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01.追放魔族とリケジョちゃん

「コウ、お前さぁ、魔力も使えねぇクセしていつも後ろからウゼェ指揮ばっかしてくんじゃねぇよ」


 ついにそう言い放ったのは、俺が所属する魔王軍ゴブリン討伐兵団のトップ団長だ。

 コウってのは俺の事で、特例で魔王から直接スカウトを受けて配属された新人だ。

 

「なっ……!

 俺の指揮無しじゃ団長は今頃ゴブリンの腹の中だぞ!」


 俺は今晩寝るためのテントを設営していたが、手を止めて団長に反論した。


「俺が言わなかったら団長は今日の戦闘でも背後のゴブリンに気づいてなかったじゃんか!」


「んなのお前が勝手に仕事した気になってるだけだろうが!

 大体、魔王のお気に入りってのも気に喰わねぇんだよ!

 俺らは魔王のせいで、たった五人で魔界の外のゴブリン地帯で戦わされてたんだ!

 ……お前が問題を起こせば魔王の信頼も地に落ちるだろうな」


 トップ団長は魔王の愚痴を言い、他の団員の方を見た。


 援護するように口を開いたのは団長と恋仲のヒーラー、アネモネだ。

 まあまあのオバさん。


「コウ君。私たち別にアナタの指揮とかなくても全然ヤれてますけど〜?

 あとね、私たちは魔王の失墜も目論んでるのよ。

 アナタにはその生け贄になってもらいたいわ?」


 ガードの大男二人組、ゲイルとヒューも続く。


「お前みたいな無能は魔界に戻ってスローライフしてるのがいいだす!ブハハッ!」


「そうだよなゲイル。魔力だけじゃなくて固有能力も使えねぇんだもんな!ガハハッ!」


 ヒューが言う通り、魔族には魔力という名の熱波を手から放つ力と、それに加えて固有能力がある。

 例えば、ゲイルは屁が強烈な悪臭を放つ固有能力だ。


「……確かに俺はどっちの力も使えないけど、作戦の指揮能力を評価されて兵団に選ばれたんだ……!」


 反論した弱々しい俺の声は笑い声でかき消された。

 


 団員がひとしきり盛り上がった後、無口なアタッカー、ジェイがつぶやく。

 

「コウ君が来る前から兵団は完成形だったんです。

 私の魔力で焼き殺して食糧になってくれるなら、ギリギリ役に立てますけど?」


 こういう時のジェイには、もはや誰も意見できない。


 終わった……。

 


「そんじゃ、俺らが戻ってくる前に色々やっとけよ?

 雑用しかできねぇ無能なんだからな」

 

 団長はそう言い、みんなで日課のウマいフルーツ探しに出かけた。

 俺は惨めに残りのテントの設営を急ぐしかなった。

 

 クソッ……!ウマいフルーツ探しだって、みんなと仲良くなろうと思って提案したんだ……!

 

 そんな事を考えていると、つい独り言が漏れる。


「一旦冷静にならなきゃな……。

 どうせ俺ここ以外の居場所ないしな」

 

 あんなこと言われたが、戻ってくる前に最高のゴブリンスープを作って、もう一度みんなと話そう……!


 そう思って俺はスープを作り始めた。


 ◇


 いつもの倍くらい経ってみんな戻ってきた。

 自慢のゴブリンスープはすっかり冷めていた。


 トップ団長が俺に聞こえるようにニヤニヤして言う。


「あー、ゴブリンの丸焼きウマかったなぁ。

 つーか“指揮”とかなくても余裕で討伐できたわ」


「私のヒールも要らないくらいだったわよねぇ?トップ団長♡」


「何言ってんだアネモネ。

 ヒールがあるから俺らは安心して戦えてんだろ?」


 団長はそう言うと、俺のスープに気づいた。

 そして、ヨダレを垂らしてスープを見ているゲイルに注意した。


「おいおい、スープくらい普通は魔力で加熱しとくよなぁ? なんだよこの木の燃えカス。

 ゲイル、このスープもう冷めてて食えねぇから処分しとけ」


「お、おう団長!」


 そう言いながらゲイルは急いでスープを蹴った。

 

 団長はニッコリして就寝の号令をかける。


「お前ら今日はお疲れさんっ!

