじゃないのかい?」


「確かに、千年前のピストルってこんな感じだったかもな。

 てか、今のピストルってどんな形なんだよ?」


「ウチらは養成学校で触ったんだけど、かなりシンプルなデザインなのさ。基本的な形は同じだけどね。

 正規兵はみんな持ってるさね」


「俺ら双子は正規兵にはならなかったからよ、使用は禁止されている訳だが……、

 こんな状況だ、国王に話せばきっと許可してくれんだろ」


「そうさねぇ。

 いざという時のために、懐に忍ばせておくかね」


 アンティーク品のピストルを見てピンときたミズナは嬉しそうに話し始めた。


「そういえば!あのガラクタ部屋って妙に古そうな物がたくさんあるのよ!

 それで、アタシさっきこんなオルゴール見つけたのよっ!

 ここ巻くとね……!」


 ミズナは慣れた手つきでネジを巻き、音楽を鳴らした。


「これは……、お父さんが好きだった曲だわ……。

 素敵な音色ね。懐かしい気持ちになるわ」


 確かにこの曲は俺もよく聞かされていた。

 それがキッカケで音楽にハマった時期もあったなぁ。


「この曲で思い出したけど、十九歳の時、ギターでメシ食おうと思ってた時があったんだよな。俺」


「おい相棒!ギターって、食べにく過ぎるだろっ!

 スプーンで食えよっ!」


「そういう意味じゃねーよっ!」


 にしても現代には残ってないギターを知ってるなんて、ヒルクは意外と博識だよな。

 見ただけでこのピストルがアンティーク品だって気づいたし、こないだもミニスカの意味知ってたし……。

 

 俺たちはオルゴールの優しい音色を聴きながら、残りのパスタを食べた。


「「ごちそうさまでしたっ!」」


 

「俺らが出かけてから一時間以上はあったと思うけど、ミズナのクローゼットの整理しかしなかったのかよ?」


 俺がそう聞くと、ヒルクが自慢げに答える。


「もちろん、それだけじゃねぇぞ!

 便所とか水回りの掃除もしといたぜ!

 ほら見ろよ!綺麗だろ?」


「まあ、確かにピカピカにはなってるな。

 ……って、おい!ヒルク!それで便所磨いたのか?

 それ、俺の歯ブラシだぞ!」


 便所の床に放置されてる俺の歯ブラシ。

 記念すべき第一号の命はここで尽きた……。


 ショックはデカいが、とりあえず午後からの作戦を伝える。


「じゃあ、午後からいよいよガラクタ部屋の片付けだな!

 まずはでかい家具の搬出。それが終わったら小物の整理や埃の掃除をするぞ!」


「「おー!!」」

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