 明日もよろしくな!」


「「お疲れ様でした!」」


 俺を無視して各テントに入る団員。


 ほんと、何やってんだろ俺……。


 土で汚れた冷たいゴブリン肉を口に入れるが、自慢の味付けは何の味もしなかった。

 自分のテントに入ると、疲れきって眠ってしまった。


 ◇


「キャー!!」


 翌朝、アネモネの悲鳴で目が覚める。


「ど、どうしたっ!アネモネェ!」


 団長がアネモネのテントへ駆け寄る足音が聞こえる。


 テントから出ると既にみんなは起きていた。


「私の……パンツがないのよっ!

 いつもは脱いで枕元に置いて寝るのに、起きたらないのよ!」


「誰だぁ?俺のアネモネのパンツを盗む野郎は!」


 そう言いつつも俺の方しか見ない団長。ニヤニヤと。

 団長だけじゃない、みんな俺を見ていた。


「お、俺がやったって言うのかよ!

 そんなババァのパンツなんて何ゼニー貰っても要らねぇっての!」


「俺のアネモネがババァだと……?

 もっぺん言ってみろクソガキ!

 もしオメェのテントからアネモネのパンツが出てきたら、分かってんだろうなぁ⁉︎」


 団長ニヤニヤ。

 ヒューはすかさず俺のテントを物色する。


 ふっ、素晴らしい連携プレーだ。

 この調子なら俺の指揮もいらないか?


 俺は呆れたし、もうこの先の展開は読めていた。

 どいつもこいつも演技が下手。ド下手。

 ケツが痒くなってくる。


「団長!姉御のパンツありましたぜ!

 ついでにこんなのも!」


 ヒューの手には臭そうなパンツと、


 ……⁉︎


 人間の女の子⁉︎

 酷く衰弱しているが、こんな子供どこから⁉︎

 

 子供の澄んだ瞳が俺を見つめる。

 直感的に、この子を助けて育てたいと強く思った。


 しかし、人間界は魔界の外側にあるゴブリン地帯のさらに外側のはずだ。


 こんな禁忌がもし魔王の耳に入ったら……!


 頭が混乱する中、団長が俺ににじり寄ってきた。


「……お前は“終わり”だ、コウ。」


 その瞬間、俺は殴られて気絶した。


 ◇


 目を覚ますと、そこは裁判所だった。


 頭がボーッとして話が入ってこないが、これだけはハッキリ聞こえた。

 

「判決。被告人を魔界追放とする」


 “また”冤罪かよ……。


「俺はあの人間については何も知らないっ!

 アネモネの下着だって盗るわけがない!」


 この場を切り抜けるには、ありのままを訴えるのが賢明だと思った。


「あー、コウ君。裁判長のワシが言うのも変じゃが、

 アネモネのパンツはどうでもいいかのぉ。

 まあ、証拠品のパンツはワシが個人的に預からせてもらうが……。ぐふふ」


 団長は不機嫌そうな顔をしているが、それ以外の団員は今にも吹き出しそうだ。


「で、本題はここからじゃよ。コウ君。

 どうしてあの人間は君をパパと呼ぶんだい?」


「パパ? 何の話だっ!」


 バゴッ!


 トップ団長の手刀が俺の首に入る。


「まあまあ。落ち着きなされトップ団長。

 今さら何を言われても判決は変わらんから。」


「失礼いたしました。」


 一礼して元の席へ戻る団長。


 もう訳が分からない。

 何を話しても切り抜けられそうにない。

 

 追放は……受け入れる……!

 

 覚悟と言えば聞こえはいいが、その実は諦めに近い感情だ。


「裁判長。最後のお願いだ、あの女の子がどうなったのかだけ教えてくれ……」


「今から追放される君には話しても無駄じゃよ。

 おい、連れてけ」


 裁判長がそう言うと、護衛の屈強な魔族二人が俺の両腕を掴んだ。

 トップには頭に黒い袋を被せられた。


 最期にこんなクズのニヤケ面を見ちまうなんて……。


 チクショウ……コイツら全員殺してやる……!

 外の世界でも生き延びて、絶対いつか滅ぼしてやる……!


 俺は雑に引きずられて裁判所を後にした。



 砂利の上、石の階段、お構いなしに引きずられ続けると、


 ガコンッ、キィー。


 という、今までで一番大きくて重い扉の音がした。

 そして俺はその中に投げ捨てられ、閉じ込められた。

 


 コツコツコツッ。


 しばらくすると、扉と反対の方向から堂々とした足音が近づいてきた。

 それは目の前で止まり、頭の袋を取られた。


 そこには、いかにも王のような風貌の男が。

 赤い豪華なマントに、魔族の象徴とも言える青い肌が映えている。


「うん。久しぶりだね、コウ君……」


「すまない。

 俺はお前と会った時の記憶が曖昧なんだ」


「覚えていないか...。それは想定内だ。

 君の固有能力を買って兵団に入れたんだが、残念だ。

 君は禁忌を犯したみたいだね」


「何が“固有能力を買って”だ。

 俺は一度も力を使えた事がないんだよ!

 何かと間違えたんじゃないのか?」


「私は間違いなんてしない。

 君は固有能力“テレパシー”と優秀な頭脳を使って作戦の指揮ができるはずだ」


「“テレパシー”なんて使えたら、俺は団員と分かり合えてた……!」


「覚えていないだろうが、私は君からの“テレパシー”を受け取ったから兵団にスカウトしたんだよ。

 失望した。 このプランは……捨てだ」


「プランってなんの話だよ……?」

 

「君には関係ないさ。

 ……それより、時間だ。私も暇じゃないんでね」



 魔王が魔力で辺りを照らすと、部屋の隅に大人が入れるサイズの円柱状の機械が現れた。


「これはテレポーターと言ってね、中に入った者を遠くに転送できる。

 今から入ってもらう訳だが、覚悟はできているか?」


「ああ、ゴブリンのアジトでもなんでも好きな所に飛ばせよ」


「いや、今から君が行くのはそれよりも遠い人間界さ」


 ……⁉︎


「おい! そんな機械があるんなら俺ら魔族はとっくに人類を絶滅できていたんじゃないのか⁉︎」


「それは誤解だ。私の真の狙いは人類の絶滅ではない。

 私は人類革新の必要悪としての役目を果たす……!」


「人類革新……?魔族革新の間違いじゃないのか?」


「二度も言わすな。私は間違いなんてしない。

 悪いがこれ以上プランについては語れない。

 君が“テレパシー”を駆使して人類と友好関係を築けたなら、プランのピース程度にはなれるだろうな」


 そう語ると、魔王は俺をテレポーターに押し込め、起動した。


「ぐわっ!」


 禍々しい光が俺の身体を包む。


 ◇


 ……ここが、人間界か?

 俺はこの世界でたった一人の魔族。そんな孤独感をより強く感じるような、真っ暗な野外に転送された。

 

 振り返ると遠くにポツンと一軒家があった。


「さっきまで昼だったのにいきなり夜かよ。

 まあ、夜のうちにあの家で青い肌を隠せる布を盗むしかないな。

 ……にしても窓から湯気が出てるし、なんだ?」

 

 俺は家に近づくと、その窓から中を覗いた。

 なんというか男の本能的にそうした気がする。


「……うおっ///」


 女が風呂に入ってたのか……!

 丸みを帯びた、いかにも女性らしい背中も尻も、魔族のような青い肌じゃなく人間の肌の色だ。


 俺は目に焼きついて離れない綺麗な女性の裸体にドキドキしながら息を潜めた。

 しかし、疲れ果ててその場で寝落ちしてしまった。


 ◇


 翌朝、俺は柔らかい布を被せられて飛び起きた。


「……はっ! 俺、寝ちまってた!」

 

「キャー!!」


 悲鳴を上げたのは、髪はボサボサで分厚いメガネをかけた白衣の女だ。いかにも理系の女性だ。

 どうやらその女に黒い布をかけてもらったみたいだ。

 

 アネモネの件もあって女の悲鳴はトラウマだが、可愛い声だなって思った。

 でもなぁ……昨日シャワーを浴びてた裸の女性、もっと可愛い子かと思ったんだけどなぁ……。

 いや待てよ? 髪を直してメガネ外したらめちゃくちゃ美人の可能性も……?

 

 ……って、いやいや!寝ボケてる場合じゃないぞ!

 逃げなきゃ殺される!


 俺は布を握りしめ、そこから逃走した。


 ◇


「布は手に入ったが、丸一日は食べてないから流石に腹減ったな……。

 よし、次は食糧の調達、そしたら寝床の確保だ!」

 

 黒い布をバッと空に広げ、マントのように羽織った。

 

「今後はこの青い肌を見られないように、人間界で過ごさなきゃならないんだ……!」

 

 にしても昨日の裸の女性、エロかったなぁ……♡


 こうして、魔族コウの人間界での潜伏生活と魔族への復讐劇がスタートした。

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 ※作者は特級の声優ヲタです。キャラクターの脳内再生CVなど、お気軽に自由なコメント待ってます!

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